誰も忘れてはならない

第31期(2017年2月-3月)

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さきほどから家から出かけては戻ってを繰り返している。すでに3往復目だ。そして、僕はなぜかキーボードを叩きはじめた。
もう一心不乱に叩かざるを得ない心境なのだ。あるいは般若心経を写経するしかないのだ。よく分からなくなってきたので、ちょっと落ち着こう。

こうなってしまったのは忘れ物のせいである。ちょっと1泊で遠出をしようと思っていたのだ。はじめは出発してからカメラを忘れていたことに気付いた。次は現金もカード類も持っていないので車で再びUターン。仕切り直したはずなのに、そういえば充電器もないなあと。

忘れ物が多いので慣れてはいるが、ちょっとひどい。こうなる前に、前日までに準備しておけば、そんな事態を防げるのは分かっている。分かってはいるものの、昨夜もメンドクサイが僕にささやいてきた。
「明日の朝の君がやってくれるさ。慌てない、慌てない、一休み、一休み」
葛藤していたところまでは覚えているが、気がつくと布団にうずもれてしまい、朝が来た。そして、いまに至る。これはもう、キーボードでも叩いて正気を取り戻すしかないのだ。

「仕事は段取りで決まる」「準備が9割」などと言われるように、準備は大切だ。1週間のランニングレースなども、いったんスタートすると、自分の持ち物だけで過ごすことになるので、どれだけ事前に用意しておけるかということが重要になる。数ヶ月かけて準備に取り組むこともある。なかなかに準備というやつは大変だ。

ブラジルのジャングルに行くときは、入国に必要な黄熱病のワクチンを接種にはじまり、他にも打ちたくなって破傷風のワクチンも試してみたり、マラリアの予防薬をもらったり。
持っていく食料にしても、ドライフードやアルファ米を取り出して、1枚のジップロックにまとめたり、パックの四隅のいらない部分を切ったりと軽量化に取り組む。今日は50gも削れたぜ、ひゃっほう。おお、こっちのドライフードの方が、カロリーが軽くて高いぜ、などとネットサーフィンしてみたり。軽量化できた分、しっかりと走れるかと思うとなんだか楽しくなる。
準備が整うにつれて、行ったこともないところなのに、駆け抜ける姿のイメージが鮮明になってくる。

そう、大変と言いつつも、楽しんでいるので苦にならない。自分から進んでやると準備も楽しいのだ。型にはまったことやルーティンワーク、やることに疑問を感じてしまう事務作業などの類いの準備は、義務的にやるから後手に回ったり、苦痛を感じることもあるのとは対照的だ。準備が大切なのは当然のことながら、その後のイメージができているかは、さらに重要だ。楽しめるも、楽しめないもそのイメージにかかっているということを忘れてはならない。
そんなことよりも、いまの僕に大切なのは早く目的地に辿り着くことにある。忘れ物を取りに帰ってきただけなのだ。忘れていた。早く行かなくては。では、いってきます。