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2014年8月の相席(記/小鳩ケンタ)

イルボンと小鳩ケンタの空席商会

◇出てくるひと(順不同・敬称略)

イルボン(gallery yolcha車掌/詩演家):以下、車掌
小鳩ケンタ(詩人):以下、鳩
谷内亮太(アクセサリー作家):以下、亮太
ケント・マエダヴィッチ(イラストレーター)欠席
Murgraph(イラストレーター):以下、 Murgraph

◇◆◇◆◇
【2014年8月の相席】

2014年7月19~8月10日、ケント・マエダヴィッチ×谷内亮太「Refreshment」
yolcha内にて。

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涼太:これ、何かラジオみたいな感じなんですか?

車掌:いやいや、もっとザックバランな。

鳩:僕だけ毎回初対面やからさ。ね、聞いてる!?

車掌:笑

涼太:そうですよね。

(中略)

鳩:ケント・マエダヴィッチ君がね(座談に)病欠という事で…あんなに、話したそうやったのに。ね?

車掌:絶対話したそうやった、小鳩さんを好きやからね。

鳩:そうやねん、僕もあの人好きやから。

(中略)

鳩:今日は主に、星の事を聞こうかなと思って…

車掌:ああ、そういう感じですか。

鳩:ロマンチックな方向で話してもいいんちゃうかなあ、と思って。星のモチーフが多いじゃないですか。

涼太:星ね、はい。昔から田舎のほう生まれなんで好きでね…

車掌:丹波?

涼太:丹波っすね。けっこう山の中やったんで。

鳩:丹波ってあの人と一緒?(以前の空席商会に登場した)ハローアヤチャン。

車掌:丹波のどちら?

涼太:京都府側ですね。京丹波町。

鳩:全然、訛(なま)って無いよね。丹波の人はみんなアヤチャンみたいな感じなのかと(笑)

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涼太:ほんでね、丹波。星が綺麗で見てるのが好きやったっていうのもあって。

車掌:それは観測ってレベルの?

涼太:いや、全然、全然。ちょっと見て、白鳥座やなってぐらいの事なんですけど。どちらかというと宇宙っぽい感じが好きで。

車掌:モチーフの指定の仕方が、すごい面白いなーって。決め方が。素粒子とかもあるし。物質そのものに対する想いが強い。

涼太:もともと僕、陶芸やってたんですよ。器じゃなくてオブジェとか立体作品ぽいやつとか。陶器と異素材、金属とか合わせて作るのが好きやって。で、卒業してから、もっと金属の事勉強したいなって思って、アクセサリーとか作って。

鳩:素材は何?

涼太:真鍮でしたね。今もなんですけど。銀とかは彫金教室にちゃんと通い出してから扱うようになって使えるようになったんですけども。専門的な技術はまだまだで。

鳩:ふんふん。(アクセサリーとして)作るもの自体も小さいですけど、モチーフ自体、例えば星も小さいし、素粒子なんかも小さいですね。

涼太:何かね、小さいものに対する思い入れというよりは、作ってるのは一つのパーツなんですけど、それがいっぱい集まった時に面白い形になるのに興味がある。

鳩:東洋と西洋やったら東洋の方が好きですか?

涼太:もともとね、宗教けっこう好きなんですよ。

車掌:ふーん。

涼太:歴史がまず好きで。

鳩:宗教の歴史って、人がマジでやってる歴史やから面白いですよね。

涼太:そう。大学の時は宗教が好きで、仏教とか結構好きやったんですよ。まあ、そんな詳しくないんですけど。

鳩:東洋っぽさを僕は(アクセサリーから)感じる。

涼太:お、ありがとうございます。

車掌:今回一応、二人展のテーマにも

鳩:東洋やった?

