写真の話

第40期(2018年8月-9月)

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しゃ・しん【写真】
①ありのままを写しとること。
また、その写しとった像。写生。写実。
②物体の像、または電磁波・粒子線のパターンを、
物理・化学的手段により、フィルム・紙などの上に
目に見える形として記録すること。
また、その記録されたもの。

たいしょう・じっけん【対照実験】
ある対象について
一定の因子の作用を明らかにする実験を行う場合、
これと別に、その因子を取り除き
それ以外は全く同一条件下で実験を行なって
両者の結果を比較検討することがある。
このとき後者の実験を対照実験と呼ぶ。

-『広辞苑 第七版』より抜粋 -

このような実験を対照実験と呼びます。

植物の蒸散についての授業だった。
とりわけその先生が好きだったわけでも
その授業が面白かったわけでもないけれど、
何故だか私は初めてこの言葉を知ったときのことを度々思い出す。

私たちはそれぞれ自分の世界で生きている。
1秒ずつ1日ずつ、一年を一生を。
入学したり卒業したり、
入社をしたり退社をしたり、
生まれて来たり死んで行ったり、
様々な事情によって人と人とは
交わったり離れたりを繰り返す。
けれどもどれだけ親密になろうとも
血の繋がりや魂の繋がりを持とうとも、
私たちは本質的な意味で
他者が生きている世界を知ることはできない。
これは悲しいけれど、救いようがないけれど、
紛れも無い事実である。

それでも私たちは
そうだからこそ私たちは、
あなたの世界を知りたいと願う。

そうして人々は、声で文字で音楽で文章で
自分の世界を切り取り他者と分かち合おうと躍起になる。

現代を生きる私たちにとって
写真は一番簡単な世界の共有であろう。
誰もがその手に持っていて誰もがその使い方を知っている。
だから今回は写真を使った遊びを紹介しようと思う。

必要なものはカメラと友人。
使用するカメラは「写ルンです」がいいだろう。
お互いのスマホで撮り合うのもいいけれど、
同じカメラを使ったほうが違いがわかりやすいからだ。
いわゆる「対照実験」である。

ふたりでまたは数人で同じ時間を過ごす。
丸一日でもほんの10分でも
何処かへ行っても駅から家までの帰り道でも、
なんならただその場の写真を撮るだけだっていい。
使っているカメラはおんなじで、
場所や時間も変わらない。
違っているのは撮影者だけで、
現像した写真に現れるその差異は
そのままその人が見ている世界の違いとなる。

目線の高さが違う。
見ているものが違う。
同じ景色でも構図が違う。
今まで知らなかった世界の見方を
写真を通してあなたを透かして私は知る。

違うものだらけのあなたの世界に
不意に笑顔の私が現れる。
見ている世界が違くても
私たちは確かに今、
同じ世界で生きているのだと知る。

それは少し寂しくて
とても嬉しい発見になるだろう。

今度会ったら秘密の見せ合いっこをしよう。
そしたらきっと
毎日はもっと輝いて見えるだろうから。

さあ、明日はどんな世界を切り取ろう。