それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
私が小学生のときに道端で出会っているから、姉さんとの友だち歴はもう20年近くなる。親子ほど年の離れた私たちが「友だち」というと周りの人たちは少し意外そうな顔をする。ほかにちょうどいい言葉が見当たらないのだ。会話をしているときの調子は友だちに見えるだろうし、一緒に出かける姿は親子にしか見えないかもしれない。今ではどちらもしっくりきてしまう。 私たちの最初の共通点は、ほぼ同時期に、同じペットショップで…
当番ノート 第43期
ジョン・ロールズという政治哲学者は、ソクラテスを引用しながら人間の動機の在り方について説明した。 人間は、一般に自分の能力を行使することを楽しむ。このとき、その能力がより高次で複雑になればなるほど、その楽しみが大きくなる。 でも、どんな人間でも、その潜在的な能力や成功は、一人の人生の中で表現できるものをはるかに超えている。大きな楽しみをもたらすような高次で複雑な活動のうち、一人の人間がすべてをやり…
当番ノート 第43期
どうもこんにちは。 そにっくなーす a.k.a.ひのはらみめいです。 ツイッター上にて、連載でどんなのよみたいですかーって聞いてみたら、 1.現象学的精神医学 2.私のメンヘラエピソード 3.詩を書くときのこと 4.きょうのそに村さん の4択のうち、『きょうのそに村さん』がなぜかいちばん得票数が多かったので、そにっくなーす版『きょうの猫村さん』的な記事を書こうと思います。 通勤中や通学中の暇つぶし…
当番ノート 第43期
2019年2月末より、ハンガリーの首都・ブダペストにあるエルテ大学*で、「日本の歌を歌うサークル」が始まった。ブダペストにはエルテ大学とカーロリ大学に日本学科があり、日本語を学ぶハンガリー人学生が少なくない*。ハンガリーで日本の歌を歌うきっかけを作ってくださったのは、カーロリ大学*の後藤先生であったが、今回はエルテ大学の日本学科に勤める内川先生から、このサークルの歌の指導の依頼を頂戴し、昨年から少…
当番ノート 第43期
13 グッドバイ 人々が芸術に取り組む時「芸術なんて無い」ということを誰もが一度は思う。しかし、そこで逆説を使い続けることだけが私たちに芸術を続けさせる。それは森羅万象から疎外され、神にも野獣にもなれなかった者たちの、仕方のない逆説である。この美学が近代によって達成された時、それは「別れ」として起こった。さようならだけが人生だとすれば、しかし人間が生まれるのは死ぬためでなく、始めるためであると返す…
長期滞在者
先月2月4日、経済学者で補完通貨専門家(本人はMonetary architectという呼び方を好んでいた)である ベルナール・リエター氏(日本ではベルナルドと表記することが多いらしい)の訃報が届いた。 ぼくが約8年前に東日本大震災被災地を訪れた後に、 地域通貨についての話を聞きたくて、 彼のブリュッセルのマンションを訪れて以降、 何度か会ってお金についての個人講義をしていただき、 さらには彼の著…
当番ノート 第43期
上京して一軒目の家に住んでいたときのことである。ネットで流れてくる各大学のミス・ミスターコンテストの投稿を何となく見ていると、面白そうなミスター候補が目に留まった。その人のホームに飛んでみると、絵も描く人らしい。音楽も詳しいみたい。美術史専攻だし、面白そう。私は高校生のときは美学を専攻したいと思っていたので、そういう人たちには何となく憧れがある。 たまたま、彼の大学のキャンパスが当時…
当番ノート 第43期
こんにちは。そにっくなーす a.k.a.ひのはらみめいです。 今回は、わたしが生業として嗜んでいる詩の朗読をやる理由についてお話しようと思います。 実用的なこと、とまではいかなくてもちょっとした時に読んでへーってなってもらえる、そんな連載にしたいのですが堅い話ばかりでもあれなので、ここらでちょっとひとやすみといったところですね。 以前ポエトリースラムという大会の日本国内での予選に出た時に、ぼろくそ…
当番ノート 第43期
なぜ、ハンガリーへ留学してから6年目にして、ハンガリー語学学校へ通っているのか? 語学勉強を甘く見ていたのかもしれない。リスト音楽院に在籍していた4年間、何もしていなかったわけではない。リスト音楽院にはありがたいことに、日本人の先生が日本語でハンガリー語を教えてくれる90分のクラスが週に2回ある。私も用事が無い限り、その授業に積極的に参加した。とても分かりやすく、ハンガリー語の勉強の導入として最適…
当番ノート 第43期
10 愛、哄笑、落下傘 希望について語るとき、私たちは一つの宿命を受け入れる必要がある。ロマンと消費の相性の良さは私たちが人類であることに関係している。いまや、あらゆる運動は商品でしかなくなった。愛は消え失せ、広告だけが残った。20世紀が情報化と資本主義という革命によって無数の人々を生贄にしたことは既に述べたが、この話はもっと具体的に語られる必要がある。すなわち、この未曾有の革命の中で散った愛とは…
長期滞在者
先週、5日ほどUAEに出張していた。 海外に行くのは学生時代から好きだったが、物価が高く、ここでの一泊分はインドや東南アジアでの何泊分になるだろうと考えると、UAEはなかなか足が伸びない国であった。 今回は、企業進出支援を行う国の機関の主催のもと、現地市場の視察、現地政府・企業との商談、またそれだけでなく現地の文化に触れる観光施設の見学もコンテンツに含まれていた。 ドバイ、アブダビといった大都市圏…
長期滞在者
〈下図版:2018年11月、パリ・フォトにて「MASAHISA FUKASE」を掲げて〉 先週末、突然の訃報を受け取った。 それは月曜の朝だった。アムステルダムはここのところ春にだいぶ近づいた天候で、ぽかぽかと穏やかだ。さあ、新しい1週間が始まるぞとデスクに腰を掛けてメールアプリを起動させると、タイミング良く新しいメールを着信した。件名は「Xavier」。すぐさま中身を開くと、単刀直入の本文が知ら…