車掌:いや。フラクタル ※注1 っていう、ある物の一つの形が(集合した)全体の形と同じ形をしているという。

涼太:何か、化学っぽい感じも好きやし、東洋的な思想も好きやし。

鳩:恵文社さんとかで見た時もそうだし、ここで見た時もそうなんですけど、ある一定の世界観からはみ出た物はあまり作られてないような気がしました。

涼太:うん、その通り。ちょっとづつ広げて行ったほうがいいかなと。(ギャラリーから帰る方に挨拶)お!ありがとう。

鳩:いいんですよ、ラジオじゃないんで。全然途切れませんので。

(途切れた)

車掌:何でまた、こういう事を?(と、アクセサリー箱の内側に書かれた短い文章を見せる)

涼太:アクセサリーは1個、1個、僕なりに考えて作ってるんですけど。そのアクセサリーを人が持つにあたって、より想像力が膨らんだらいいなと。

鳩:言葉が、ピターッと合ってますよね!

車掌:厚かましくないし、割と、何と言うかな…。聖なる感じですよね。ホーリーな(笑)身に付ける物として、神聖な物として捉えられてる感じ。

涼太:気を付けなあかんなと思ったのは、化学的になり過ぎたりとか、オカルトっぽくなり過ぎてもあかんし、バランスが大事やなと思い始めてて。これからもそういうバランスの中で作って行きたいなと思ってるんですけど。

鳩:あらゆる時代の、あらゆる人たちが愛してるモチーフが多いですね。

車掌:これ(箱に書かれた文章)を読んで、こういう感じの蔵書量が凄いんやろなと。

鳩:1個、1個確かな情報を引っ張って来てる感じがする。めっちゃ好きなんだろうな、と(笑)全部確信を持って書いてはるな、というのが分かる。

涼太:神話も好きやけど、一番好きなんは歴史なんですよ。なんせ。歴史って結局色んなもんに繋がってるから。でも子供と一緒に本見るくらいの程度ですけど。

Murgraph:でもさ、この間、チンギスハーンについて凄い語ってた。(笑)

涼太:前世(笑)

鳩:前世(笑)

車掌:っぽいですよね(涼太さん)そっち系の顔立ち(笑)大陸系の。

涼太:好きやったんは、ユーラシア大陸の文化の遊牧民とかが凄い気になって。

鳩:朝青龍とかいる所ですか?

涼太:(笑)でも案外チンギスハーンとかそんな顔かもですね。

鳩:長髪にしたらね(笑)

涼太:白鳳っていうよりは朝青龍っぽいかな。

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鳩:割と谷内さんは平和っぽいですよね。落ち着きを感じるというか。

涼太:そんな風に見られるんですけど、結講イラチやったりもするんで。

車掌:こんなん言ったらアレなんですけど(笑)涼太さんの後輩の女の子が作品を買って行ってくれたんですけど…

涼太:誰やろね、それ。

車掌:当時は怖い先輩やった。って言ってはって。昔は結構、ヤンチャやったですか?

(ここで谷内さんの奥さまとお子さんがワイワイとやって来る)

涼太:今は穏やかで(笑)

鳩:幸せそうな登場感(笑)そりゃ穏やかでしょう!(笑)

(中略)

涼太:一人じゃ何にも出来ないタイプなんで。

車掌:やってるじゃないですか!お店も。

鳩:この(と名刺を見る)「ちせ」※注2 さんは、アクセサリーと妹さんがジャムやってんのやもんね。奥さんが陶器を作ってて。

涼太:全員はじめは、陶器やってたんですけど…

鳩:ほー!

涼太:妹はジャムに変わって、僕はアクセサリーに変わって。

車掌:それ面白い(笑)

鳩:いい変わり方やね~! 陶器からジャム。穏やかー(笑)

車掌:言いたくなるもんね。陶器からジャム。

鳩:あの、くるくる虎が回ってたらバターになっちゃう感じ。そういうまろやかさがあるよね(笑)

車掌:妹さんのジャムは、お店で作ってるんですか?

涼太:妹はね、一階で。

鳩:妹さんの創作欲求について、とっても気になります。

車掌:おお、いい事言った(笑)

鳩:(ジャムは)食べられちゃうじゃん、陶器は食べられへんけど。

涼太:その辺あんまり聞いた事無いけど…

鳩:妹さんやもんね。

涼太:あ、でもね、(妹は)イラスト描くんも好きなんですよね。ジャムのフタの。

鳩:あー! あ、でも。本当に大事な部分は食べられちゃうじゃないですか。 あ、それがいいのかもね!

