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黙っていてもいいですか?

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黙っていてもいいですか?
    
   
   
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黙っていてもいいですか?
   
   
   

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黙っていてもいいですか?

黙っていてもいいですか?

黙っていてもいいですか?

    
   
   
   

   
    
   
   
hatena 1-3
黙っているのは

黙ってしまうのは

言うことがないんじゃなくて
   
   
   
   
   
   
   
hatena-3
もう少し黙っていていいですか
   
もう少しで
   

     
   
   
   
   
   
   
hatena-2
今はとにかく 黙ることを やっていてもいいですか?

放っておいても

ちゃんと 抱えて しまうので
   
   
   
   
   

わかばやしまりあ

わかばやしまりあ

描いたり食べたり生きたりしている

Reviewed by
さかいかさ

「タイポよ、スイカが小さな羽をパタパタやって飛んでおるぞ。不思議じゃの」
青空にひとつ、ぽっかりスイカが飛んでいた。スイカが鳴いた。スイカァ〜スイスイカァ〜カァ〜カァ〜カァ〜。
「もう秋だってのに、きっと今年最後のスイカかもしれませんね」
「師匠、あっちから、みたらし団子が群れをなして走ってきますよ」
みたらし団子は鳴いた。ミャ〜タラシ、ミャ〜ミャ〜タラシ、ミャ〜ミャ〜ミャ〜。
「タイポよ、秋になると無性にみたらし団子が食べたくなるのは、いったいなんでじゃろな」
「師匠、見てると、よだれが、よだれが」
「きたないのタイポ。よし、ここはワシの奥義で、ひとつ奴らを取っ捕まえてやろうかの」
「師匠〜期待してますよ〜」
「はてな拳奥義!その一万二千三百四十五!ひつじを数えても眠れないのはワシに想像力が足らんからじゃ」
トマト師匠は赤子を抱くような仕草をしながら歌いだした。
「寝群れ 寝群れ 母の群れに。寝群れ 寝群れ 母の群れに。こころよき 群れたちに むすばすや 楽しい夢」
勢いよく走っていたみたらし団子たちが、ゆっくりと歩きだし、やがって立ち止まった。
「どれ、うまくいったぞ。ぐっすり寝たようじゃ」
「師匠、師匠の奥義がはじめて役に立つのを、ボク、初めて見ました!」
「なんじゃと!今までも散々役にたったじゃろうが」
「師匠、それシーンです。ボク、シーンですよ」
「ほれ、タイポ、袋出せ、袋」
「大量ですね〜。食べきれませんよ」
「タイポ、このみたらし団子、えらくうまいの〜」
「あぁ〜師匠もう食べてる。ずるい。ボクも、、、、うま〜い!」
「タイポ、これ持ってこの先の街へ売りに行こうかの。うまくいけば、しばらくイイ暮らしができそうじゃ」
「そうしましょ。そうしましょ」
トマト師匠と弟子のタイポがやってきたのは、食べ物が生きる街「フード・コート・タウン」。ラーメンやハンバーグが道路を行き交い、ステーキが交番で働き、お寿司が営むコロッケ店が大繁盛するような、ちょっと変わった街。
「師匠、なんだか妙な街ですね。何見てもお腹が空いてくるんですが、さすがにあそこを歩いてるたこ焼きや、あそこのミートパスタなんかは食べたらマズイんですかね」
「タイポよ、ワシもようわからん。でもたぶん食べたら、マズそうじゃの」
「ウマそうだけど、マズそうですね」
「タイポ!うまいこと言った!それいただいていいかの?」
「いただいちゃってください」
「いただきま〜す!」
「師匠、それよりこんな街で、この袋の中のみたらし団子たち、売っていいんですかね?」
「大丈夫じゃろ。ほら、まだぐっすり眠っているようじゃし」
「不安だな〜」
「タイポよ、ワシは今、はたと思ったんじゃが、寝るってのは不思議なことじゃの」
「何、言ってるんです師匠。寝るなんて当たり前じゃないですか。だれもかれも寝ますよ」
「そうなんじゃ。それなんじゃ」
「なんです師匠」
「この広い世界、だれもかれも寝るんじゃ。どんなに悪い生き物も、どんなに良い生き物も、どんなにうるさい生き物も、どんなに嫌な生き物も、どっかで眠って、ぐっすりと黙るんじゃ。辛い事があっても、良い事があっても、それを抱えて起き続けることはできないんじゃ。いつか眠って、黙ってしまうんじゃ」
「いびきがうるさい師匠みたいのもいますけどね」
「そう、いびきのうるさいワシみたいなのも、、、、タイポ!」
「ひぃ〜〜」
「タイポ、ワシっていびきかくの?」
「かきますよ。ガァガァかきますよ」
「知らなんだ。ワシ、知らなんだ。ショック。わし、ショック」
「まぁまぁ、師匠。とりあえず団子、売りにいきましょ」
「タイポ、まずいぞ」
「なんですか、師匠」
「持ってる袋見てみろ。みたらし団子たちがもう起きたようじゃ」
みたらし団子たちは、次々と袋から飛び出し、街の中を縦横無尽に走り出した。街の中はいっぺんにパニックになった。
「きゃ〜!!!」「野みたらし団子だ〜!」「だれだ!野みたらし団子を街に入れたのは!」「野みたらし団子は街の指定保護食物だぞ〜」「助けて〜」「許可なく捕まえたら重罪だ〜!みんな逃げろ〜」
「師匠、これマズいですよね」
「タイポ、ウマくはなさそうじゃ」
「どうしましょ」
「どうしようかの」
「師匠、さっきの奥義、もう一回使ったらどうです」
「そうじゃの、そうしよう。ひっそりと、より強力にやろうかの。このままじゃ、ワシら捕まってしまいそうじゃからの」
「師匠、お願いします」
「再度!はてな拳奥義!その一万二千三百四十五!ひつじを数えても眠れないのはワシに想像力が足らんからじゃ」
トマト師匠は地面に寝そべり、子供を寝かしつけるような仕草をしながら歌いだした。
「寝群れ 寝群れ 母の群れに。寝群れ 寝群れ 母の群れに。あたたかき その群れに つつまれて 眠れよや。寝群れ 寝群れ かわい我が群れ。一夜寝て さめてみよ。くれないの 群れの花。ひらくぞよ まくらべに」
街は静かに眠りについた。ハンバーガーも焼き鳥も眠る。チャーハンもとんかつも眠る。北京ダックも芋ようかんも眠る。野みたらし団子たちも眠る。すべての食べ物が黙って眠っていた。それはただの食べ物だった。食べ物たちは、いったいどんな夢を見るのだろう。
「ふぅ〜うまくいったようじゃ。さて、タイポ、逃げるとしよう。ありゃ〜」
弟子のタイポもぐっすりと眠っていた。タイポの顔文字が「ガァガァ」となっている。
「こやつは顔でいびきをかくから、静かなもんじゃ。ワシ、いびきかくのかぁ〜。あぁ、知らなんだ」
弟子のタイポを背中におんぶして街を出て行こうとすると、静かに眠る街から「ガァガァ」といういびきが聞こえた。いびきの元を探すとオムライスだった。たっぷりかかったケチャップから「ガァガァ」と聞こえてくる。
「なんじゃ、トマトはいびきをかくんじゃな。そうか、そうか、それじゃ仕方ないの。ふふふ」

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