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お直しカフェ (11) 不自由と自由

お直しカフェ

家が寒すぎてカフェに来た。寒さというのは一体どこから来るのかを検証しているような京町家の我が家。まず、家の正面、全面が開くように4枚のガラス戸で閉じられた開口部から冷気が無限に入ってきて寒い。家の北側、薄い壁の向こうは細い路地になっていて、ベッドでごろんとしてるとなんとなくそっち側から冷気が来るような気配を感じる。1階の仮設でダイニングのように使っている土間は、もう本当にすごくて、鍋を囲んでようが足元からどんどん冷やされる。ガラス、トタン仕上げの薄い壁、土間、どこからでもやって来る冷気に、町家暮らしの洗礼を受けている。でも、断熱を学んだり、床を張り直したり、コタツ&絨毯&クッションを充実させたり、2階で過ごす時間を増やしたり、やけくそになって毎晩鍋だったり、試行錯誤をしながら、熱エネルギーを効率よく享受する方法を模索している。なんだって、試行錯誤はたのしい。新しい町で過ごす初めての冬がやってきた。

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寒くなると自然と繕いへ気持ちが向かうの、毎年不思議だなーと思いながら手を動かす。半年ほどブランクがあるので、最初はいつも少しだけ緊張感があって、小さな靴下の穴なんかをまずは繕ったりする。我が家には、お直し待ちの衣服の置き場があって、破れた靴下達はポイポイとそこにあるカゴに入れられて、機会を待っていた。寒くなってお直しの季節が今年もやってきた。

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photo above: miwa togashi

お直しの良さはたくさんあるのだけど、第一に、モノが直る、モノとの関係を継続することができる(これは、モノを捨てることが苦手な自分に合っている)次に、元あった通りではなく、破れ目を起点に、モノに新しい価値を付与することができる。それから、これは改めて気づいた良さだけど、お直しは道具と材料の調達が極めて容易だ。針と少しの糸、これで簡単にはじめられる。繕いに取り掛かるのに、手芸店に行ったり、東急ハンズやホームセンター、まして100円ショップに行ったりしなくていい。手元にある刺繍糸や毛糸(手縫い用のボタンつけ糸でもいい)のあまりと針。手元にないなら、実家に帰って、祖父母の家を訪ねて、聞いてみたら絶対にどこかから出てくる。誰もが気軽に自然に取り組める。それで、やったら楽しい。
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楽しいといえば、この間やったペンキ塗りも楽しかった。恐らく何年も手付かずで錆びていた手摺りを鉄用の油性ペンキで塗った。ちなみに京都では、こういう、家の敷地と路地を隔てるだけが目的のような(?)手摺りを街のあちこちで見かける。きっちりしてはる。根っからのシティ。で、ペンキと薄め液は、鉄工屋さんを営む町会長さんが分けてくれたもの。手持ちのペンキが白だピンクだと話していると、うちの分けたると、すぐに持ってきてくれた。有り体に言えば、景観にも、きっちりしてはる。塗装はひと筆でスーッと長いストロークで。これは、東京、押上で靴カバンの修理屋を営む師匠が教えてくれたこと。塗装は色を付けるだけでなく、素材の保護のためだと意識するようになって俄然興味が出てきている。これは、繊維と身につける人の体を守る、藍染が教えてくれたこと。

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現在改修真っ只中の家の床は、畳と下地を剥がしてみたら地面が土で大きな石ころや瓦の破片がゴロゴロ出てきた。「コンクリートの基礎がないんだね」と、様子を見にきた母に指摘されて気づいた。そうか、現行法下で家を建てるなら当然必要なコンクリートの基礎がこの家にはない。暮らし方や仕事の仕方、家族のあり方、100年ぐらい200年ぐらいのスパンで捉えたら、案外いろんなことから自由になれるかもしれない。私たちには、鉄筋コンクリートの基礎を薄い薄い除湿シート(スーパーのレジ横に置いてあるポリ袋ぐらい薄かった)で代用する自由があった。床お直し、年内には完成するといいなあ。

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はしもと さゆり

はしもと さゆり

お直しデザイナー。企画と広報、ときどきカフェ店員。落ちているものとお直し、マッサージとマイケルジャクソンが好き。

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