長期滞在者
29年の人生の中で、最寄り駅への愛着って、実はいままで感じたことがなかった。だけど、この2年近く毎日のように通う最寄り駅は、わたしにとって初めての愛着ある最寄りの駅だ。 もちろん、東京で生活していたときも、群馬で生活していたときも、それぞれに最寄り駅はあった。だけど、いまの頻度とは、比べ物にならないほど利用回数は少なかったし、自分の行動範囲内にあるという感じは、正直あまりなかった。 いまの最寄りは…
当番ノート 第24期
「今年は良い年だったのかなー」 と、うしろにはてなを浮かべてしまうようなことを、ここにきて不意に考えます。少なくとも嫌な年ではなかった気はしますが、ただこれは時間の仕業で、都合よく嫌な記憶だけが薄くなってしまったからなのかもしれませんし、よくよく思い返すと嫌な年だったような気もします。忘れているだけで。 12月31日を担当するのも何かの縁ということで、ふと立ち止まって、今年あったちょっとした自分の…
当番ノート 第24期
今年はやたらとアルバムリリースが重なりました。自分の場合は物書きなんかと同じで作品毎の題材と内容に合わせてレーベル(作家でいう出版社にあたる)を決めるという形なので、結果として各レーベルのリリーススケジュールが重なったということなのですが、それでもそれなりにパブリシティやるとなると結構大変だったりします。。が、我が子の晴れ舞台に何もしない親でいるわけにはいきませんからねっ。殆どがヨーロッパのレーベ…
長期滞在者
ここ10数年の間に私は何を失い何を得たのだろうかと考えています。若さを失い役割を得た、といった個人的なことではありません。とはいえ、この社会から何が失われ何が新たに現れたのかという社会学的な興味でもない。むしろ、私と社会のあいだをつなぐ領域において何が喪失され何が獲得されたのか。体感はしているはずですが、体感しているからこそ簡単には言葉にできない。そんな変化について書いてみたいと思います。 私と社…
長期滞在者
まばらなしるしをおいもとめてはまだらなしるべをのこしていく 記憶や経験に寄りかかって自分が感じたことを重んじるあまりに 目の前に見えていることまで軽んじてしまわないように 日常を紡いで 解いて 繋げて 連なる点が縁を結び 深く掘り下げる時がきた 世界からはいま 少し遠くなって せまいところにいるのかもしれない けれど 散在している私の跡が少しずつ地図になっていくようなことを感じている 開いてい…
当番ノート 第24期
ストレイテナー「NO 〜命の跡に咲いた花〜」。 今年はこの曲と生きたと言っても過言ではない。 ストレイテナーを初めて知ったのは、ラフォーレミュージアム原宿で開かれたイベントライブ。 そのイベントに出ているART-SCHOOLを観に行き、彼らの出演が終わって帰ろうかと扉に手をかけた瞬間、 私の後ろで鳴っている音に惹かれた。 えっ?何??と思って振り返ったら、ステージにはヴォーカルとドラムのみ。 えっ…
長期滞在者
ドはドーナツのド!わたしが初めて一人で作ったおやつはドーナツだった。最初に、本からノートに作り方を書き出し、頭の中へ手順を入れる。溶かしバターを作り砂糖を混ぜていく。次に卵を入れる。ふるいにかけた小麦とベーキングパウダーを入れて生地を作っていく。どうやってあの◎を作ったのか、先に丸いガラスのコップで外縁くりぬき、後から赤い食卓塩の蓋を使い、真ん中に穴をくりぬいた。そして、油で揚げる。今ならネット環…
当番ノート 第24期
実家から荷物が届いた。母ちゃんからは、クリスマスプレゼントのニット帽と手袋。母ちゃんはけっこうマメで、誕生日やクリスマス、バレンタインと毎年、何かしらプレゼントを送ってきてくれる。実家からの贈り物は、そこに言葉がなくたって、いつも温かい気持ちにさせてくれる。 父ちゃんは自家製の油みそと豚の燻製、島らっきょを送ってくれた。父ちゃんの手料理は絶品で、今までシェアハウスやCan’s BARな…
にゃんともはや!のねこばなし
真夜中をすぎたころ、おじいさんはベッドにはいり、気持ちよく毛布にくるまると、からっぽになった戸だなのことは考えないようにしました。そのかわりに、ねこのお客のことを考えました。ほんとに、わたしがたっぷりたべさせてやらなかったら、あのねこは、飢え死にするところだったろうなあ。 そのとき、なにかが、ベッドの上にのったような感じがしたかと思うと、ふたつの緑色に光る目が見えました。ねこがふとんの下にもぐりこ…
当番ノート 第24期
改札を出てきた僕に気付いたみち子さんは、軽く会釈をしにっこりと笑っていた。 ベージュのダッフルコートに白のスカート、緑と赤の混じったチェックのマフラーという格好の彼女に、ごめん待ったかな、と訊くと、ううん全然だよ、と静かに言った。いかにも初めてのデートだというやり取りを済ませ、新宿から六本木に向かうため地下鉄を目指し歩き出した。 「今日はどんな授業だったの?」 口を切るのは決まって僕のほうだ。 「…
にゃんともはや!のねこばなし
向こう岸に着いたとおもうと、狐がぷらりと出てきて、 「もし、犬どのな、猫どのな、そなたたちのもっている丸け物はなんだや。まりコだらば、ちょっとの間、手玉とってあそばねえか」とさそいをかけた。 そこで、三匹は、うろこ玉を手玉にとって、あっちやり、こっちやり、遊びほうけていた。 その時、狐はひょいと受けそこねて、大事なうろこ玉を川へ落としてしまった。 ――日本の昔話『犬と猫とうろこ玉』より 今回も日本…
当番ノート 第24期
先日、作曲家の友人とコライトしていた際にふと言われた「随分いろんな音楽本読むんですねぇ」の一言。学生の頃から読書自体は結構好きなほうでいまでも比較的様々なジャンルの本を読むことが多いので、特別に自覚は無かったのですが確かに言われてみれば結果として結構音楽本が多いかもっ。 というわけで今回はそんな数ある音楽本の中から、読み物として(ディスクレビューなどのカタログ的なものを除いて)これは!と思う面白か…