真夜中をすぎたころ、おじいさんはベッドにはいり、気持ちよく毛布にくるまると、からっぽになった戸だなのことは考えないようにしました。そのかわりに、ねこのお客のことを考えました。ほんとに、わたしがたっぷりたべさせてやらなかったら、あのねこは、飢え死にするところだったろうなあ。
そのとき、なにかが、ベッドの上にのったような感じがしたかと思うと、ふたつの緑色に光る目が見えました。ねこがふとんの下にもぐりこんで、おじいさんの胸に体をよせてきました。気持ちよさそうにゴロゴロとのどを鳴らし、ねこがうれしいとき眠いときにいつもするように、ときどき前足を動かしました。それまで、おじいさんは毛布をかけていても寒かったのですが、ねこが気持ちよさそうに落ち着いたとたん、頭のてっぺんから足の先まであたたかくなってきて、じきに、ぐっすりと眠りこんでしまいました。――ルース・エインズワース作「ねこのお客」より
25日はにゃんこの日なので更新します。
メリークリスマス!今日はクリスマスにぴったりの物語です。各国の昔話から題材をとっている「にゃんともはや!のねこばなし展」ですが、このお話は創作で、イギリスの児童文学作家エインズワースによるものです。
(あらすじ)
寒い冬の頃です。ひとりの貧しいおじいさんがいました。おじいさんは一週間のうちで土曜の晩だけ、肉やミルクにひたしたパンといったつつましいながらもごちそうを食べることにしています。そんな土曜のこと。外で何かが鳴く声がします。おじいさんが戸を開けると、はげしい雨風とともに一匹のやせた黒猫が入ってきました。おじいさんは黒猫をタオルでふき、ミルクをあげました。黒猫はお皿に飛びついてミルクを空にすると、もっとほしいというようにニャーニャーと鳴きました。そこでさらにミルクをあげたのですが、ミルクをいくらついでもパンをひたしてあげても猫はまだ足りないと鳴くのです。結局、おじいさんは、楽しみにしていた肉も、スープにしようととっておいた骨も、全部猫にあげてしまいました。それから、猫は暖かな暖炉の前に移動すると毛づくろいを始めたのですが、火が小さくなるたびにカチカチ歯を鳴らして震えるので、おじいさんは薪もすべてくべてしまいました。真夜中をすぎ、おじいさんがベッドに入ると、猫はふとんの下にもぐりこんできました。満足そうにゴロゴロと喉を鳴らし前足を動かす猫と一緒におじいさんはぐっすりと朝まで眠りました。
次の日、外に出たいという猫のために戸を開けると、猫は言いました。「どうしてわたしを追い出して、戸をピシャリとしめてしまわないのですか?」おじいさんは言いました。「おまえとわたしは、おたがいに知らないどうしだったが、いまでは友だちじゃないか。」不思議なことに、猫が木のしげみに姿を消したあと、粉雪の上に足あとは残っていませんでした。
家の中に戻ってみると、つぼにはミルクがいっぱい入っており、お皿には分厚い羊の骨つき肉がのっていました。おいしそうな大きなパンも一緒です。それからというもの、おじいさんの戸だなに、食べ物がなくなることも、薪がたえることもありませんでした。
かなもけんが今回描いているのは猫が布団に入ってくる場面なのですが、猫を飼っている人は、きっとうなずいてくれるでしょう。猫が布団に入ってくると本当に暖かく、ゴロゴロとした音を聞くと穏やかな気持ちになります。猫が甘える時に前足でするもみ手のことまで書いてあるので、私はエインズワースは猫を飼っていたに違いない、と思います。ただ、ここだけの話ですが、この絵のように猫が胸の上に乗っていると、とても重たくて、夜中うんうんうなされることになるんですよ!
「ねこのお客」を書いたエインズワースですが、ほかにも心温まる物語を残しています。特に幼い人のためのものは、子どもの心によりそった素朴でほっとするお話ばかりです。『こすずめのぼうけん』(石井桃子訳/福音館書店)は読んだことがある人も多いのではないでしょうか。
=^..^=出典:『ねこのお客 かめのシェルオーバーのお話1』(ルース・エインズワース作・河本祥子訳/岩波書店)より「ねこのお客」
にゃんともはや!のねこばなし展 11月21日(土)~1月11日(月祭日) 珈琲専門猫廼舎にて
詳細は
ねこばなし展ホームページ https://sites.google.com/site/nekobanasi/
ねこばなし展twitter @necobanasi https://twitter.com/necobanasi
皆様のご来場お待ちしております。