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2F/当番ノート

ヴァーチャルスナック・モモコ ートーキョーガールは渋谷の路地裏で王子様の夢を見るー

当番ノート 第45期

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いらっしゃいませ。
ここはアパートメントの中にある小さなお店「ヴァーチャルスナック・モモコ」へようこそ。
ありきたりのどこにでもあるような路地裏スナックよ。
期間限定でオープン中!
私は店長のミス・モモコ。
また来てくれてうれしいわ〜
こんなに暑かったら焼き鳥を片手にビールをグイッといきたいわね〜!

cover

この暑さなので、おへそを出したティーンエイジャーが狂い出す「渋谷」の話でもしましょうか。
今日は渋谷の路地裏のとあるハプニングバーに行った時のお話しよ!

ハプニングバーは、ラブホ街がひしめく裏にあったんだけど、それこそママはウッカリ『ハプニング』で連れてこられたのね。
『面白いところがあるから行こうよ〜〜!』って男性に、ね。
まあ男が『面白いところ』って言う場合、それはだいたい地獄か地獄ね。

そんなわけで2軒目を目指し、「渋谷のあの坂」の上を歩いてくこと数分。
「ここはラブホではありません」といういかにもワケありげな入り口をくぐると、そこはあったわ。
確実に「待合」って感じの窓口で「おとな二枚」みたいな感じでオーダーすると「保険証を見せてください〜」と身分証を見せられて、会員証を作らされるの。
なんで保険証・・・?という疑問ありつつ、しばらく待つと、会員証とリストバンドが渡されるのよ。
そこでお金を払うんだけど
チケットは3種類あって

・女性1人(赤)
・男性1人(青)
・カップル(緑)

というリストバンドで、カップルだとピンで行くよりもその分安くなるのね。
中に入ると「携帯電話、一切の荷物はロッカーに預けてください」と、中をご案内されるのね。
中で知り合った人と、電話番号など一切の連絡先の交換はできません。この中だけのお付き合いとしてくださいね、
とのこと。
そうして、身ぐるみを剥がされてから、ミステリーハンターモモコ、潜入です〜!

『バースペース』
ではお酒やフードを楽しむことができるわ。
てっきり、しなびたポテトチップスだけかと思いきや、
なぜか・・・・しゃぶしゃぶ食べ放題だったのよ。
「ありがたいけど、ここまできてしゃぶしゃぶとか食べたくないな〜」と思いながら別フロアに案内されると、合皮のフラットスペースをつなげたような、明らかに多目的な
『プレイスペース』
があったわ。プレイルームの向こうからは、マジックミラー張りになっていて
「廊下から中の様子を見ることもできます」と案内されながら廊下を通過。他にも個室があったり色々「楽しむ」部屋を見せられてそこで「あっ、こういう所なの!?」って気づいた時はすでに遅かったわね。
「ただし、コンドームは必ずつけてくださいね!スタッフが持ってますので!」と笑顔で念押しされました。
「安いから」という理由だけでカップルチケットで入ってしまった2人の間に、気まず〜い空気が流れたわ・・・。

と、まあここにもカラクリがあってね

・女性1人(赤)→男性にも女性にも話しかけられる
・男性1人(青)→女性に話しかけられる
・カップル(緑)→カップルの男性は、女性には話しかけられない。女性は男性に話しかけられる。ただし、カップル×カップルでは話をすることができる

というシステムになってるのよ!
私のイメージするハプニングバーってもっとショータイムがあるクレイジーなお姉さんがポールダンスしたり、巨乳の裸のお姉さんがウェイターでいて、マティーニを運んできてくれたりする・・・「時計仕掛けのオレンジ」の世界観のようなおしゃれエッチなショウバーだと思っていたのよ。

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そうしたら小太りのおじさんがふんどし一枚でしゃぶしゃぶを食べてるところからスタート。
ううむ。思っていたのとちょっと違ったぞ。
まだ私、渋谷おじさんの実態を掴めていないわ。
と、思ったらそれもそのはず、見渡したら、だってみんな若いもん。
終電後もお店が朝までオープンしているから、みんなお腹が〜空いちゃったのかな?
「ワンチャン」狙ってる男子大学生っぽいグループ。あんたたち!固まっててどうすんのよ!散りなさい!
と言いたくなるわ。
コスプレができるから、ほとんどの人が想い想いのコスプレをして、むしろ私服とかスーツでいると「完全に浮く」くらいの無重力空間だったけど、裸に法被を羽織っただけの男子大学生は、羽織の間から一物が完全に見えちゃってますけど!
でも彼らのコスプレってなんとなく「エロス」というよりも、「罰ゲーム」臭がにおうわね。
そのまま裸法被で、立ったままもぐもぐしている男に、微塵のエロスも感じな〜い!
モモコママの感想としては

「何だこれ」

だったわね。

物質構成としては
・ピンで来ている狩猟女子
・クラブの帰りに疲れたから休みに寄った女子グループ
・男女入り混じってノリできちゃった☆グループ
・東京に出張に来てアヴァンチュールを求めてきたものの、思ったよりも「パリピ色」が強すぎてしょうがないからカウンターで飲んでいるサラリーマン
・????裸でふんどしでしゃぶしゃぶを貪り食べているおじさん。
(このふんどし一枚で堂々たる出で立ちが、「多分今日来るのが初めてじゃないよね?」という位のベテラン感を出していました。積極的に声をかけるわけでもなく、じっと見ている異分子スタイル)

