人生を変えた言葉「上からもらった恩は下に返せ」

第23期(2015年10月-11月)

人生を変える言葉がある。

それは、僕が今よりもさらにまぬけだった大学1年生の時のことだ。

上下関係が厳密な学生寮に入った僕は、面倒見の良い先輩に誘われて、その日もお昼ご飯をおごってもらったのだった。

「ごちそうさまです!この恩は面白いことして、先輩を笑わせてお返しします!」

ほら、今思い出しても恥ずかしいくらいまぬけだ。
この寮では、一年生はとにかく変な事をやらされて、先輩を笑わせるが求められていたからだ。
今の自分の役割も踏まえて、僕なりに先輩に喜んでもらえると思って言った事だった。
しかし、先輩はその言葉に喜ぶどころか、僕を正すように言った。

「バカヤロー」

えっ?なぜ怒られたか最初は全くわからなかった。

「今おごってもらっている分、来年新しい一年が入ってきたらしっかりおごってやれ。俺たちも先輩達にそうしてもらってきたし、その先輩達もそうだ。だからお前達は、ちゃんと次の一年におごってやる。それが俺たちへの恩返しだ。」

ズッドーン!とはその時は実は思わず、正直なところ、「そうなのか、来年おごる側になるんだな。僕たちも。」というくらいにしか感じていなかった。

その言葉の意味深さ理解するのに必要な経験を、その時の僕はまだ持ち合わせていなかったのだ。

そして次の年。

僕も先輩になり、おごる側になった。

「恩返し、恩返し」を思いながら後輩達を飯に連れて行った。

そして次の次の年。

僕はもう一つ先輩になった。

この頃になると、先輩の言っていた事がよくわかるようになってきた。

後輩におごらない同期ももちろんいる。

一つ下の自分がたくさん飯に連れてった後輩にも、下の代の面倒をみない者もいる。

もちろん、いろんな考えがあると思うし、おごることを強制されるものではない。

だけど、僕は先輩達が繋いできた心意気の連鎖が周りで止まっていくのを見ると、とてもやるせない気持ちになった。

そこで、気づいたのは、おごるという金銭的なことではなく、先輩の想いを受けて次に繋ぐということを僕は大切にしたいということだった。

よくよく考えてみると、これはとてもすごいことだった。

大学生活は欲張らなければ4年しかない。

僕が住んでいた寮も、毎年3月には卒業生が出でいき、そして4月には新入生が入ってきた。

その入れ替わりが続いていく中で、寮は続いていた。

僕が頂いたこの恩は、いつから繋がってきたんだろう。

何年前?いやいや何十年前?

待てよ。これは学生だけの話じゃないんじゃないか。

今僕が使っているパソコンだって、多くの人が研究に研究を重ねて、多くの改良を経てここにある。

僕の住んでいるこの町だって、合併もあったし、ずっと前には藩だった。

なんなら縄文時代から、この土地に住む人たちがいて、生存率を上げてきて。

本当に多くの人たちの生によって、今の僕たちは生きているんだなぁと気づいた。

それと、寮を卒業する時に考えたことがあった。

僕が新しく提案して採用されて続いていた企画があって。

僕は4年でこの寮を卒業するけれど、僕がいなくてもこの企画は続いていくんだなぁと思うととても嬉しくなった。

けどこれって、大学生活に限らず、人生においても同じなんだと思った。

人の人生はどんなに長くとも100年。

けど、その100年の中で先人が人生を懸けてやってきたこと恩を受けて、次の世代に託していく。

そうやって僕たちは豊かになってきたし、これからもそうであると願いたい。

その一旦を僕はしっかり担いたい。そう思うようになった。

人の一生は短い。けれど人間の歴史は続いていく。

不老不死とは物語の中で聞く言葉だ。

もちろん個体としては今の時代には実現不可能だけど、人と人のつながりにおいてはとっくの昔から不老不死だった。

大げさに言えば、”種(しゅ)”としての意識の様な、そんなものが芽生えた。

これは別に宗教的な事でもなんでもなくて、ただ単純に”次の世代によりよい社会をつなぎたい”ということだと思っている。

現在に生きる僕たちは、エネルギーを始めとして、過去と未来の搾取の上に豊かさを手にしているように思う。

僕は、そうではなくて、次の世代に2011年からの50年で世界が良い方に変化したよねと言ってもらえるようにしたい。

そのために今を生きたい。

“上からもらった恩は下に返す”

今も、これからもずっと大切にしていきたい考え方。

このことを教えてくれた当時19歳の先輩。

きっと、「そんなこと言ったっけ」という具合だろうけど、僕は本当にその言葉に助けられて生きてきました。

最近全然お会いしていないけど、今度会ったらちゃんとお礼を言おう。

「先輩のおかげで人生変わりました!」って。

そしてまた言われるんだ。そしてその言葉に僕はまた助けられる。

「バカヤロー」