ある時、和尚さんが檀家の法事に行って、晩に暗うなってから帰ってきたら、いつも静かなお寺の中から、にぎやかな声がする。どうもふしぎなことじゃと、そっとのぞいてみたら、三毛猫が、えらい大けな猫になって、踊っておったそうな。それが、あきれたことに和尚さんの衣を着て、けさまでかけているがな。そいつを、またぎょうさんの猫が見物しょうるそうな。
――日本の昔話『猫檀家』より
日本――広島の昔話です。
(あらすじ)
むかし、あるところにとても貧乏な寺がありました。和尚さんは三毛猫を一匹飼っていました。自分の子のように大事に育てたので、三毛猫は長生きして相当な年寄り猫となりました。
おる時、和尚さんが法事から帰ってくると、静かなはずのお寺の中からにぎやかな声がします。のぞいてみると、三毛猫がとても大きくなって、和尚さんの衣に袈裟までかけて踊っており、たくさんの猫が見物していました。ついに化け猫になったか、と思った和尚さんは、三毛に「いま帰ったで」と声をかけてから奥へ入って寝てしまいました。
すると夜更けに、「和尚さん、和尚さん」とふとんの襟を引っ張るものがいます。起き上がってみたらそれは三毛猫で、化けているところを見られたから出ていかないといけないと言います。和尚さんは次の朝、猫に腹いっぱい食べさせて送り出してやりました。
それから十日あまりたって、だいぶ離れたところでたいそう金持ちのおじいさんが死にました。ところが葬式を出しても野辺送りをしようとしても、夕立はくるし、風が吹き荒れる市で全く葬式ができないでいました。そんな時、三毛猫は元の寺へきて言いました。「和尚さんへの恩返しです。金持ちのおじいさんが死んだが、葬式が出来ずに困っています。和尚さんが行けば、必ず葬式を出来るようにするから、少し遠いけど、「わしに葬式をさせてくれ」と尋ねて行ってください。」和尚さんはかわいがった猫の言うことだし聞いてみようと、その通りにしました。すると、和尚さんが読経を始めると天気がころっと変わり、結構な葬式をあげることができました。それからというもの、和尚さんは評判になり、落ちぶれていた寺は立ち直って立派にやっていけるようになったそうです。
長く生きる猫は化け猫になるとの言い伝えがありますが、これもそういった話の1つです。類話には、空に浮かび上がってしまった棺桶が和尚さんの読経で地面に降りてくる、というものもあり、こちらを知っている方もいるかもしれません。
=^..^=出典:『日本昔話百選』(稲田浩二・稲田和子 編著/三省堂)より「猫檀家」
さて、今回のねこばなし展では猫が踊る話の絵が3枚、連作としてありますので、そちらもあわせて紹介します。
1つは、『猫の踊り』、もう1つは、『猫の踊り場』といい、どちらも日本の昔話です。「猫の踊り」では飼われているうちの娘さんに、「猫の踊り場」では猫たちの宴会で、てぬぐいを頭にかぶり猫は楽しげに「猫じゃ猫じゃ」と踊ります。かなもけんに聞いたのですが、この「猫じゃ猫じゃ」の歌ですが、幕末から明治にはやった小唄にあるそうです。
▼『日本の昔話1 はなさかじい』(小澤俊夫再話/福音館書店)より「猫の踊り」
▼『神奈川県の民話』(日本児童文学者協会編/偕成社)より「猫の踊り場」
にゃんともはや!のねこばなし展 11月21日(土)~1月11日(月祭日) 珈琲専門猫廼舎にて
☆1月11日最終日13時から、「にゃんともはや!のおはなし会」を開催します。
ねこばなし展で使用したお話と、猫のでてくる絵本を読みます。小さい人から楽しめます。お子様連れでどうぞ。もちろん大人も幼い頃の気持ちになってごゆるりとお聞きください。
大人・子どもペア1000円(大人1名も同じ)/飲み物・お菓子・お土産つき
ご予約は、ねこばなし展twitterアカウントのダイレクトメッセージ、もしくは hukimori@gmail.com まで、お名前・人数・お子様の年齢をお知らせください。
詳細は
ねこばなし展ホームページ https://sites.google.com/site/nekobanasi/
ねこばなし展twitter @necobanasi https://twitter.com/necobanasi
皆様のご来場お待ちしております。