当番ノート 第16期
人から聞いて「はぁ、なるほどなー」と思った話がある。人間は「土の人」と「風の人」に大きく分けることができるそうだ。土の人は、その土地にずっとくらし続けている人。土地に根ざして、土地を守って、仕事や生活を営んでいる人たち。反対に、風の人は、同じ土地にとどまらず、さまざま土地を動き回る人たち。土地から土地から移動するからこそ、土地にある情報やものを持ち運べる人でもある。 話はさらに続いた。土の人がある…
長期滞在者
とある事情でいま「写ルンです」が仕事場に100個届いておりまして、ぼくも1個使ってみました。あまり話題にもならないのですが、コンビニに行くと、「写ルンです」は、ほぼ間違いなく今でもコンビニに行けば買うことが出来ます。 早速仕事場の周りをちょっと写して回ろうと出かけたところ、15分もしないうちに、1本撮り終わってしまい、今2個目のパッケージを開けたところです。果たして何が写っているのか、ちゃんと撮れ…
当番ノート 第16期
ミリオンダラー・ホテルは、かつてロスに実在した豪華ホテルでしたが、すっかり凋落し、いまや廃墟になっています。このホテルを舞台に繰り広げられる映画が、ヴィム・ヴェンダースの『ミリオンダラー・ホテル』です。住人は、ビートルズの一員だと言い張る人や先住民の長だと思い込んでいる自称画家など、夢や妄想に破れて精神を病んだ人ばかりです。社会の外で底辺の暮らしを送っている訳ですが、皆この状態を良しとはしていませ…
風景のある図鑑
「 クラゲ : jellyfish 」 クラゲの大半には、ポリプと呼ばれる植物のような時代があります。 クラゲの受精卵は、メスの保護嚢の中で0.2mmほどに育つとプラヌラ幼生となって外へ泳ぎだします。 プラヌラ幼生が海底の岩などにくっついて定着し、触手を伸ばします。 この海底に咲いた花のように見えるものがポリプです。 ポリプは、水温が15℃以下になると体がくびれ、花びらが重なったような姿になります…
当番ノート 第16期
世界の片隅の扉の向こうに、その町があり、その天使たちがいる。 ”天使の踊り場” 住所:ツバメ町 C地区 麦の小路 天使の頬は何色をしていると思う? 天使の髪はたまご蒸しパンの黄色、 天使の肌は白パンのクリーム色、 天使のまつげはライ麦パンの小麦色、 天使の頬は——— (ツバメ町の言い伝えより) 世界にただ一つの、ツバメ町ガイドブックを標榜しているこの本としては…
イルボンと小鳩ケンタの空席商会
◇出てくるひと(順不同・敬称略) イルボン(gallery yolcha車掌/詩演家):以下、車掌 小鳩ケンタ(詩人):以下、鳩 谷内亮太(アクセサリー作家):以下、亮太 ケント・マエダヴィッチ(イラストレーター)欠席 Murgraph(イラストレーター):以下、 Murgraph ◇◆◇◆◇ 【2014年8月の相席】 2014年7月19~8月10日、ケント・マエダヴィッチ×谷内亮太「Refres…
当番ノート 第16期
8月を振り返ってみると、カクテルのことばかり書いていたなぁ、ということに気付いておろおろ。それ以外にも書きたいことはたくさんある。プロフィールに「くらしとカクテル、たまに妖怪。」と入れてるので、そろそろ妖怪について触れてみようかと思う。妖怪、けっこー好きなんですよね。 ぼくは小さな頃から、水木しげる大先生の妖怪図巻を眺めながら育ってきた。ぼくは伊平屋島(沖縄)の出身なんだけど、自然がゆたかな場所で…
長期滞在者
「ご賛成のかたは、右前足をおあげねがいます。(中略)反対のかたは、左あと足をおけりください。」 (『黒ネコジェニーのおはなし』より) 東京の地形は意外と起伏があり、谷のつく地名がたくさんあるのですが、夏が過ぎ去るのと同時に谷から新しい谷へと移り住みました。煙猫にとっては2回目の引越しです。さて煙猫は体つきは堂々としているのに気は小さくはにかみや、いつもおっとりくったりしてるのですが、移動はまったく…
長期滞在者
本庄早稲田には人がいなかった。駅の光だけが煌煌としていて、無人の駅の中、こんなところに新幹線はこないだろうと思った。車をおりて、母を抱きしめたとき、老眼鏡を使い始めた母の目が潤むのをみた。わたしは舌を噛んで、必死に堪えたけれど、母の顔を直視できなかった。わたしはあまりに無口な娘だ。父や母が望むような言葉を、何一つ残さなかったし、希望も残さなかった。無口で、不透明で、不安定な娘を、彼らはどうにか助…
長期滞在者
ヨーロッパの8月は学生だけでなく社会全体が夏休み気分である。 そういう気分に乗っかってのんびりしたかったのだけど、なかなかそうは問屋が卸さない。 やり残していた確定申告だとか、失業保険のための再登録手続きだとか、 飼っていたモルモット(羽左衛門)が急死したのでその葬式だとか、 人生初の運転免許講習だとか、水墨画の特訓だとか、相変わらずの作陶活動だとか、 今年一番忙しい月だったんじゃないだろうかと思…
当番ノート 第16期
もう4年前にもなりますが、2010年に野田秀樹の『農業少女』を池袋の芸術劇場で見ました。戯曲自体は古く、初演は2000年です。今年は2014年ですが、今読み返しても全く色あせていないと感じます。 http://www.nodamap.com/site/play/21 この戯曲は、片田舎の農家に生まれた15歳の少女である百子が、劇的な人生を夢見て上京したものの、失敗して田舎へと転落してしまう物語です…
当番ノート 第16期
世界の片隅の扉の向こうに、その町があり、その雨が降る。 ”雨粒砂絵画廊” 住所:ツバメ町 海辺 ツバメ町は扉の中の町ゆえか、あるいは町の太陽が人工物だからか、雨量は少ない。そんなツバメ町の居住区を抜けた先、町の北部に、海が広がっている。その広さを知るのは鳥だけ、深さを知るのは魚と鯨だけだという。 砂浜の脇のほうには二十段の小さな階段があるのだが、白いブロックを積み重ねた簡素な階段だけ…