当番ノート 第5期
色づいた銀杏の樹を見上げて歩く秋乃。 僕はゆっくりと歩調を緩める。 そのまま離れてゆく秋乃。 そして、後ろを振り返る。 ぽつんと立つ秋乃。 僕は静かにファインダーを覗く。 秋乃が少しはにかむ。 一瞬の静寂が訪れる。 いつものように光を閉じこめた僕は、 秋乃のもとへ駆け寄る。 そうして再びゆっくりと歩き出す。 秋の風が吹き抜ける。 (写真:2011年11月 昭和記念公園)
当番ノート 第5期
夜のはざまにひとりの女 ビルのすきまにひとりの女 角をまがればひとりの女 女 女 ひとりの女 背中をみせてひとりの女よ 喘いでみせてひとりの女よ 産毛を逆撫でちくちくするよ 膝まづかせてひとりの女よ よく笑いよく泣きおおいに食べ 時に狂い時に沈みそして浮かびあがる やわらかなその腰つき しなだれるそのうなじ か細く力強い手首と視線 ふり返ればひとりの女 あおぎ見ればひとりの女 嗚呼 女 女どもよ …
当番ノート 第5期
シリーズ「山」より 2012 シリーズ「山」より 2012 「星霜連関」という民俗芸能を撮影したシリーズの他に伊勢へ来て撮影しているものに「山」があります。このシリーズは伊勢神宮の鬼門の方角を守護すると言われている朝熊山という山で撮影した写真で構成しています。昔から「お伊勢まいらば朝熊(あさま)をかけよ、朝熊かけねば片参り」と伊勢音頭で唄われるように、参宮を終えた人々は、朝熊山に参詣するのが一般的…
当番ノート 第5期
最近、わたしはめっきり自信というモノをなくしてしまっている。 これまで、無意識に持っていた価値観みたいなものが、もの凄い勢いで音を立てて崩壊していくのを感じている。 これまでゆっくりとそれに対して考えを持つ機会を持ったことのないものが、どんどん情報として文字(言葉)というもので入ってきて、まだ自分がそれに対して何の考えも持たない無防備な状態の時に、わたしの中で芽を出し、根を張ってゆく。 しかもそれ…
当番ノート 第5期
無花果(イチジク)。 私がこの果物を食べるようになったのは、大人になってから。 それもごく最近のことで、4人目を授かったこの夏のこと。 市内にある実家へはしょっちゅう足を運んでいる。 娘たちの習い事が実家の近くで行われるため、それを口実に。 週に一度は長女と次女をピアノの先生のお宅へ預け、 三女と私はそのまま実家へ向かい、一時間ほど過ごして帰ることもあれば、 ふたりを迎えに行き、再び戻り、夕飯をい…
当番ノート 第5期
木を見て森を見ず、という言葉がある。 森を見て木を見ず、ということも言えるだろう。 以前、ある若いダンサーにこんな事を話した。 多くのダンサーは、自分の(要素や機能や人生の)一部として「ダンス」を考えているように思う。 それはそれで全く普通の事だが、でも、こんな考え方も出来るんじゃないだろうか。 「ダンス」というものの一部として、自分がダンサーとして含まれている、と。 「ダンス」のイデア的集合のよ…
長期滞在者
へジナウドの息子さんが癌である、そういう話が飛び交ったのはある朝のことだ。事務員さんが話しているのを盗み聞きしてしまった学生がいて、その話は、乾いた土に降る雨のように、あっという間にクラス中に広まった。友達のいなかったわたしでさえ、それを耳にしていた。あまりにはやく広まったこの話が真実なのか、ただの噂なのか、誰しもが気にしてた。校長に問いつめてみよう、と言う者もいた。だけど、クラスのリーダー的な…
当番ノート 第5期
最近、靴というのはめちゃくちゃ奥が深いなあ…と思っている。 あと最近、こういう、ほら糸井重里みたいなこういう改行の文章。 この改行技をマスターしようと思っている。 だってさ、こっちの方が絶対に経済的だよ。あと、読みやすいしね。 アパートメントの原稿料は一行千円だっけ。ほら、これだけで五千円。 もう六千円か。儲かるなー。 それで靴、に話は戻るんだけど。 糸井重里みたいな極悪人だとさ、こういうフヌケた…
当番ノート 第5期
夏は暑い。 茹だるように暑い。 毎年毎年これでもかって言うくらい暑い。 すぐに喉は渇くし、 汗でシャツが身体にまとわりつくし、 突然の夕立で洗濯物が台無しになるし、 風呂に入ると焼けた肌がヒリヒリするし、 毎日毎日寝苦しい夜がつづく。 早く秋になってくれと毎年思っている。 でも、 空がこの上なく青くなるし、 植物は生き生きとして緑を強めるし、 冷えた麦茶が最高にうまいと思えるし、 冷やし中華はじめ…
当番ノート 第5期
魚はおぼれる 鳥はおちる 朝はこがれる 夜はしずむ 虎はなく メデューサはふるえる 夢はやぶれる 恋はかなわぬ 愛はさかれる 僕のいきる 一日にかならずどこかで 老人はしぬ 子はうまれる 若者はうつろう 女はよそおう 男はつかれる それは現実 そして今日 あらゆる未来 明日には過去 昨日は終わった
当番ノート 第5期
シリーズ「星霜連関」より 2012 シリーズ「星霜連関」より 2012 はじめまして下平です。出身は神奈川ですが、今は作品制作をするため、三重県伊勢市に住んでます。伊勢に何故来たかというと以前から撮影していた「星霜連関」という民俗芸能や祭りを中心にしているシリーズを今度は伊勢を拠点に西日本の撮影しようというのが主な目的です。この場所を借りて、現在から過去へと時間を流し、現在の自分の写真の源流へと辿…
当番ノート 第5期
うたがうたえるひとが好きだ。 わたしはうたがうたえない。 わたしもいつか、うたうための手と耳がほしい。 羽根を毟ってしまうのは、いつも自分だった。 飛びたい、囀りたい、虹がみたい、誰よりも傍で君を聴きたい。 夢は欲で、近くて遠い白と黒。 羽根をひろげようと懸命になることは、毟るほどに羽根を失うのと同じだった。 うたうのに必要なのは、声じゃない。 伸ばしたい手と、うずめたい耳。 鳥はきっと、飛び立つ…