当番ノート 第24期
パソコンの画面を見つめる。 画面に写る楽曲の秒数を見ながら、キーボードを叩いて文字を綴る。 この連載の原稿を書いていて、ふと気づいたこと。 曲紹介でこんなふうに言葉を書いたのは初めてだ。 私の曲紹介の言葉は、手書きだ。 CDプレーヤーのタイムカウンターを見ながら、紙に曲紹介の言葉を書く。 キューシート(ラジオ番組の進行表)に書かれた、 アーティスト名と曲名、イントロの秒数、完奏の時間が書かれた部分…
長期滞在者
京都の某老舗帆布カバン屋のショルダーバッグやトートバッグを、かれこれ二十数年使っている。もちろん、いくら頑丈といわれる帆布バッグでも、重くて堅いカメラを運ぶのだから消耗は激しく、すでにいくつも使いつぶしている。一番良く使うショルダーバッグはすでに四代目。バケツ型トートも初代がもう破壊寸前のズタボロで二代目に移行している。 一時期このカバン屋の製品が女性誌にとり上げられてブームが起き、注文してから半…
当番ノート 第24期
自分の過去に関する記憶がとても曖昧だ。誰かに昔のエピソードを聞かされると、「え、そんなことあったっけ?」と新鮮な心持ちになる。人間は一度覚えたことは決して忘れないというが、何かのきっかけがないとなかなか思い出すことができない。三日も経てば、たいていのことは忘れている気がする。意識的に残したり、思い起こす作業をしないと、今の僕のように、いろんな場所で、いろんな人と出会い、いろんな経験をした、というふ…
当番ノート 第24期
仕事から帰ると、あきはベッドの上から窓の外に浮かぶ満月を見ていた。 部屋に入ると、あきは振り向きもせず 「また行ってきたの?別にかまわないのだけれど、その匂いはもうここにはいらないのよ」 とおかえりよりも先に言い、白いワンピース姿で、開いた窓の縁に両肘を乗せ、まだ満月を見ていた。師走の冷たい風が窓から流れ込んでくる。付き合ってから二回目の冬だ。 たぶん一生のうち行くことはないだろうと思っていたキャ…
当番ノート 第24期
いよいよ年末感出てきました今日この頃。ちょうど一昨年前のこの時期、「都市と自然」をテーマにゲストディレクター坂本 龍一氏を迎えて開催された<札幌国際芸術祭2014>のプレイベントでゲスト講師としてフィールド・レコーディングを用いたサウンドデザインのワークショップをやってきました。(もう札幌は雪が降っていましたっ)札幌のサウンドアーティストJunichi OGUROさんと共に坂本龍一氏が審査する…
Mais ou Menos
________________________ Pちゃん こんにちは。今、郵便局の再配達を待っているところです。ここ数日、ずっと雨が続いています。ほんのすこし、空の色が明るくなってきたので、洗濯物を外に干しました。わたしの服だけなので、黒い服しかなくて、遠くから見たらすこし怖いかもしれない……。 一人暮らしは順調です。当たり前のことだけれど、ちゃんと毎日ご飯を作って、食べています。面倒で適当にな…
当番ノート 第24期
2015年3月21日。 FM-FUJIで震災特別番組 学校訪問「10代ラジオ」が放送された。 この写真は、共に番組を進行したフォトジャーナリストの佐藤慧さんがスタジオ収録の様子を捉えた一枚。 番組では、世界各国を取材している佐藤慧さんの講演を聞いた中学生が自らの感性でラジオから言葉を伝えた。 ディレクターから、この番組で最後にかける曲を選んで下さいと言われた。 震災特別番組、10代とのラジオ、それ…
にゃんともはや!のねこばなし
するとぼうっとした闇のなかから、だんだんおばけのかたちがうかんできました。いや、いるわいるわ、野原いっぱいに、手ばかりひょろんとながいばけもの、目ん玉がひとつのばけもの、からだじゅうが青光りしているのっぺらぼう、にわとりのようなばけもの、ぺたぺたとかたちのないおかしなばけものが、たあらん、たあらん、おどっているのです。 するとそのとき、ひとりのばけものがさけびました。 「茂吉のねこぁどうした。」 …
長期滞在者
物理は普遍である、と言えるのか。 地球上どこへ行っても物理法則は変わりません。その点では物理は普遍であると言えるでしょう。しかし現在まで続く近代物理は、17世紀の西ヨーロッパという特殊な時代、文化の元で生まれたと考えられています。歴史的に見ると、物理は決して同時的、多発的に発生したものではありません。 自分はこの事実にとても興味を惹かれるのです。 17世紀のヨーロッパ。 科学とあわい、占星術から物…
当番ノート 第24期
何かの拍子に僕が「ままならないなあ」とつぶやいたのを、そのとき一緒にいた後輩の高田が「喜屋武さんっぽい」といたく気に入り、この間、こんな似顔絵を書いてくれた。友人たちに見せたところ、「おー、似てるー」とのリアクション。寝起きとはいえ、もじゃもじゃの髪、無精髭、半開きのうつろな目にジャージ姿はお世辞にも清潔感があるとは言い難い。自分のだらしなさは自覚しているつもりだが、こうしてビジュアルで突きつけら…
当番ノート 第24期
あたしが星を見ることが好きになったのは、叔父である忠おじちゃんの影響だ。 母子家庭で、まだ小学生になったばかりのあたしは忠おじちゃんによく預かってもらっていた。あたしとママが住むアパートから歩いて10分くらいの距離に忠おじちゃんの家があり、仕事で遅くなるので、学校からそのまま寄るように言われていた。 最初は、ママが帰ってくるまで一人でお留守番する、と言って泣きわめきながら家中を走り回ったものだ。よ…
当番ノート 第24期
今回ご一緒させていただいた出演アーティストについてもいくつか紹介しておきたいなと思います。まるで自分の心の中を覗いたとしか思えないくらい好みにストライク!なラインナップとなっており、これまでに来日することのなかったベテラン勢も多く参加する正直気楽にお客さんとして楽しみたいと思うような内容でした。 ■FRANK BRETSCHNEIDER Olaf Benderとともにドイツのエレクトロニック・ミュ…