長期滞在者
家の中にあるたくさんの本。日本に戻ってきたばかりのころは、本を増やすものかと思っていた。本だけじゃない、物も増やしたくなかった。でも、十年もいたら物も増えるし、本には本当にたくさんお金を使った。中学生のころから、ファッションやメイクには目もくれず、本と音楽ばかり。ものは増やさないと思っているくせに、本は買ってしまう。本を全部読んでいるわけでもないのに、本屋に行くとわくわくする。まるで、本の中には…
当番ノート 第24期
アパートメントの連載も早いもので、今回で最終回。この2ヶ月は、毎週締切に追われているうちに、あっという間に過ぎていった。 連載の文章を最初から読み返してみる。書きたかったことはどれだけ書けただろうか。高校入学後のこと。浪人中のこと。早稲田での学生生活。卒業式に父ちゃんが上京して、友達を交えてみんなで飲んだこと。書きそびれたこともたくさんあったけど、なんとか無事に最終回を迎えられてほっとしている。 …
長期滞在者
若い人へ こんな書きだしではじめると、いかにも自分が歳をとったように感じます。研究者としては未だに若手とされますし、立派な中年になる覚悟が定まっているわけでもないにしても。放っておいても心身が回復し成長していく時期が過ぎ、「おぅ、あとは死ぬだけだなぁ」と体感したのが数年前。とはいえ、生きていることがいずれ訪れる消滅の瞬間へのカウントダウンだという事実は、年端も行かぬ子供であったころの中心的なテーマ…
ギャラリー・カラバコ
アパートメント管理人が考えたタイトルで、古林希望が絵を描き、カマウチヒデキが200字小説を書きます。 二人のすり合わせはありません。お互いタイトルだけを頼りに、自由に考え、せーのでこのギャラリーにアップします。お互いの思惑が重なることもあれば、まったくかけはなれたものになることもあるでしょう。一つの言葉の持つ強度や振り幅の実験、みたいな感じになれば面白いと思っています。 「ギャラリー・カラバコ」と…
当番ノート 第24期
他愛もなく わたしはひどく脆い 真っ暗なわたしの部屋 黄緑色の灯りが ひかえめに点滅している 布団の中にもぐりこみ その声を待った いつのまにか 眠りに落ちて朝が来る 曇った窓 そこによく指で絵を描いた はじめて買ってもらった12色のクレヨン オレンジ色ばかりがみるみる小さくなった 不幸なとき 幸福だったときのことを思い出す 心地よくさせてくれるのは 雨の音と匂いだけ 他愛もなく あなたたち…
当番ノート 第24期
今回で連載も最後になりました。毎回〆切ギリギリまで入稿を遅らせ続け、担当の方へはご迷惑ばかりお掛けしてしまいましたが(涙)、、こまめに思考を言語化する習慣をいただきこのような機会に感謝しております。そしてなにより毎週書くということがいかに大変なことなのか身に染みております。(笑) さて、手前みそですが以前に少しこちらでご紹介したこともあるノルウェーのデュオ・ユニットPJUSKとオーストリアの音楽家…
当番ノート 第24期
「音楽があなたにとっての味方でありますように。」 これは私が番組で必ず最後に言っている言葉である。 しかし、いつこの言葉を考えたのかは全く覚えていない。 気づいたら言っていた。本当にそうなのである。 ラジオDJとしてこの言葉を発してきて、 多くの人から「この言葉が大好きです」と言って頂いた。 この言葉には様々な思い出がある。 あるミュージシャンはゲスト収録の時に、この言葉の後にスタジオの中で涙を流…
当番ノート 第24期
19歳で上京してから、8年経つが、いまだに一人暮らしをしたことがない。予備校時代の下宿から始まり、大学の寮を経て、今の墨田の長屋に至るまで、ずっと誰かと共同生活をしている。今まで家賃が3万を超えたことはない。経済的にも助かるし、周りに人がいる生活は単純に楽しかった。 そんな中でも、一番思い出に残っているのは、早稲田の学生時代に2年間暮らしたシェアハウスだ。大学から徒歩3分、都電荒川線早稲田駅の目の…
当番ノート 第24期
さすがに一日に二回も面接があると疲れる。家につくなりすぐさまベッドに横になった。 何もする気になれず、スマフォの画面をただいたずらに眺めては、天井の薄いなみなみの模様に目をやり、てきとうな一点を見つめていた。 ふと、スマフォが光り、一通のメールが届いた。今朝、受けてきた会社だ。 「・・・・残念ながら今回はご希望に沿えない結果となりました。今後のご活躍をお祈り申し上げます。」 30社以上受けていた駒…
当番ノート 第24期
今週はずっとバタバタしており、ご多分に漏れず今回も〆切直前に催促いただきながら書いておりますm(__)m 今回はちょうどICCにてクリスティーナ・クービッシュのオープン・トークが開催されるということで勝手に紹介してみたいと思います。 僕が初めてクリスティーナ・クービッシュの作品に出会ったのはもう10年以上もまえのこと、同ICCにて開催された『サウンディング・スペース─9つの音響空間』という展覧会で…
長期滞在者
もうりひとみさん アパートメント当番ノート第13期/絵描き・絵本作家
当番ノート 第24期
アパートメントの連載が決まった時。 当初は朗読ライブで読むような詩や言葉を書き下ろしていくことをイメージしていた。 そんな時、lynch.のライブを観た。 「この曲に対して私はどんな言葉を乗せるのだろうか。 改めてそのことに時間をかけて深く向き合ってみたいと思った。」 一回目に書いた私のこの気持ちに火をつけたのは、lynch.だ。 2010年4月から2014年3月まで担当した、FM-FUJI「RO…