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Mais ou Menos #48 —裏でも表でもないわたしたちの往復書簡ー

Mais ou Menos

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まちゃんへ

入院お疲れ様でした。
まちゃんの検査入院は、2回目だったから、もう何となく流れはわかってたけど、やっぱり心配でした。検査結果はまだもう少し先やけど、脳のことやからどうなるか心配です。心配しすぎてもあんまり意味ないかもしれんけど、心配です。

私はというと、少しずつですが、自分を楽にするような考え方、動き方を実践しているところです。仕事も探しているけど、なかなかすぐには見つからへんと思うから、自分が働きやすいところが見つかるまで、ぼちぼちやっていこうと思う。
自分の場合、まず、第一にセクシュアル・マイノリティやから、それがネックやなと思ってしまう。企業に面倒臭いやつと思われるんじゃないか、と不安になる。実際に自分でも自分のことが面倒臭い。自分の性別がはっきりしないことに疲れている。割り切れへんことに。性別なんかなくなったらええのに…
こう考えると、“普通”の人がまず、つまずかないところに、つまずくので、難儀やなあと思う。何もだまって働こうと思っても、もう見た目ですぐバレてると思うし、隠すのもあれやし………
あと、この生き辛いのは、マイノリティだけじゃないいろんな要素も入ってると気づきだしたので、それでも生きていけるように、自分を苦しめすぎひんようにやっていかんとね。

まちゃんのことも自分のことも心配。でも、目の前のことを考えて、楽しく過ごしたい。名古屋に選挙行ったとき、久々に“遊んでる”感覚があった。こんな感覚久しぶりやった。楽しかった。何とかやっていけるやんな?不安なときはすぐまちゃんに聞いてしまう。今日もやれること1こやった。それでいい。自分はようやってる。もうちょっとこれからは自分のことも、まちゃんのことも周りの人のことも甘やかしていきたい。

2018.10.9

P

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Dear: ぴちゃん

今月もお疲れ様です。こうやってちゃんと往復書簡になるのは久々ですね。Pが落ち込んで、私が落ち込んで、ようやく生活の軌道が少しずつ修正されてきているのかな。

先月の今ごろは入院することになるなんて予想もしてなくて、バタバタしたよね。2人ともメンタルも体調も万全ではなくて、本当にどうなることかって心配だった。

この一ヶ月くらい、こだまさんの『夫のちんぽが入らない』が2人の間に対話のスペースを与えてくれていた気がします。
セクシュアリティー、国籍、病気、メンタルヘルス、様々な問題が私たちの間に横たわっていて、おとちんを通して、自分たちの姿を俯瞰することができていたと思う。

ぴが仕事を辞めて“自己肯定感を高めるプロジェクト”を始めたこともすごく大事だと思う。私たちは本当に呆れるほど真面目で、頑張り屋さんで、無理しすぎるタイプで、すぐに「なんとかしなきゃ!」ってなってしまうし、極めて自己肯定感も低いから、冷静に、自分たちの姿を見なおすべきなのだと思う。

自分たちの苦しさや、痛さや、生き辛さをこれ以上無視してたらダメなんだって思う。自分たちのことを本当に、マジで救えるのは、自分自身なんだと最近思います。
私も、自分のことを「ダメな奴」と考えること、手放しはじめてる。
毎日、生きているだけで立派だと思うようにしはじめた。
だから、ぴも自分のペースでいいから、これまで私たちが自分たち自身にかけてきた“呪い”を解いていこう。

名古屋で、フリーダ・カーロの『死の仮面を被った少女』を見たとき、私もぴちゃんも動けなくなったけれど、あの絵は私たち自身だと思ったの。あの少女は私の心の中にも、ぴの心の中にも住んでいて、ずっと私たちを見つめてきていたんじゃないかなって思う。尊いなって思えたこと、良いきざしなんじゃないだろうか。
名古屋での気持ち、忘れずにいたいね。今をただそのままAppreciateできること、その喜びを今は大事にしたい。
私も、ぴも、これを読んでいる人々もすべて、それでいい。

Maysa

2018.10月

Maysa Tomikawa

Maysa Tomikawa

1986年ブラジル サンパウロ出身、東京在住。ブラジルと日本を行き来しながら生きる根無し草です。定住をこころから望む反面、実際には点々と拠点をかえています。一カ所に留まっていられないのかもしれません。

水を大量に飲んでしまう病気を患ってから、日々のwell-beingについて、考え続けています。

PQ

PQ

ゲームと映画が好きです。
国籍も性別もない。

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