お直しカフェ
家が寒すぎてカフェに来た。寒さというのは一体どこから来るのかを検証しているような京町家の我が家。まず、家の正面、全面が開くように4枚のガラス戸で閉じられた開口部から冷気が無限に入ってきて寒い。家の北側、薄い壁の向こうは細い路地になっていて、ベッドでごろんとしてるとなんとなくそっち側から冷気が来るような気配を感じる。1階の仮設でダイニングのように使っている土間は、もう本当にすごくて、鍋を囲んでようが…
お直しカフェ
今も覚えている、幼い頃の一番最初の記憶は何だろうか。3つ下の弟がまだいない頃だから2歳とちょっとか、マンションの4階に住んでいて、夜になるといつも寝室とリビングの境の壁に母と一緒にもたれて本を読んでもらっていた。ある夜その壁の近くで、何だったか、私はとても叱られていて、でも一連のやりとりの最後に、「だけど、物を大事にするのはいいことだから、そこは偉かったよ」というようなことを言われた。何だったか、…
お直しカフェ
上京して大学生活を送っていた2000年代、東京はカフェブームだった。オーナーの趣味がライトに凝縮された空間。壁にかかる額装された海外のポスター、ちょっとこだわりの椅子(イームズチェア)、ふわふわのカフェラテ、ふわふわトロトロのオムライス。三角のサンドイッチを出すのが喫茶店で、バケットに挟んだサラミサンドを出すのがカフェ。私のダイスキなカフェ。そういう会話を友人達と大真面目にした記憶がある。19、2…
お直しカフェ
今日もまた喫茶店にきた。東京の下町すみだに引っ越した頃から、銀座や浅草が通勤経路の最寄り繁華街になった頃から、会社を辞めて関西にも頻繁に帰るようになった頃から、気づいたらだんだんと喫茶店派になっていた。世の中のレトロ喫茶ブームとリンクするかもしれない。足を踏み入れた瞬間の安心感、つくりがよく手入れされた椅子やテーブル、店と共に生きてきたマスターの無理のない接客、というか応対、おじさんやおじいさんお…
お直しカフェ
赤ちゃんが生まれた。この世の全ての賛辞を贈りたくなる、幸せの塊みたいな、小さくて目も合わない、ふにゃふにゃの猫みたいな存在が、突然生活に加わった。ああどうりで天使のモチーフは赤ちゃんなんだなと、納得しきりだ。 *** 春に亡くなった祖母の肌着を使って、赤ちゃんの服を作った。特別な意味があった訳ではなく、たまたま、出産準備と遺品整理が重なったからそうなっただけ。たくさんの手芸用品や材料が残った祖母の…
お直しカフェ
祖母が亡くなった。それはそれは苦しそうな最期だった。食べ物だけでなく水も自力では飲み込めなくなって、息を吸うのも苦しそう。すっかり痩せて、小さな、デビルみたいになってしまった祖母の姿を見て、ああ人は苦しみながら死んでいくのかと、ぼんやり考えた。去年の夏に余命1年だと宣告を受けてから最期まで、どこか全部嘘のようだった。さいごに一緒に食べたおやつは、確かマロングラッセだった。 *** モノの寿命は人の…
お直しカフェ
10月は関西にいた。私もだが、祖母があまり元気でないので、祖父母宅に入り浸って編み物でもしようかなと企んでの帰省だったが、急遽祖母は長期入院となり、編み物セット一式とおやつ、水筒にいれたお茶を持参して病院へお見舞いに通う日々となった。 10月17日 今日は祖母宅に寄って、棒針を探し出してから病院へ。足が不自由になってから、これまで祖母の城だった二階の部屋はどこも結構散らかってしまっていて、探すのに…
お直しカフェ
築地がなくなってしまった。天まで積み上がった発泡スチロールも、これぞブリコラージュと言わんばかりのロフトも、ビールケースの椅子もガムテープで補強しまくりの荷台も、もうじきに全部全部なくなってしまう。 私は何かがなくなってしまうことがたぶん人よりもだいぶ苦手だ。それは、今年の春、近所のお蕎麦屋さんが火事で全焼してしまったときに、友人から指摘されて改めて気づいたことでもあった。火事現場の前が辛くて通れ…
お直しカフェ
私はカフェが好きだ。北千住のBUoY(ブイ)というアートセンターの中にあるカフェで月に数回店番をしている。ひょんな繋がりから人生3度目となるカフェ開業、構想や内装施工からに立ち会った思い入れのある店だ。元銭湯とボーリング場という廃墟同然だった場所を最低限の手直しで劇場やカフェにした、ヘンテコな場所。 私が店番をしていて好きなのは、一日中その場所のことを考え、整えながら、誰かがやって来たらその一角を…
お直しカフェ
私はカフェが好きだ。予定のない日にひとまずパソコンと本を持って向かうカフェも好きだし、出かけた先で一休みに入るカフェも好きだ。一人で行く馴染みのカフェも好きだし、気心知れた友人と一緒に古ぼけたお店に突撃して、とりあえずのコーヒーとナポリタンを頼んでみるのも好きだ。カフェと一口に言うけれど、世界中にあるチェーンのコーヒーショップも好きだし、住宅街の陰気な喫茶店も好き、田舎の幹線道路沿いにあるカフェ&…
お直しカフェ
こんばんは。はじめましての人が大半だろうに、でも身近な人や、遠く離れた友人にも読んでほしいなと思って、それでどちらかというと近況報告のような心持ちでこの連載を再びはじめます。毎月7日の更新。07でお直しの日だよと、恥ずかしげもなく意気込んでいます。 暮らしお直しの真っ最中です 昨年の当番ノートの終わりに宣言したとおり、年末に会社をやめて、家にいる時間や、福島で過ごす時間、遠くに出かける時間が増えま…