溶けあう

第45期

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子どものころから、大人の人がコーヒーを飲みながら仕事をしたり会議をしたりするのがかっこいいなあとよく思っていました。なにかの合間にたまにひとくち、コーヒーを飲むというのは、さぞかし気分が良いものなんだろうなぁ、と。
でも、大人になって、コーヒーっておいしいなって思うようになって、パソコン作業やイラストを描いているそばにコーヒーのカップを置いたりしてるんですけど、なにかをしながらコーヒーを飲むっていうことが、なかなかできない。冷める宿命を持った液体の存在におびえ、だいたい作業をはじめたころに全部一度に飲んでしまうんですよね。
ちょっと飲んで、ほかのことをして、また戻ってくるタイミングがわからないというか、子どものころ憧れていた感じとはちょっと違って、想像していたよりコーヒーは私に非協力的で、うまく間合いはとれないままです。

そんな中、間合いをうまくとるという点では、とても良い食べ物があります。アイスです。アイス(特に棒のやつですね)は、まず、一度持ったら食べ終わるまで手放せない。置いとけないし。そして、あんまり暑過ぎず、涼し過ぎないところだと、ちょうどよい速さで溶けてゆきます。溶ける速度で食べれば良いよと、アイス自身の誘導があります。私がアイスを食べるからアイスを溶かしているのかもしれないけど、アイスが自分で溶けるから私がアイスを食べているのかもしれません。夏の始まりかけの夜などに、駅から一番近いコンビニでアイスを買って、地面にポタポタと落ちない程度のスピードで食べながら、人通りの少ない方の道を家に向かって歩いていると、人生なんて勝手に過ぎていくもんだよね、となんだかとても気楽な自分になれます。