当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、7。 音楽、の話。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考えだけでは完全には管理できないもので、その類似性が記憶の引き出…
長期滞在者
今週末(7月12日)まで、関西で主に活動する林 直さんの個展「みつめる写真舘」を開催しています。 もうすぐ終わってしまいますが、もっとこの写真に囲まれて過ごしたいと感じる素晴らしい展覧会でした。 この作品は、林さんがいろいろな方の愛着のある品物を見せていただき、持ち主との歴史を偲びながら丁寧に撮影を進めてきたモノのポートレートと呼びたくなるシリーズです。 被写体に宿る持ち主の想いと、伝統的な写真技…
当番ノート 第21期
今週はルーマニアあれこれ。主に出会った人々の話。 まずはタクシーの運ちゃん編。 ・総論 6割が陽気に延々と話し続け、3割が真面目に黙って運転し、1割が超絶陽気に女の子を斡旋しようとしてくる。 ・タクシーの運ちゃん① 乗ったらいきなり「お前日本人か?」と言われ、そうだと言うと「これ直せる?」と携帯を見せられる。エンジニアじゃねえって。 ・タクシーの運ちゃん② 物凄い高速で運転しつつも、敬虔な…
当番ノート 第21期
▼浦賀 なくしちゃったのね。 魔女は言った。 それで、南へ、来たのね。 声が出ないので、うなずいて答える。 ところで人魚はげんき? 不意をつかれた。少しためらったが、うなずいた。 げんきなら、だいじょうぶね。 魔女は微笑んだ。嫌な感じはしなかった。しばらく黙って、バスに揺られた。 あ、ここだわ。 魔女が唐突に声をあげた。 向こう岸に、行ってるからね。 言うと赤い帽子の魔女は私のほおにちょっと触れ、…
当番ノート 第21期
「私たちが日常生活の諸事にかまけている間は、その目覚めている記憶の視界は狭いものである。昨日や先月あるいは去年起きた出来事はこまごまと想起されようが、わたしたちの生涯のなかでははるか遠い出来事となると、もはや殆どわたしたちから逃げ去っているものだ。むろんそれらが起ったということは覚えてもいようし、どんな位置で、どんな連関の下にあったかも知ってはいよう。しかしそれらは見えないのである。 」(※1) …
Mais ou Menos
_______________ 物と記憶について 物と記憶がこんなに結びついているとは思わなかった。昨日、ふと前から整理したかった棚の本を捨て出したら、この家に引っ越してきた小学校3年の頃の記憶が蘇ってきて、なぜかダラダラと涙が溢れてきた。 この家と私の記憶はそこから始まっていて、だから、当時持っていた物を見ると、自分でも意識していないところで脳の回路がバババッと繋がって、一瞬にして、私は当時の気…
当番ノート 第21期
いかんいかん ざくざくっと書きますね。 でも今日はなにを書こうかなー。 そうだ。 人と会うことについて。 それとその発展性についてかきます。 「世の中に 人の来るこそ うるさけれ とはいふものの お前ではなし」 大田蜀山人 「世の中に 人の来るこそ うれしけれ とはいふものの お前ではなし」 内田百閒 すごくキュートな短歌だけど、これを書き出しにします。 人と会うことの粋というか、キモがここにある…
長期滞在者
対象を知ることは、対象の構成要素を知ることなのだろうか? なにかをじっと見つめるとき、その対象と自分との距離感について考えるようになりました。 物事を見つめると、その構成要素、それらが成り立つ仕組みや理論が見えてきます。それはとても興味深く、自分の持っていたはずの前提条件さえ覆されてしまうことがあります。物事を知るためには欠かせない行動です。しかし、対象に近づきすぎると、自分が「何を見ているか」見…
当番ノート 第21期
じゅわわわぁぁぁ・・・ かたん さくっ、さく、 サラサラサラ さ、揚げたてですよー! ん・・・? あっ違います、鶏の唐揚げじゃないですよ! 本日のお夜菓子 ★ ドーナツ まあるいわっかの中を覗きこんだ外の世界は、なんだかとってもキラキラして見える気がしませんか? つい食べる前、こっそり穴を覗きこんで視界を見渡してしまいます。 同じ空間でも全く違う景色が見れてとっても楽しいの。 是非、こっそりのぞい…
当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ、6。 旬、の話。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考えだけでは完全には管理できないもので、その類似性が記憶の引き出し…
当番ノート 第21期
少し中休みとして周りの国々の話でも。 去年の夏はバルカン半島巡りをした。ベオグラードに始まり、サラエヴォ、ドゥブロヴニクと回った。当初は車で出発し、ベオグラード、サラエヴォ、ドゥブロヴニク、コトル、ティラナ、スコピエ、ソフィアと回って帰ってくる強行軍を計画していたのだが、免許の書き換えがうまくいかず結局空路とバスの旅になった。はっきり言って正解だった。 因みにルーマニア人はどこへでも車で旅行…
当番ノート 第21期
▼馬堀海岸 ひとりになってからというもの、ねむれない。夢を見て、疲れ果てて起きてもまだ二十分しか経っていないこともざらで、昼間も夜もそれは変わらない。目がさめて深夜二時過ぎに家の中をうろつくと、今度は人魚が起きてしまう。どうしようもないので、朝の暗いうちから浴槽に水をはり、人魚を泳がせる。疲れると人魚はそのうちねむる。私も、人魚のたらいの横でつかのま船を漕ぐ。しばらくして目をあけては、たらいの青く…