da capo

第11期(2013年10月-11月)

ある言葉の持ち主は
例え自らの身と心がついばまれることになろうとも
愛されることを願った

ある言葉の持ち主は
誰もが孤独を抱えている仲間なのだと伝えたかった
「君は一人じゃない」
そう思いながら今でも友人の亡がらをどこかで見守り続けているのだという

ある言葉の持ち主は友人の旅立ちを祝ったが
幸せを望むがゆえ
その行き先に対する不安を言葉にできなかった

ある言葉の持ち主はこれから迎える自分の運命を
約束を果たせなかった償いとして受け入れようとし
言葉を飲み込んだ

ある言葉の持ち主は言葉の代わりに涙を流した
それは
自分の涙を受け止めてくれた相手に対してだったのか
それとも自分自身に対してだったのだろうか

ある言葉の持ち主は
自らの記事を読んでくれた読者に深い感謝の気持ちを抱きつつも
それを伝えるすべを知らなかった

またある言葉の持ち主は

ある言葉の持ち主は
生まれて初めて会った父親に
息子だと打ち開けることができなかった

少年がそこにたどり着いて知ったのは
かつて無数の言葉があったということ
そしてその一つ一つに思いがあったということ

届けられなかった言葉を
その相手に伝えることはできない
なぜならその相手はもう存在しないのだから

それならばと少年は言葉の残骸を集めて形を作った
しかし過去から生まれたものはやはり過去へ還ってしまう
少年は自らの手で生み出した少女が海へ消えて行く様を見た
かつての言葉を弄るのでは世界は変わらないことを知った

終わりに近づく世界を再生に導くのはただ一つ
新たな記憶を作ること
その言葉にまつわる物語を語って聞かせることで
言葉は命を吹き返し
生まれた繋がりが
世界の新しい記憶になる

少年は無数の言葉の記憶に触れ
記憶を語り
そして自らの中に同じ数だけの砂をためていった
目からは時折砂の粒がこぼれ落ち
指先から崩れはじめた

かつて少年が立っていた場所には
今では小さな芽が顔を出している

物語は語られ続けている
この瞬間も
きっとどこかで