当番ノート 第8期
我が家についている でこぼこな窓ガラス。 僕はこのガラス越しに見る世界が好きです。 形は、よくは分からないし 光もぼやけて、大まかな色しか判断できません。 でも、そこが良いのです。 完璧には見えない、形や色を想像してみる。 色と色、光と光が交じり合ってきれいな世界が広がる。 「きっと、きれいな青空なんだろうな。」 そんな風に考える。 実際の空を見るよりも、いっぱいいっぱい想像する。 そして、なによ…
当番ノート 第8期
才能や技術がなくても、口笛でもできれば誰でも作曲ができるのだと聞いたことがあります。 何年か前、ガレージバンドでちょっとした打ち込みの曲を作ってみようとしたことがあったのですが、どういじくり回しても一曲も完成させることができませんでした。一つのフレーズ、コード進行を作っても、それを発展させることができないのです。どのように脳を使ったらいいのかがわからないのです。 一つの情景があってもそこからなにも…
長期滞在者
先日、不思議な体験をした。とても暖かい日の夕方、夕食後にAndyさんとちかくの自販機まで歩いていった。比叡山の真上に細い三日月があがっていて、きれいだねなんて言いながら。ふたりで大好きなPepsi NEXを買って帰ろうと思ったのだけれど、ふと気になっていたことをAndyさんに聞いてみた。小学校へは、どの道を通っていたの?今度、一緒に歩いてみようか、ってそれで終わると思っていたのだけれど、いざ家に…
当番ノート 第8期
朝起きると両親の枕元にも小さなプレゼントがあった。 クラスのみんながサンタクロースの正体についてあれこれ言ってるとき、 「何をとんちんかんなことを」とまったく聞く耳も持たないほど僕はその存在を信じていた。 わが家のクリスマスの朝は、子供たちだけではなく、 親の枕元にも同じようにプレゼントがおいてあって、 パジャマ姿のまま家族みんなで大喜びしてたのである。 いまはなんと巧みなサンタクロース演出であっ…
当番ノート 第8期
シドとニックの二人は樹で囲まれた山の中の野原にやって来た。様々な草花の混在するその場所では、蝶や蜂やハナムグリや天道虫などが飛び交っていた。落ち葉の散らばる地面のところどころにはきのこが生え、蟻やダンゴムシや蜘蛛、その他多くの虫たちが行き交っている。太陽は少し傾いていたが、日光はわずかに黄みを帯びていたもののほとんど真っ白で、眩しすぎるほどだった。 彼らはその野原の片隅の、大きな榎(えのき)の陰に…
当番ノート 第8期
ベンチで友達を待っていたら、隣に座っていたおばあさんの手のひらに四葉のクローバーがあった。それはとても立派な大きな葉をしたクローバーで、おばあさんはとても大事そうにその葉をゆっくりと触っていた。 「拾ったのですか?」と思わず声をかけた。 お花が趣味のお友達にもらったのだと言った。 これを紙で挟んでおしばなにするそうで、中心が紫色の美しいクローバーをもちあるいては、時々ひろげては見ているのだと云う。…
当番ノート 第8期
目が見えない人が見える人の世界を想像しがたいように、耳が聞こえる人が聞こえない人の世界を知りがたいように、痛みを知らない人が、他者の痛みを想像するのは、宇宙の外側、死者の国を想像するよりも難しい。 北の小さな港町で、生まれ故郷を喪失しながら祖母は育った。町いちばんの美しい男のもとにうまれた彼女は、他の子たちとはあきらかに異なる風貌をしていた。大きな二重の瞳、高い鼻梁、ばら色の頬、こどもたち…
当番ノート 第8期
最近いろいろな機会をいただき いろいろな場所で いろいろな出会いをいただいています。 今までは考えられないような ところや ひとや。 でも、お話しをしてみると すきな事・・ すきな物・・ 感動すること・・ 大切に思うこと・・ 一緒だったりします。 そんな話をしていると時間を忘れてお話しをしてしまいます。 ふっと思うのです。 実は出会う前からもう、つながっているのではないかと・・・ そんな出会いを求…
当番ノート 第8期
いつから絵を描いていますか、という質問に「物心ついた時からずっと描いている」と答えることに憧れがあります。しかし私はどちらかというと工作が好きな子供で、学校や保育園で求められるとき以外に絵を描くことはありませんでした。 自分から絵を描くようになったのは小学校の六年生、そのころに自分の部屋が与えられました。姉に借りた漫画の表紙絵を色鉛筆で模写していたのが始まりです。それからだんだんとひとりの部屋で絵…
当番ノート 第8期
3.14 という数字が好きだ。 初めて円周率を教わった時、その数字が永遠に続いていくいうことに とてつもない驚きとそういう存在に対しての畏れのようなものを感じたのを覚えている。 子どもの僕には何でもできるかのように見えていた大人たちがこぞって考えてみても、 その答えは見つからないと言っていたのだ。 自分などには到底理解の及ばない存在を知って、 とにかくワクワクした。 でもそのあと、「永遠」がなんと…
当番ノート 第8期
シド・ドレイクは空前絶後の天才ギタリストだった。フィードバックを多用した、彼のエレクトリックギターによる演奏は大変なものだった。時には滝を思わせるノイズの飛沫(しぶき)を撒き散らし、また時には春の陽ざしを思わせる輝くフレーズを降り注がせ、別のある時には宇宙空間へ誘(いざな)うような倍音に満ちた音の塊を放出する。彼はたった独りでステージに立ち、それを生み出した。シドのギターの音を浴びた者は、その度に…
当番ノート 第8期
好きな映画は、と問われたら山のようにあるけれど ヴィム・ヴェンダースのパリ・テキサスは間違いなくその中の一本に入る。 最初に見たのは確か18頃で、映画が大好きだった彼に薦められてみた。 よく読んでいた荒木陽子の「愛情生活」にも紹介されていた。 色彩が男らしく、砂漠をすたすたとひたすら歩く 赤い帽子をかぶった主人公のトラヴィスにすっかり脳をやられてしまった。 愛する人を胸に抱えた人は時々悲しく写る。…