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2F/当番ノート

僕が「ジャグリング雑誌」の編集長になったわけ

当番ノート 第19期

PONTE表紙1、2月号ol2

ジャグリングの雑誌、ってなんだろう。

青木直哉といいます。書くジャグリングの雑誌:PONTEの編集長をしています。
2014年の9月に大学を卒業しました。専門で勉強していたことは特になく、好きな授業を取って、文章を書いたり、外国語を勉強したり、ジャグリングをして過ごしていました。

卒業後は、アルバイトをしつつ「ジャグリング雑誌」を作って売って、ふにゃふにゃ喜んでいます。
ときどき、パフォーマンスもしています。

この連載では、「ジャグリング」のことについて書かせていただこうと思います。
趣味と職業の間くらいのスタンスでやっているジャグリングを通じて体験したことの中から、
なるべく面白いことを選んで書こうと思っています。
まずは、「ジャグリング」とはなんなのか、から説明しておきましょう。

私自身にとって「ジャグリングをしています」というのは、たとえば「漫画を描いています」という感じと似ています。
「漫画描いてるんだよ」と言われたとしましょう。
「えっ、どこの雑誌で?」といきなり聞く前に、「趣味なの?プロなの?」と来るでしょう。
同じように、「ジャグリングをしています」と言って、「えっ、どこで見られるの?」というのは少し早い質問です。
ジャグリングをやっている、ということは必ずしも大道芸をやっている、あるいは赤い鼻を付けてニンマリして子供たちを喜ばせている、ということとイコールではありません。
また、「ギャグ漫画なの?風刺漫画?アクション漫画を描いてるの?」と色々あるように、ジャグリングには多様性があります。

ボールやこん棒、輪っかといったものを投げるのは、「トスジャグリング」です。
しかし上の動画でやっているディアボロ、という道具も、「ジャグリングフェスティバル(というものがあるのですよ)」の中で披露してもおかしくはありません。

ジャグラーの中には、ただただ自分の趣味としてジャグリングを楽しんでいる人が大勢います。
毎年開かれる「JJF(ジャパン・ジャグリング・フェスティバル)」は開催16回を重ねており、
1000人近いジャグラーが一堂に会します。
その年齢層も、小、中高生、大学生、社会人まで、幅広い。

私は今からおよそ8年半前、2006年6月、中学3年生の時にジャグリングに出会いました。
ジャグリングのできる、数学が大好きだった友人が、ある日私にボール二つの投げ方を教えてくれたのです。それまで何一つボールを使った技などできなかった私は、夢中になりました。
一通り基本の技を教えてもらうと、ネットで、「ジャグリング 技」で調べて、ヒットするサイトを片っ端から見て、できそうな技、かっこよく見える技をひとつひとつ習得していきました。
その当時Youtubeはまだ出てきたばかりで、掲示板とかチャットをまだみんなやっている頃でした。
掲示板でコツを聞く。
ダウンロードした動画を、ウィンドウズ・メディアプレーヤーで、一生懸命見る。
そのうち東京の代々木公園でどうも練習会があるらしいぞ、なんてことも知って、友達と顔を出してみたりして、お互いのオリジナル技、オリジナルスタイルを見せ合ったりしたのでした。
あとは学校で、ひたすら練習。
結局今の今まで、先生についたりしたことなど一度もなく、自分で機会を見つけては新しい情報を得て、それを元に自分で真似して、考えて、工夫していました。
そんなこんなで、全て独学であるわけです。
そして、状況は多少違えど、今趣味でジャグリングを楽しんでいる人たちは、大体こんな風にして独学でジャグリングをやっているだろうと思います。

ではそんな一介の趣味ジャグラー青木直哉が、どうしてジャグリングの「雑誌」なんて作ることになったのか。

大学の卒業論文で、私はジャグリングについて書きました。
何か、ジャグリングについて、ひとまとまりの、できればあとにちゃんと残せるような文章を書いてみたかった。結果は「論文」なんてごたいそうには呼べないものだったような気もしますが、とにかく、アメリカのジャグラー、ジェイ・ギリガンのジャグリングのかっこよさについて、何かが読者に伝わるように書きあげました。
彼はねぇ、すごいんですよ。
一度話を聞く機会があったとき、
“I believe juggling as an art form”(僕は、ジャグリングを一種の「芸術の手段」として信じているんだ。)
と言ったのです。
ジャグリングが芸術である、ジャグリングがジャグリングにしか語れないことを持っている。結局それは彼の文脈で、どういうことなのか、というのを書いてみたのがその「論文」でした。

それで、です。それを通して、私は、どうもジャグリングについて書くのって面白いぞ、ということに気づいたのでした。
ジャグリングについてちゃんと書こう、なんて思っている人はほとんど、いやいや、全くと言っていいほどいない。思っていても、大体は書かない。せいぜいTwitterでなにか突発的な議論が起こったりするのみです。もちろんジャグリングは、「する」のが目的なので全然それでいいし、むしろ「書く」ことがメインになっちゃったりする方がおかしな話で、「ジャグリングのことを書く」なんて、所詮猫が鉄の壁をひっかいてるみたいなものです。それでも、ジャグリングで「書く」ことで、「する」だけでは見えないところに、光が少し射す、かもしれない。

2014年2月、私は書いた文章をpdfファイルで書き出し、
アップロードして、シェアすることで「雑誌」と呼び始めます。
少しはジャグリングをやっている人の目にも留まったのですが、なにかが物足りなかった。
やっぱり、「雑誌」というなら紙でやりたい、という想いがふつふつと湧いてくる。
そこで、そんな想いをジャグリング関係の友人2人に打ち明けた所、「じゃあやろう」ということになり、2014年7月、今の、「書くジャグリングの雑誌:PONTE」刊行へと至るのでした。
その2人は、今でも編集部員として、一緒に仕事をしています。先日は一緒に韓国へも行ったのです。
そういうわけで今は、ジャグリングが上手い人にインタビューしたり、イベントをレポートしたり、ジャグリングについて考えたりしながら、何人かの仲間と一緒に、隔月で雑誌を作っています。

「ジャグリングってそんなに世界が広いの」と思われることでしょう。
そうです。
広いのです。
少なくとも一人の人間に、雑誌を作りたいと思わせるくらいの、懐の広さがあるものです。

じゃあ、いかにその世界は広いのか。
それが、たぶん私の伝えられることかもしれません。
青木が見てきたジャグリングのものごとをなるべく具体的に書いて、いろいろな色がある連載にしていけたらいいと思います。
ヨーロッパ、アジアのジャグリング紀行など、地域も様々に扱っていくつもりです。

毎週月曜日、3月まで。全9回。
お楽しみに。

青木 直哉

青木 直哉

ジャグリングの雑誌「PONTE」編集長。
好きなものは無印良品とことばとエスプレッソ。

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