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さあて、戦場に来てしまったら仕方ない。
諦めて「見て楽しんでかーえろっと」とカウンターで悩んだ挙句、かなり弱気の「緑茶ハイ」を頼むことに。
絶対、ここでの過ごし方が間違っている。
と思いながら一緒に来た人と「普通に」飲んでいたのよ。
隣に座っていたのは出張で地方から東京のアバンチュールを求めに来た既婚者サラリーマン。
身の上話を聞く以外、できることは何もありません♡

そう思っていたらカウンターの向こうで「おおおおお」みたいなどよめきと共に、酔っ払いと酔っ払いが絡み合い始めたのね。
それはエロスというよりもやっちゃえ、みたいなパワーがあって逆に全然エロスじゃない。
こっちはその隣で緑茶ハイをちびちび飲みながら「すごいですね」という月並みな会話と共に、「どこ出身なんですか〜」という空気みたいな会話をする地獄絵図。
でもその男女が絡み合い始まって、周りも連鎖反応で何かあるかしら?
と思ったら意外とみんな「見てるだけ」なのね〜。

若い頃は刺激を求めて狂うことが癒しになるのに、来てみたもののビビって狂いきれない人々と、本当に飲みに来ちゃってごはんを食べる癒しを求めている人が混在しちゃってどこにも行きそびれた感じ!
そのどこにも行けない〜みたいな苦〜い思い出が良くも悪くも「渋谷の若さ」って感じだったわ。
みんな24hの中華屋でラーメンでも食べて帰るのかなって、未来が見える〜!

と、思っていたら私はすっかり忘れていたのよ。

そう、私は連れの人と「カップルチケット」で入ったから、
彼は「来てみたものの女子おろか誰とも喋れない」上に「連れは別の男と喋ってる」
という状況でした!

あちゃー。

しかもガヤガヤしてきたから私はすかさず「もうちょっと疲れちゃったし、出ようか〜」と言って出ることに。

つまりは・・・・彼は高いお金を払って何杯かお酒を飲み、
何もせず誰とも喋らずハプニングバーを後にする・・・・という

「ノーハプニング」の状態。

当然「もう1軒行きたい」と言い出したけれども、
私は「既婚者と実りのない会話」をしてクタクタよ!

「じゃあタクシーで帰るね〜」と言ったら
「いや待てよ」

と言い出したのよ。
確かにさすがに悪いような気がしたので1軒だけ終わりが見えるカラオケに付き合うことに。
きっかり時間になり、延長もなく「今度こそ本当に帰ります〜!もうクタクタ!」と言って店を後に。
すでに深夜3時よ。

渋谷の交差点に向かって歩き出して、流しのタクシーを探していたら
真ん中で私の肩かけているカバンを「ガシッ」と掴まれて

「あと数時間で始発が動くから!お願い!もう一軒だけ!」

と言われたのよ。

いやいや、そんなの

「死ぬほど知ったこっちゃない」わよ。

それをやっていいのは「ただしイケメンに限る」(けどおそらくイケメンは間違いなくそんなことしないよ)だよ!

「ごめんなさい〜ちょっと明日早いんで〜(大嘘)」

と言ったんだけど、本当にカバンを離してくれなくて小学校ぶりに「綱引き」をしたわ。
でも私、こう見えてもか弱い女性。男の人の力に勝てるはずもなく10分くらい綱引きをした結果・・・・

「ほんと怖いんで」と、カバンを捨ててタクシーに飛び乗ったわ!

それでようやく解放よ。
もちろん、財布、ケータイなど大事なものは抜いたわよ。

命よりも安い「かばん」だったし、悔いはないわね。

これぞまさに、事実は小説よりもハプニングね!
あー怖かった!

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さてさて、今回はこのお店も内容もフィクション小説・・・!ということにしておきましょうか!

はい❤️お会計お願いします
また来週〜!今夜も激しい夜を〜!

モモ コダテ

モモ コダテ

1988年生まれ/新宿区在住
グラフィックデザイナー、ライター。
ゴールデン街のバーテン、様々な面白い人に出会う中でヒトの面白さに、独特の角度から切り込み、観察中。
2019年5月の文学フリマにジンを初出店。

Reviewed by
たかだ まなみ

【エロスはガウンの下にしまっとけ】

狭い階段を上がり、消えそうなオレンジの光がやっとこさ灯る部屋に入る。
「あ〜いらっしゃい」とさしてこちらには興味もなさそうに挨拶をするのが、モモコママだ。
今は客のキープボトルからドクドクと酒をついで飲むのに忙しいから、という顔をしている。
まだ、酔った様子はない。

しばらくすると、おじさん連中がよだれを垂らして飛びつきそうな、
「エロネタみたいなもの」を静かに語り始めるが、
そこで決してインスタントな愛嬌を振りまいたりしないのがママ流。

それにオチが高確率でホラー。
エロネタかと思いきやホラー。
おじさんたちはめいめいに、エロ話を聞けなかった傷つきを癒そうとしている。
滑稽だ。


「ねぇ、あなた。ズボンのチャック、開いてるけど?」



おやおや、俺としたことがコレは失礼。
エロスはしまってこそ、輝くって言ってたしね。たぶん。

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