涼太:うーん、どうなんやろ。

車掌:そこあんまり家族は干渉しない所ですよね(笑)

鳩:(笑)家族はまあ、そおっとしとく所やけど、他の人からしたら気になる(笑)

涼太:あ、でも分かります。僕もまあ、どうなってんのやろ、と。

鳩、車掌:(笑)

Murgraph:メインがジャムなんですよね。

涼太:もう完全にジャム。ずーっと、年がら年中、作ってるんですよ。

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鳩:涼太さんは(お店作りにしても、作品に関しても)突き詰めるっていう感じも程々に、っていう感覚をお持ちですか?余白を持つというか、ガツガツしないというか。

涼太:そうですね。

鳩:もちろん、完成度とかは全然あるんですけど… そこじゃなくて…。

涼太:それ、何か言ってはる事分かりますわ。

車掌:(笑)

鳩:その心持ちも作品の一部として、ゆったりしたものとして伝わって来る。

涼太:もともとね、ストイックな部分とかあると思うんで…

鳩:うんうん。

涼太:突き詰めてやって失敗するというのが凄い多いタイプのような気がするんですよ。

鳩:なるほど。

(中略)

鳩:ケント・マエダヴィッチ君と今回の展示ではじめて会ったんですよね。

涼太:はい。

鳩:展示のテーマがリフレッシュメント、と。

涼太:何かその、リフレッシュメントという所で、僕のリフレッシュメントというのは、再生とか、そういう感じで。

鳩:リセットとか、そういう感じ?

涼太:あ、じゃあ間違ってますね。

鳩:(笑)間違ってますか。

車掌:でも拡大解釈して、再生もあって。僕の中では合ってる。

鳩:なるほど。(笑)

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鳩:ケント・マエダヴィッチ君の絵と、アクセサリーや入れ物に書いてある文章の波動は違うんですけど、何か「濃さ」が似ていると感じました。

涼太:イルボン君も、イコンの裏表みたいだと。

車掌:ケント君の絵は、「昨日こんな女の子見た」みたいな都市伝説的な感じだと思ってて…。

鳩:書いてたなー、どこかで。「え?どういう事~?」と思て読んだ。(笑)

車掌:ケント君はシティっぽいというか。対して涼太さんは歴史とか古代とか、事実に依ってるというか。お互いが在る事で世界が成り立ってるというか。

鳩:ふんふん。

車掌:そんでね、ケント君の事代弁して言うと。ケント君はそもそも、ヨルチャには合わないと自分では思ってたらしくて。

鳩:言ってはったね。

涼太:そうなんすか。

車掌:そんで、僕も実はそんなに、違うかなと思ってた(笑)でも何か僕の中で引っかかりのようなものがあって、(ケント君の)展覧会にはちょくちょく行ってて。それで、ワンクッション入ってもらう事で、展覧会として成り立つかなと。今回涼太さんに声掛けたんですけど。

涼太:ありがとうございます。

車掌:思いのほか、二人がいい感じに大人だった(笑)

鳩:二人に共通して思うのが。作品見てると言葉が吸い込まれて何も出て来ない感じになります。

(中略)

涼太:もともと一階の展示はもっと沢山、ザーッとアクセサリー並べてて。それで二階に行ってから展示に手こずってて… 降りて来たら凄く置いてあるものが減ってて。

車掌:すません(笑)

鳩:そういうとこ(イルボンさん)あるからね~(笑)

全員:(笑)

涼太:でもそれが、ええ感じの展示になってたー。

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鳩:京都でお生まれになって、ずっと京都ですか?

涼太:そうですね。

鳩:京都は好きですか?

涼太:京都は好きですね。たまに飽きて来ますけど。狭いんで。

車掌:京都長いっすね。

涼太:長っすね、左京。

車掌:今、お店やって、生活してて何が一番楽しいですか?

