2/10 雪はまだ降らない。かおりさんへ

管理人室の往復書簡

かおりさん

こないだは「気持ち大盛り上がり」な日記を書いて若干こそばゆい、このごろです。
赤ワインはもとより、しらふでも夜に書くものってどうしてああも気持ちが露呈するような文章になるのだろうね。
もともと気持ちに従って書くことをするのだけれど、それでも久しぶりに「盛り上がったね私!」と言いたくなるような日記だった。
それも、私。ってことでこそばゆいまま、残しておいてあとで笑おうと思う。

ルーヴルのこと、たくさん書いてくれてありがとう!
絵画について、たとえば「誰によるなになにの絵」とかは本当によく知らないのだけれど、「パリ・ルーヴル美術館の秘密」は観てみよう。
あのうつくしい美術品たちを護るのは神さまでも龍でもなくファルコンでもハリーポッターでもない。
「ルーヴルに関わる仕事」をしているって、聴き心地はすごく華やかに聴こえるけれど、実際はきっと地味で根気のいる仕事なんだろうな。

どーーんな仕事もそうだけれど、裏方しごとほど地味でこつこつとしているよね。いくら表側は華やかに見えているものでも。
飲みに行き始めたころの昔、バーテンダーを見て素敵♡と思っていざBARや飲食店で働いてみると、仕事の3分の2は仕込みだしさ。好きだけど仕込み。地味だなって。
昨日は大量のにんにくの掃除をして、その後とうがらしの掃除をして手がペペロンチーノになった。

踊りもきっとそうだよね。
飛ぶためには、毎日毎日、鍛錬を積み重ねることが必要なのは私にでもわかることで。
実際のものは大変なものだろうと思うから、それをかおりさんが軽くふわりと「嘘みたいな気がしてくる」と言えることって素敵なことだと思う。

杉山さんの当番ノートを読んで、アパートメントに集うみんながクレイアニメーションになってあたまのなかを動いたよ。
こないだ映画「メアリーアンドマックス」を観たばかりだったから、あんな感じでかたかたと不器用な感じで。
クレイアニメーションはあまり観ないのだけれど「メアリーアンドマックス」はすごく良かった。
ネタバラシになるからあまり書かないけれど、アニメーションなのに人間の匂いを直に感じられるような、お洒落なのに泥臭い不思議な映画だった。

女の子と男の人が文通をする話。すごいざっくり。

文通といえば、いわき出身の詩人で草野心平という人はね、宮沢賢治とずっと文通をしていたんだって。
草野心平は自身の編集した雑誌に、駆け出しだった宮沢賢治の詩を載せたりしていて、賢治の才能に夢中になっていたみたい。
心平と賢治は文通のみの交流で会ったことがなくて、心平は賢治のいる岩手に会いに行こうと思ったこともあるのだけど、乗る電車をまちがえて新潟に行ってしまったりするドジな人で。
で、心平は短気で極端な性格なものだから「もう会いになどいかない。」とか言っていじけたの。こどもみたく。自分が悪いのに。逆ギレ。
その後も文通や作品の交換は続いたし、通じ合うものはあっても会うことはなかった。
心平が賢治の顔を初めて見たのは、賢治のお葬式で、遺影だったんだって。
なんか内容とはぜんぜん関係ないのだけど「メアリーアンドマックス」でそんなふたりの話を思い出した。
昔らしい、レトロな話。でもひょっとしたら、現代にも転がっている話。

草野心平はオノマトペの天才で、すべての「名前のあるもの」に彼独特の音の響きから新しい命を吹き込んだ。
けっこう面白い人生と詩だから、今度その詩を紹介するね。かおりさんが好きか嫌いかはわからないけど。

ではでは。