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2F/当番ノート

ビールを飲んでびしょぬれになって広大な体育館の中で朝までだらけるジャグリングフェスティバルの話。

当番ノート 第19期

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ジャグリングのフェスティバルというのがあって、それはそれは楽しいのです。
この話はもう何度も友達にしてきたし文章にもしてきたから、知り合いの方は「またかい」と思われるかもしれませんが、それでも私はこの話を抜きにはジャグリングへの愛を語れないのです。
そう。愛。至上の愛。Love Supremeです。
逆にこの話を第二回なんかに持ってきちゃって私はこの先何を書くんだ、と思っている。

私の「ジャグリングのまわりのこと」の中ではヨーロッパでのジャグリングの話が頂点にある。

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EJC、というのは、ヨーロピアン・ジャグリング・コンベンションの略で、
要するにヨーロッパ最大のジャグリングの大会です。
大会に行ってきた、というと、どうしても「優勝した?」と聞かれてしまうので先に申し上げておきますと、
大会といっても、その実態は練習会です。

ただし。

そんじょそこらの練習会ではありません。
それは、フェスティバルなのです。それはお祭りなのです。
人々は踊り狂い、酒を飲み、狂ったような歓声をあげ、朝5時まで語らいます。(これでそんなに嘘をついてないんだから呆れたもんだよなぁ)

まずもって、ジャグリングの練習会って何、と思われる方が大多数だと思いますので説明すると、
ジャグリングというのは、多分に「独学」の要素が強いものであります。
(ジャグリングを学べる学校、というのももちろんありますが、そこで学んだことのある人というのは本当にごく少数です)ジャグラーのほとんどは、東西問わず、インターネットや地元の集まりを利用して、独学でジャグリングを身につけた人たちです。そういう人たちが互いに刺激し合い、アイデアを交換し、仲良くなり、たくさんの友達を作るイベント、それがコンベンションです。
ジャグリングを通して繋がるひとたちの集まりです。

その「コンベンション」の、世界でも最大のものが、EJC。
EJCは、ヨーロッパで毎年、場所を変えながら開催されます。
一昨年はフランス、去年はアイルランドでした。今年はイタリア北部です。
http://www.ejc2013.com (フランスEJC公式サイト)
http://www.ejc2014.org (アイルランドEJC公式サイト)
ヨーロッパはそもそもジャグラーの数が多くて、日本のそれとは比較にならないと思います。
勿論、この「ジャグリング」というものが、多分に、最近になって欧米から輸入したものであるから歴史が浅い、ということがあるのですが。(日本古来のお手玉とか、その他曲芸のようなものについての話はとりあえず置いておいて)
そのヨーロッパ中のジャグラー達と、その他世界各国の人たちが、一年に一度、一堂に会する機会、それがEJC。
2012年に初めて参加して以来、私はもう虜になってしまいました。
想像しただけでわくわくするでしょう。

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広々とした体育館の中に、ジャグリングという、自分と同じ趣味を持った人たちが無数にいる。
その人たちは、今まで見たこともないような技をしていたり、見たこともない道具を使っていたり、全く知らなかったけれど、超絶的に上手な人だったり。また、映像の中でしか見たことが無いような大スターが同じ体育館で練習していたりするする。
ほとんどの日本のジャグラーにとって、海外のジャグラーに出会う機会というのは、本当に稀です。
今でこそ偉そうに「ヨーロッパのジャグラーはねぇ」とか言う青木ですが、ほんの4年くらい前は、
YouTubeで海外の、主にヨーロッパのジャグラーの映像を見て、ただただ憧れているだけの人間でした。
まさか自分がヨーロッパに行くなどということは考えもしなかったし。
(高校生の頃、「EJCに行くかもしれない」は、「井上真央と結婚するかもしれない」くらいの感覚でした)
それでも、ジャグリングというのはある程度狭い世界ですから、そういう「高嶺の花」にも、他のジャンルよりは届きやすいです。それもジャグリングのいい所。ほどよい距離。

それで、EJCですが、とにかく楽しい。
まず、一週間まるまる、テント生活をしながら、皆で暮らす。
食べ物は、屋台があったり、近所にスーパーがあったりするのでそこに行きます。
他にもお酒の飲めるバーテントがあったり、2、300人くらいの人たちが夜になると踊っている大きなテントがあったり、

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毎晩ショーもあって、そこでは、普通の大会なら一番の目玉になるような演目が、一日に何個もあったりする。
また自分がショーをする機会もあって、エントリーをして選ばれれば誰でも自由に演じることができる。
(前回載せた青木の映像は、その時のものでした)

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練習を体育館でしながら、面白いことをしている人に話しかけたり、ワークショップをしている人のところに行って教えてもらったり、ただただ、真夏の日差しを浴びながら日向ぼっこをして友達とジャグリング以外の、故郷の文化とか、最近食べた美味しいものの話とかについて話したり、よくわからないんだけど、音楽を大音量で鳴らして、ホースで水をまき散らしながら会場中を走り回っているトラックを追いかけたりする。

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最後にはもうくたくたで、こんな感じ。

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そんな中で行動をともにする人たちとの仲は、少し特別なものです。
会うのは一年に多くて1、2回だからそれほど深い所まで知らないんだけど、
でもお互いに、何かを「分かっている」感じ。

自分一人でジャグリングをやっていると、ジャグリングは自分の楽しみのためにやっているんだ、という気持ちが強くなってきます。ジャグリングは、ジャグリングが楽しいからやっているんだと思うようになってきます。

でもやっぱり、EJCに行くと、それが、変わっちゃうんだよな。
ジャグリングを通して誰かと出会うということが、面白い、と思うようになる。
ジャグリングの大会があるから、というきっかけで、他の世界を見に行けることが、嬉しくなってくる。
そこが結構、大事な所だと、思うのだ。

それでそれは全然ジャグリングじゃなくてもいいんだけど。
たとえば写真撮影が好きで、写真を撮るという目的のために、世界を見たりできることで人生にハリが出てくる、とかでもいいんだけど、
やっぱり青木は「ジャグリングで世界を見にいく」っていうことに、ものすごくわくわくを感じるというか、
「ジャグリングやっています」と言うだけでもなんだか嬉しいのに、それで「ヨーロッパに旅してます」と言えることが
誇らしくて、自分らしいなぁと思えて、
それでまた、1年に一回会える友達のことを思い出して、
あと20年経っても、私はやっぱりEJCに行って、「お前はもう子供ができたのかぁ」とか
世界中の友達と同窓会ができるんじゃないか、なんてことを想像する度に、
ジャグリングやっててよかったな、と思うのです。

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▲EJCが終わっても、仲のいい何人かとしばらく旅を一緒に続けていたときの写真

(2015.02.06 夕方)

青木 直哉

青木 直哉

ジャグリングの雑誌「PONTE」編集長。
好きなものは無印良品とことばとエスプレッソ。

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