ticket to ride

長期滞在者

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 何度も、何度も父や母の迎えをまった駅。おそらく、もう戻ることはないだろう、その小さな駅のことを今思い出している。

 駅前にあったミスドで、よく家族へのお土産を買った。ポンデリングが好きだった父に、弟。母はさて、なにが好きだったろう。ミスドが閉店して、もうだいぶ経つから忘れてしまった。だけど、あの小さな駅前のミスドのことを思うと、親元に帰るという安心感と、どんどん家族から離れていく自分の中に芽生えた自立心がないまぜになった、複雑で奇妙な気持ちを思い出す。今はもう空っぽの空き部屋だけれど、あのときわたしがミスドで買っていたのは、他者として家に入っていくためのチケットだったのかもしれない。

 父も、弟も旅立っていって、とうとう日本にひとりぽっち。親戚はいるけれど、頼りにする気は毛頭になく、それならばパートナーの家族を頼るほうがよっぽどいい。電話口で泣いていた父も、きっと十数年ぶりのブラジルの大地を踏んで、少し安心できるんじゃないだろうか。そうであることを、なによりも願っている。父の笑顔を想像しながら、祈り続けよう。

 本庄駅に、戻ることはこの先ないかもしれない。だけど、まだ群馬に置き忘れきたものもあるような気がして、また訪ねてみようか、という気持ちもある。さよなら、と言い切るのは早すぎるのかもしれないけれど、胸にあるのはさよならの音。

 新年を迎える前に、一足お先に新しい人生が幕を開けたような、そんな心境でいる。それがいいのか悪いかはさておき、今胸の中にある、前に進もうという気持ちを忘れないようにしないといけない。