僕とファシグラ2

第27期(2016年6月-7月)

生きてると、思いもよらないことは何度も訪れる。抜き打ちテスト、地元の友達との突然の再会、にわか雨。

いつも、こちらの気持ちの準備ができていない時にふいにやってくる。

僕にもその時は突然やってきた。

「はる君、企業のミーティングでファシグラしてみない?」

SNSを介して送られてきた突然のメッセージ。送り主は、今も僕がずっと影響を受け続けているファシリテーターの方。
送られてきた時は、自分がこれまでやってきたファシグラの場と違いすぎて、一瞬頭が混乱した。

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この時は、ファシグラを学び始めてちょうど1年がたったころ。
1年前の悔しい想いを胸に、僕は1年間ひたすらかき続けていた。

人前でかく場が欲しかったから、そういう場も探した。
ネットで「京都、ファシリテーター、イベント」などのワードで検索するとちらほらヒットするものがあり、そういうイベントがあるたびにアポ無しで、模造紙とペンを持っては、かかせてくださいとお願いしにいっていた。

本当に無茶で、失礼なことをしていたと思う。

でも、この時の僕は断られても失敗してでも人前でかくことをしたかった。
とにかく場数を!それだけの思いで、授業の都合など気にせず参加していた。

子どもからお年寄りまでが集まり話し合うまちづくりの場。
子育てママたちが復帰しやすい社会について話し合う場。
政治について考える場。

とにかくいろんな場でかかせてもらっていた。
駆け出しで、本当に下手だったけど、ファシリテーターの方、参加者の方に受け入れていただいたことは本当にありがたかった。

特に、そこで、出会ったファシリテーターの人たちには感謝してもしきれない。どこのだれかも分からない僕を、快く受け入れて、育ててくださった。

人前でかき始めて、うまくいかない時もたくさんあったが、たくさんの人にフィードバックをもらいながら、少しづつ確実に成長できている実感があった。この時はワクワクが止まらないという感じだった。

余談だがこの時に出会ったファシリテーターの方々とは、今、一緒に仕事をしている方もいる。ご縁はあの頃からずっと続いている。

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〜ファシグラ修行時代〜

この時からファシグラする時に必ず自分に課していることが1つある。

それは、「毎回新しいことに1つチャレンジすること」
字体でもいいし、これまでにかいたことのないイラストでもいい、なんでもいいので少しでも成長するために自分なりの工夫する。

ただし、その場に合わないことはしない。かくことで参加されてる方の想いに寄り添う。自分よがりのチャレンジではなく、その場にあったチャレンジをする。その場に合うということは、すごく判断が難しい。しかし、これをしなければ、かいたものがみんなの納得するものではなく、僕の納得するものになってしまう。何のためにかくのか、その目的を見失ってはいけない。

このチャレンジを続けるために、ファシグラに関係しそうな分野の本をどんどん読み進めた。

もともと、ファシリテーションを学び続けるということから入ったので、
組織開発、組織変革、まちづくり、ボディーワーク、心理学、社会構成主義の哲学、グループダイナミクス、ファシリテーションの手法、コーチングなど、集団のプロセスを大切にする領域の本は読み続けていた。

しかし、人前でファシグラするようになってから全くの専門外だったグラフィックの分野も読むようになった。
デザイン、アート、イラスト、インフォグラフィック、編集、レタリック、色彩など関係するようなものはどんどん読み進めた。

そして学びを活かす機会を増やすため、人前だけでなく自分のノートにも練習をすることにした。

これまでほとんど聞いてなかった大学の講義も話の要点を捉えるためにファシグラ風にかいた。

家に帰ったら、TED(プレゼン動画)を見てその内容を模造紙にまとめた。

時には、困っている人の相談事を聴き合いながらファシグラもした。

知らず知らずのうちに「ファシリテーションやファシグラを自分の日常にする」事が目標になっていた。

ファシリテーターとして存在しようとすることで、たくさんの人の満足した顔が見れるのは嬉しかったし、
何よりその人たちの笑顔で自分自身が勇気付けられていた。そんな日常に身を置き続けたい。そんな目的をもち始めていた。

1年の修行時代を経て、僕のモチベーションの質は変化し始めていた。
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話を戻そうと思う。

モチベーションの質が変わってきていたこともあり、これまでの自分の生活とはかけ離れている非日常な依頼に戸惑った。
そして、企業の人たちに僕のファシグラで納得してもらえるのかが心配だった。
しかし、またとない機会。悩みはしたが、断る理由はなかった。

内容は、大手コンサルティング会社の役員会議でのファシグラ。
ファシリテーターは別にいて、僕の仕事は内容をその場で可視化していくこと。

以前に比べれば、場数は踏んだ。
家でも練習した。
経営の専門用語も頭に入れた。

ドキドキしながら、チームを組むファシリテーターの方とお会いして、現場へ向かった。

普段くることのない、高層ビルの大きな会議室。
模造紙を貼り、ペンのインクが出るかを一本一本確かめ、ゆっくり深呼吸。いつものルーティン。

さあ、準備はできたと思った頃合いで、参加される役員の方々がぞろぞろと入ってこられた。
みなさん50代前後の方々。眉間に刻まれた深いシワ。歴戦の強者たちと修行中の僕。あぁ場違いな所に来てしまったという不安にかられていた。

それでも、会議は始まっていく。
参加された方々も僕の役割に対して懐疑的な目。
模造紙に可視化?本当に必要なの?という視線を僕は背中で感じていた。敵ではなく、共に探求する仲間。そう
自分に言い聞かせて、取り組むことにした。

始まってみれば、事業承継に関するコンサルのファシグラなのだが、とにかく展開が速い。
これまでかいてきた現場とは全然違う。そして、僕にはわからない単語が飛び交う。
ペルソナ、顧客セグメント、FFC、この時は意味を完全には理解できていなかった。
しかし、場数とロジカルなつながりの部分でなんとかギリギリのラインで図式化していった。

余裕はなかったが時折、イラストも入れた。
イラストを入れると、共通の認識を生むことができ、右脳を刺激し新たな発想を生むことにつなげることができるといわれている。

そうやって、必死にかいた。
話についていくのに必死で、全然参加されている人の顔を見る余裕はなかった。
あっと言う間の2時間半だった。

僕はもうへろへろで水を飲んでいると、参加者の方が数人僕のところへ来られた。
練習してきたことをすべて出せたわけではない。
上手く書けない部分もあった。

正直、何と言われるのか怖かった。

「これは、どこで学ばれたのですか?私たちの言ったことの本質を文章だけではなく絵や図を用いて的確に表現してくれて感動しました。次回、もう一度ミーティングがあるので、石橋さん是非来ていただけませんか?」

涙が出そうだった。自分のファシグラに価値を見い出してもらったこと。
そして、何より自分がかいたものに納得して喜んでもらえたこと。

少しだけど確実に前進した瞬間だった。

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これまでは、ファシリテーション/ファシグラとの出会いと自分のたどってきた道を書いてきたので、次回からはファシグラの中で大切にしていることを具体的に書いていこうと思います。(石橋)