当番ノート 第47期
(前の話) 洋子はワタシの天使なんだ。会社でたった一人の同性の同期。気が強くて、納得いかないことがあると真正面からぶつかっては傷つき、ぶつかっては傷つくワタシを、洋子はいつだってそのまま肯定してくれた。「そうそう係長ほんとクソだよねー」なんて軽はずみに同調もせず、「そんなことより駅前に新しくできたパティスリー行かない?」とかあしらわずに、「美央は正しくないけど、間違ってもいないよ」「私は美央を応…
長期滞在者
ふと思い立って新しい眼鏡を作った。 家の中で使っている眼鏡がゆるくなり、鼻からよく落ちそうになった。 これは生活しずらいなと思ったときに、10年近く眼鏡を新しくしていないことに気づいた。 そういえば、なんとなくここ数年、何もかもが見えづらい。 眼鏡屋さんで、改めて視力を測ると明らかに古い眼鏡では度数が弱かった。 そこで、ストレスを抱えることなく見られるように、新しい眼鏡を作ったのだが、 帰り道に「…
当番ノート 第47期
「言葉の拡張」として、おもむくままに続けてきた連載もあと二回で終わるらしい。あっという間だった。「週に一度何かを提出する」という行為自体がかなり久しぶりのもので、新卒すぐからフリーランスとして働いている身としては「一週間」の感覚さえ薄く、だから、毎度毎度ギリギリになって企画を捻り出しては提出するというひどい体たらくであった。 いつもは、PRなどの職業柄もあってか、こんな風に「何か」を作る際には入念…
長期滞在者
鬼海弘雄さんの代表作「PERSONA」について、もう何千回も聞かれるであろう、どんな人に声をかけているのか?という問いに対して、いつも鬼海さんは自分でもよくわからないといいます。45年間同じ場所に留まり、他人には絶対に真似のできないような圧倒的な時間の積もらせ方をしてもなお、ご自身がレンズを向けている物事を一言で言い表すことが困難だというのは、とても興味深いものがあります。そして、わからないものを…
Mais ou Menos
Pちゃん お疲れ様です。今日は変な時間に目がさめてから眠れなくて、起きることにしました。久々に好きな紅茶をのみつつ、この手紙を書いています。 私もPも、どちらかというとネガティブに物事を考えがちだけれど、最近こころがけていることがあります。悲観的になりそうなときも、まずは今自分が感じていることが、自分の本音、本心なのかを考えます。自分の体の状態についても考えます。すると、その悲しい気持ちや不安の「…
Do farmers in the dark
表題:北の方の、寒い国にいる さて、今回もいつものごとく食って寝るの生活を続けており、またもや何もできず、またもや毎回のように最近の事や最近の絵についての事について、おおいに語っている。本当に申し訳ありません。 <第1話 お弁当を作った> 最近お金が無い。実のところ、10日前からすごくお金が無い事に気付いた。全くの予想外だった。今の今まで自分がかなりリッチ…
当番ノート 第47期
クロールの息継ぎは、難しい。 ブクブクと泡を立てて息を吐いて、顔を横向けて息を吸って、足はばたつかせながら、手は回しながら。 なんてマルチタスクをしているんだろう、と思う。 現代の世の中もそんな感じだから、しんどいのかもしれない。 生きているのが当たり前の世界、浮き袋を持っているのが当たり前の世界。 誰だって生きづらさを感じているはずなのに、誰もが隠すのはどうしてだろう。 見えやすい砂袋を持った人…
当番ノート 第47期
11月11日の今日は誠の命日だった。無限に流れる過去から未来への時間の中の、全く違う今。2014年11月11日から時間が流れて、2019年11月11日になった。 1回目の11月11日は、職場で一日中事務作業をして過ごした。次は、おばちゃんと小籠包を食べに行った。その次は、四国で個展準備の日だった。搬入を終えて、おばちゃんと露店でご飯を食べた。去年は、おばちゃんと肉を食べに行った。命日がただ過ぎてし…
当番ノート 第47期
みんないろんなことを言う。 あなたは何を言う? 私は何を言う? 言葉にしないと伝わらないけど、言葉はいつもうそつきだ。 どんなに言葉を尽くしても、私の気持ちは表せない。 私とあなたは違うから、見ている世界も、使う言葉も違うから。 「ラーメン」って言われて、想像するもの違うでしょう? 私は夜鳴きで、あなたは家系だったりするでしょう。 そういうすれ違いで、きっと傷つく、傷つけ合うことは避けられない。 …
当番ノート 第47期
わたしは、「絵を描く人」のことを心底尊敬し、羨ましいと思っている。 ここでいう「絵」は意味合いとしては「画」のことで、デザインや写真作品なんかも入ってくるかもしれない。 絵は、速い。 絵は、つよい。 瞬間的に、受け手の心に届けることができる。言葉よりもずっと多くの印象や情報で、心をゆらすことができる。 中学生の頃から、絵を描ける友人を心底尊敬していた。 わたしの拙い文章力で説明する世界観を、彼女は…
長期滞在者
今月は急に寒くなったり雨が降ったり。この家は絹江ちゃんを見送り、れいちゃんを迎えたり。 変化が大きいときこそ、ゆったり構えていられたらと思う。 湯たんぽで体を温めたり、お茶にスライスした生姜を入れて過ごす。 この家もそろそろこたつの準備をする季節かもしれない。 写真はみんなが大好きなちゃんこ屋のメニューの壁。来るたびにみんなでじっくり読んでしまう。 店員さんのメニュー紹介が独特なのだ。 10月1日…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
何かを目の前の人に伝えたいと思うとき、それがその人への贈り物なのか自分が言いたいだけなのか、自信をなくして口をつぐむことがこのところ多い。こんなことは以前にはなかったので、もしかしたら成長と取るべきなのかもしれないけれど、私は口をつぐむ淋しさを持て余している。そしてそのことは、今のところ情けなさを伴う。 小・中学生のときの同級生で、ひとりとても大人びた女の子がいた。身長がすらっと高くて、ゆっくりと…