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2F/当番ノート

雨の話

当番ノート 第40期

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あめ【雨】
①大気中の水蒸気が高所で凝結し、
 水滴となって地上に落ちるもの。
②雨天。
③絶え間なく降りそそぐもののたとえ。

あま・よろこび【雨喜び】
①旱天時に降雨を得た場合、
 仕事を休んでする祝い。
 雨遊び。雨休み。雨降り正月。

-『広辞苑 第七版』より抜粋 -

あなたは雨が好きですか?

私は、どうだろう。

正直な話をすると、
雨の日の外出は億劫だ。
傘を持ち歩かなければならないし
服や靴にも気を付けなければいけない。
せっかく整えた髪も
家を出た途端に崩れてしまうし
電車はもわもわとした空気で満ちている。

雨はたのしみにしていた
運動会を延期にするし
遠足のスケジュールを動物園から
水族館に変えてしまう。
それはちょっと、
嬉しかったかも知れないけれど。

雨は時々、自然の恐ろしさを
思い知らせるように
無慈悲にも私たちの生活を破壊する。

それでもやっぱり、
私は雨を嫌いになることができない。
ぽつりぽつりと降る雨の音を聴くことが
ざーざー降りの雨が顔に当たる感覚が
曇っているはずなのに
乱反射する光で
景色を瞬かせる雨が、
そんな雨が私は好きだ。

「雨喜び」
本来は雨が降った日に仕事を休んで
その天からの恵みに感謝することを意味するが、
雨が降ったからという理由で
私は仕事を休むことができないし、
いざ休日となると今度は逆に
晴れていることが多いため
意味通りの雨喜びをする事は難しい。

だから私は、
私の雨喜びをすることにしている。

雨が降っている時ではなく
雨が止んだ後や次の日に
その痕跡を探して遊ぶ。
ひとりでこっそりと
雨が降ったことをお祝いする。

雨上がりの世界には
ひっそりと、でも確実に
たくさんの祝福が隠されている。

雨を包み込んだ世界は
少しだけふやけている。
ふやけているのに
光の粒がやけにはっきりと目に映る。
空気が重たくなっていて、
息をするのがちょこっと苦しい。
そんなふうに意識をしながら呼吸をすることが
なんだか新鮮で少しだけたのしい。

道路には大小さまざまな空が出来ている。
どれだけこの手を伸ばしても
決して届くことのなかったあの空に、
限られたほんの少しの間だけ
私は触れることができる。

落とされまいと必死に
フェンスにしがみ付く水滴を見つける。
その小さな世界には
逆さまの日常が閉じ込められていて、
外と変わらない空があり、
地面があり、生活が広がっている。

雨を通してしか見ることのできない
世界の美しさが素知らぬ顔をして
私たちに見つけてもらうのを待っている。

幼い頃の私にとって
雨の日は特別な日だった。
買ってもらったばかりの
黄色で統一された雨具で全身を包む日を
今か今かと待っていた。

あの頃とは少し違うけれど、
今でも私は天気予報に傘マークを見つけると嬉しくなる。

次の雨予報はいつだろうか。
まずは明日、新しい長靴を買いに行こう。

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