当番ノート 第25期
ニューヨークで暮らし始めて7か月。日々どこかで、思いっきり笑っている人、びっくりするぐらい泣いている人、何があったの?と聞きたくなるぐらい怒っている人、なんだかよくわからないけど楽しそうな人、とにかくエモーショナルな人々をよく見かける。 かっこいい靴を履いている人を見かければ“それどこで売ってるの?最高にクールだね!”と話しかけ、困ってそうな人がいれば声をかけ、当たり前に手を差し伸べる。と同時に、…
長期滞在者
大阪と奈良を分ける二上山麓の小さな田舎町がぼくの一人暮らしのスタートでした。部屋は7畳半でグレーのパンチカーペットが引いてあるだけのただの四角い部屋で、北側に腰から上へ半間の窓が1枚。部屋の隅っこには申し訳程度の小さな流し台があってトイレは共同でした。それで家賃15,000円が安いのか高いのかよくわからないのですが、とにかくぼくはここで写真の勉強を始めることになりました。東京湾岸の埋め立て地で、植…
当番ノート 第25期
今日も西のはずれにある海岸へ来て、手頃な細さの流木を探した。 冬の海は濃い藍を湛えていて、海岸を歩くひとは私以外いなかった。天は鈍いろの雲が垂れ込め、砂浜は実にさまざまな漂着物であふれている。古い空き壜、硝子の浮き玉、ケルプ、小型の冷蔵庫、潰れたホヤ、靴、箒。 漂着したごみを数えながら貝殻を拾っては、そっと耳に当てた。昆布を踏んだ拍子にぐに、と気持ち悪い感触がした。 しばらくぼうっと歩…
当番ノート 第25期
「あんどろまらけの歌」2011年、インクジェット、手製本 写真家になるにはどうしたらいいんだろうとぼんやり考えていた。学生時、地方に在る余白のようなものが気になり休みを使っては青春18切符や夜行バスで各地方へ足を運び撮影していた。車窓に流れ込む平原や集落、濡れた浜辺に肥大する植物群。それを重ね手製の写真集を作ることが好きでいつかは自分の写真集をと思い描く学生だった。卒業のリミットがちらつき、自分の…
Mais ou Menos
———————— 16.01.31 ぴちゃん ただいま。いま、神山から帰りました。帰りのバスでは、気づいたら寝てしまっていて、いつのまにか京都でした。時間を感じなかったからよかったけれど、家に帰ってきたらなんだかぽかんと寂しい気持ちになったよ。 ずっと住んでいる家なのに、まるで自分の居場所じゃないような感じ。ここ数日過ごしただけの古い里山の家の方が、ずっと昔から住んでいた場所に感じるくらいに帰って…
当番ノート 第25期
鏡を見ている ちがうか 鏡にうつってる私をみている そういう観点からいくと私も、あの人にとっては鏡みたいなものなのかもしれない あの人は私を見ているようで、私を見ていないんじゃないかと思うことがある あのひとはあのひとを見ているんだ 目ん玉が、ひっくりかえったらいいのに それでも私は、まぬけにも化粧をしている ほんとうはもっと質…
長期滞在者
「無限ホテル」をご存知だろうか。 「無限ホテル」はその名の通り、無限の部屋があるホテルだ。 ある日、「無限ホテル」に無限にある部屋は、すべて満室になっていた。 そこへ一人の男が部屋を求めてやってくる。 「無限ホテル」の支配人は、慌てずにこう言う。 『ご心配には及びません。1号室のお客様を2号室に、2号室のお客様を3号室に、とすべてのお客様を移動すれば、一つ空き部屋が出来ます。何せ、このホテルには無…
当番ノート 第25期
昨年の春、夢を追い求めニューヨークに引っ越してきました。現在は、ブルックリンのアパートで陽気なルームメイト2人と楽しく生活しています。初めての海外暮らし、不安で胸がいっぱい、、、なんてことは来る前も来た後も一切なく。生き心地は抜群にいいけれど、生きていくにはなかなかの気合いが必要なこの街で、日々切磋琢磨しながらも、のびのびと生きています。 不安はないけれど、驚くようなことは山ほどあります。多様な人…
当番ノート 第25期
その夜は今年一番の冷え込みだった。 氷のように冷たい雨は夕暮れどきからみぞれになり、夜半過ぎには雪へと変わった。 凍て玻璃の外は群青いろではなく、こっくりと塗り込めた漆黒の闇だった。その墨いろの中を、羽で撫でるように軽やかな白雪が舞うのだった。 こんな夜は雪が音を吸い込んで、自分以外の生き物が滅んでしまったような錯覚に陥る。 魔女はしんと静まりかえった雪の夜が好きではないらしかった。 …
the power sink
こんばんは!今回も絵を載せます。見て頂けると嬉しいです。 ではよろしくお願いします! 頭がじんじんしているのに、何でか頭はからっぽの大きな穴になってしまった気分。その穴の上に穴に入らないような黒っぽい物が乗っかってくる気分なんだよ 車がぶつかりそう 四つ葉のクローバー。幸運を 唇が分厚いのか、唇が全く無いのかどちらかの人達 大き…