猫アレルギーという名のシックスセンス

第23期(2015年10月-11月)

僕は猫が好きだ。

ただし、直にふれあうことはもう叶わない。

ある日、猫アレルギーになってしまったからだ。

あの日のことを思い出すと、今でも悲しさに包まれる。

僕は、小さい頃から猫と一緒に多くの時間を過ごしてきた。

始めて飼うようになった猫は小学生の頃、妹と一緒に道のり2kmの通学路を歩いている時に出会った。

家までもう少し、最後の400mというところだった。

おもむろに一匹、きれいな白い猫がそこにいたのだ。Just a white cat!

今思えば、なかなかにご近所の猫(もちろんフリーなCATだったとは思うが)を連れ帰ったものだ。

その猫から始まり、今まで20年ほど実家で猫を飼っている。

僕が猫アレルギーになったのもあり、近年では外飼いとなっている。

おそらくあの子達は他の家でも何か食べているのではと思う。

シェアハウスならぬシェアキャットだ。

むしろあの子達からしたら、僕たち餌元をシェアしているような感じかもしれない。

ずっと猫とともに成長し、僕は大学生になるタイミングで家を出ることになった。

しばらくは何事もなく、帰郷したタイミングで猫達とじゃれあっていた。

しかしある日、久しぶりに実家に戻った僕は、
くしゃみと鼻水が止まらなくなり、目がかゆくて涙が出るようになってしまった。

花粉症かな、とも思ったのだが、後にそれが猫アレルギーであるとわかったのだ。

なぜ急に!?僕はもう実家でくつろげげる日は来ないのか!?猫達に触れることすらできないのか!?

慌てる僕をあざ笑うかのように、現実はそこにあった。

その時、実家で飼っていた猫の数、なんと7匹。だいぶ猫屋敷と化していたのだった。

住んでる家族6人だから、人より多い。累計13人匹。大所帯となっていた。

僕の対猫キャパシティを大きく越える猫圧により、猫アレルギーを発症してしまったのだろう。

そうして、猫と僕との間には種族の壁以上の大きな大きな隔たりが、ある日突然生まれてしまったのだった。

隔たりとは言ってみたものの、ただ一方的に、僕が弱くなってしまっただけなのだ。

逆に言えば、ただ一方的に、猫が僕に強くなってしまっただけなのだ。

本当に辛いのは、人懐っこい猫に出会った時だ。

僕を見るやいなや、にゃおん!!と猫まっしぐらよろしくしてくるようなものなら最悪だ。

これは、マリオカートでスター状態で一直線に向かってこられるようなものだ。

触れようものなら、しばらくは辛い状態に陥ってしまう。

猫よ、気持ちだけで結構だ。いや、本当に。大丈夫だから。だから本当に大丈夫だって!

みたいな気持ちです。

なってみて始めてわかるのだけど、この猫アレルギーというのは特別な力である。

第六感。シックスセンスとはこのことかと思った。

なにしろ、わかるのだ。そばに彼らがいることが。

なにしろ、わかるのだ。ここは彼らが住んでいる場所だと。

仕事でご家庭にお邪魔することがある。

そうすると、直接姿が見えなくとも。わかってしまう。

この家は、いる家だと。

猫探知機搭載型の人間なのだ。

しかも突然に手に入れた力だ。なんだか漫画の主人公みたいだろ。

ある日、手に入れたこの力を持って、社会の役に立つヒーローになろう。

そんなこと思うのは漫画の中だけの話で、僕たちはただ普通に暮らしたいだけなのだ。

ただ愛する猫達と一緒にいたかっただけなのだ。

こんな力、持ちたくはなかったんだ。本当は。

今でも変わらず彼らを愛する気持ちは持っている。ただし液晶越しに限る。

車から見る窓越しの雪景色が美しいように。そして、車から降りた瞬間に凍てつく世界に苦しくなるように。

きっと生命の危険を感じる何かを人は美しいと思う潜在的な何かがあるのだろう。

いつかこの特別な力を失い、普通の人間として、種族の壁を越えて愛に溢れる日常を取り戻したい。

そんな儚い想い。

僕のTragedy night。