涼太:最近制作なんですよね。卒業してお店を始めて、最近お店はまかせて、やっとこうして展覧会とか出来るようになって。次も11月に自分の店で展示したり、5月にも岐阜でやったりとか、それをやらせてもらうんが凄い楽しい。

車掌:お店が一旦落ち着いて、制作へと。

涼太:そうそうそう。

鳩:谷内さんの話聞いてて思うのが、左京という場所で生きられてる事と作品世界がとっても密接な感じがして、モチーフもね。

涼太:まじっすか。

鳩:あそこで生まれて暮らしてる事と、作品が密接な感じがして… 素材の薄さとか。あの、フォークロアって言葉がありますけど、民間伝承というか。そういう感じを感じるんです。

涼太:それはうれしいですね。「左京の」というのは、分からないですけど。

鳩:あのへん(左京)の集合的無意識をすくって形にしたようなイメージを僕は感じます。

車掌:この前の(座談の)小澄源太さんの話ともちょっと被る…

涼太:何かそういう(民間伝承のような)ものに憧れたりとかします。

鳩:何か民間伝承ってエゴを感じないとか、アノニマス的(無名的)※注3 な感じもちょっと感じますね。「俺の作品だ」という烙印を押してない感じとか。

涼太:憧れますね。

鳩:あのへん(左京)に漂う良心のようなものをすくい上げられてる感じがします。ナチュラルな流れなんでしょうけど。

涼太:普遍的に美しい形であるとか。

鳩:普遍を追求しつつも(行き過ぎるのを)止めてる感じもして。生活人として。普遍を追求していったらマルだけの形になっちゃうような所を止められてる気がします。さっきストイックという話題が出たけど、ストイックになり過ぎない、ナチュラルに生きてる事と、作品が矛盾しないというか… バランスを感じます。

涼太:そうです。その通りです。

鳩:でしょー。

涼太:ほんで、そんな事を考えながら生活してる自分が好きで…

鳩:それが聞きたかった。

涼太:そんな哲学を持って生きてる事や、次どうしようかなと考えてる自分も好きで。

鳩:いいねー。

涼太:そういうぐらいの感じで生きてるんです、ふふふ。

鳩:なるほどね。僕はもうこれで今回のオチまで行ったので、あとは(今給仕場で飲み物作られてる)イルボンさん戻って来て一言もらったら終わろうかな。

涼太:いやあ、フワフワしてた感じがとらえられました。

車掌:(戻って)いわゆる作家性がどうとかじゃなくて、連綿と受け継がれて来た、じゃないけど…。そんな場所、歴史の中に涼太さんも属していると。そんな感じですかね。

涼太:すげー、まあいい感じに言って頂いて。何かスッキリしました。ありがとうございます。

鳩、車掌:ありがとうございます。

※注
1 フラクタル:図形の部分と全体が自己相似になっているものなどをいう。(ウィキペディアより)
2「ちせ」:北白川の小さな「お家」。毎日の暮らしの中で心に”ゆとり”が生まれたらその瞬間を優しく 大切に過ごしたい。そんなお店。(ちせホームページより)
3 アノニマス:「匿名」を意味する英語。(ウィキペディアより)

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文責/小鳩ケンタ

小鳩 ケンタ

小鳩 ケンタ

詩人/コバトレーベル主宰

イルボン

イルボン

詩人/詩演家。またはgallery yolchaの車掌。
ジンジャーエールと短編映画と文化的探検が好物。

2006年、第一詩集「迷子放送」を上梓。
2007年、自らの詩の語りとパフォーマンスに半即興的に音を乗せる、活劇詩楽団「セボンゐレボン」を結成。
2010年、大阪で多目的ギャラリー「gallery yolcha」を運行開始。

※gallery yolchaは、大阪・梅田近くの豊崎長屋(登録有形文化財)に位置する特殊な木造建築です。この屋根裏部屋とバーカウンターがあるギャラリースペースを使って、共に真剣に遊んでくれる作家を常時募集しております。詳細は上記リンク先をご覧下さい。

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