色の話

第40期(2018年8月-9月)

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いろ【色】
①視覚のうち、光波のスペクトル組成の差異によって区別される感覚。
②華やかな様子・姿。
③表にあらわれる様子・おもむき。
④愛情・情事。

いろ・どり【色取り・彩り】
①いろどること。彩色。着色。
②色の配合。配色。
③はなやかな変化。おもしろみ。

-『広辞苑 第七版』より抜粋 -

この人たちの世界は何色をしているのだろう。

テレビやスクリーンの向こう側にいる
青色や緑色の瞳を持つ人たちを見て、
幼い私はよくそんなことを思っていた。

そして〈もし〉この人たちの世界が
色を選別するフィルターを透かしたように
そんな風に見えているのだとしたら、
その景色はどれほど美しいのだろうかと
そんな途方も無い空想に胸を弾ませていた。

瞳の色が違っていても
見える景色は同じであると
構造上は変わらないということを知ってからも、
もっと鮮やかな世界を見ることができたなら
という私の思いは消えなかった。

私が私のためにかける魔法のひとつに
「イロドリ」という遊びがある。
景色から「色を取り」
世界を「彩る」から「イロドリ」

この遊びに用意するものは特にない。

散歩をするとき、買い物に行くとき、
友人に会いに行くとき、
色をひとつ選んでみる。
選んだ色を探しながら
いつもの街をのそのそ歩く。
たったそれだけ、
本当にそれだけ、
意識をひとつ変えるだけで
普段は見過ごしてしまっている色を、
世界の断片を救い上げることができるようになる。

例えばあなたが「青色」を選んだとしよう。
すると他の色は薄まっていき、
青色のみが瞬くように浮かんでくる。

空が青い。

道路標識が青い。

自販機にお行儀良く整列するスポーツドリンク。

ベンチに置き忘れられている野球帽。

ベランダで風に揺れているタオルも青い。

あの人の服も、この人の服も、
向かいから来る人の
片耳にだけ揺れるピアスもそうだ。

ほんの少し歩いただけで、
いつもの日々に紛れていた
数え切れないほどの青色が
私の瞳に飛び込んでくる。

「オズの魔法使い」を初めて観たとき、
カンザスからオズの世界に変わった瞬間、
モノクロからカラーへと
世界がその姿を変えた瞬間に感じたような
そんな強烈な感動が胸に広がる。

世界はずっと、こんなにも鮮やかだったのだ。

瞳の色なんて関係なくて、
準備するモノも何にもいらなくて、
私たちはそのままで、
世界を好きなように彩ることができる。

「久しぶり!元気にしてた?
 今日も暑いねー。
 あ、すみません注文いいですか?
 クリームソーダをひとつ。
 え?この中から好きな色を?
 そうだなあ…じゃあ…」

さあ、明日は何色の世界を見に行こう。