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2F/当番ノート

野外劇場

第41期(2018年10月-11月)

Tîrgu Mureș
私の住む街、黒海近くのconstantaよりバスで12時間かけて
トランシルヴァニア地方にあるTîrgu Mureșという街に公演に行ってきた。

constantaとは全く違った雰囲気の街。
まるで違う国に来たよう。
海の近くで開放的でジプシーも多く、人々のしゃべる声も大きく、混沌としているconstanta。
Tîrgu Mureșは山に囲まれた静かで綺麗な街だった。

オペラの野外公演のダンスシーンに参加した。その会場は塀に囲まれていてお城の庭のような場所だった。

子供達がが芝生の上で遊んでいる。

オープンエアーのレストランではビールを飲んでいる大人たち。

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チェコで踊っていた時のことを思い出した。

チェコの時に所属していたカンパニーではよく野外で公演があった。
お城の庭、モルダウ川の上の舞台。。。

ハンガリー人の振付家兼監督のとハンガリー人が同僚の半数いた。

Tîrgu Mureșはかつてハンガリーに支配されていた街なので、
私はハンガリー人に囲まれていたチェコにいた時代を思い出したのかもしれないなと思った。

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その頃モルダウ川の上の舞台で白鳥の湖を踊った。
水の上で白鳥の湖を踊るという状況にとてもわくわくした。
舞台に全員が上がった時、舞台がものすごく揺れたのを覚えている。
そしてジャンプのたびに動く舞台。川の向こう側にいるお客さんたち。夕方になりだんだん暗くなる風景。
いつもと違う空間で踊ることが面白かった。

野外公演では普段劇場に来ることのない人や、赤ちゃんや子供たちが自由に観劇することができる。座って観るのも立って観るのも何かを食べながら観るのも全てが自由。
そして目の前の空間がとても広く 星が見えたり 緑が見えたり 空が見えたり。
天候も舞台の内だな、と思う。
劇場とは全く違う空間。周りの風景が舞台装置。
森の中が舞台のラ シルフイードやジゼルなどをやったら面白そうだなと思う。
それか海の音を音楽にして踊りを創るとか、、その場でしかできない踊りを創ってみるのも面白そうだ。

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合田 紗希

合田 紗希

倉敷市出身  
ルーマニア黒海近くの劇場でバレエを踊っています。
ビールとcafeと海が好きです。

Reviewed by
moto

トゥルグ・ムレシュはルーマニア中北部の街で、トランシルヴァニア地方の中心を成す街だ。ハンガリー帝国の時代を経て、20世紀にはルーマニアに併合されたりハンガリーに戻されたり、第二次大戦後にまたルーマニアに奪還されたりと、歴史の傍若無人さに翻弄され続けて来た街だ。1990年頃にはルーマニア革命後の混乱の中ハンガリー人とルーマニア人の血が流れた悲しい記憶を宿す街でもある。

前回はコンスタンツァの劇場を通じて踊りと観客の対話について考えたが、今回は野外公演ということで、これはある意味で作品世界と自然との対話でもある。舞台装置の一つである太陽は時間と共に沈み、作品は変容する場の中で大らかに描かれていく。

ルーマニアは野外公演に適した国だと思う。自然豊かで、街全体が大らかなのだ。シビウというこれもトランシルヴァニアの街のレストランで、テラス席でぼんやりとピアノの音を楽しんだことを思い出した。素朴な身なりをした柔和な老齢のピアニストは、曲の合間に白ワインを嗜みつつ、グラスをピアノの上に置いてのんびりと演奏に戻る。木製のピアノから流れるメロディは、静かな風の音と街の賑やかさの中で、とても心地が良かった。

野外での芸術鑑賞の楽しさは、こういう大らかさに尽きると思う。そして野外で芸術を"演る"ことの面白さもまた、この自然の予測不可能な振る舞いによるものだと思う。

"天候も舞台の内だな、と思う。
劇場とは全く違う空間。周りの風景が舞台装置。"

思えば我々の人生もまた、この世界という舞台装置の中で翻弄されながら演じられている。もしかしたらこの舞台自体も、仮初めのものなのかも知れない、なんてなんとなく思ってみた。

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