長期滞在者
だれにとっても、人生の節目になる年はある。わたしにとっては今年がそういう一年だった。仕事では大きな変化はなかったものの、私生活では大きな変化の連続だった。病気になったことや、それに伴って大きく生活習慣を変えたことは、今後の自分たちの生活の基盤になっていくようなできごとだった。 個人的なことにはなるけれど、発病、入院、退院後の生活を記録した「みずはいのちのみなもと」というシリーズをアパートメントで書…
当番ノート 第36期
カナダへ来てからしばらく経って気付いて、愕然としたことがある。ここにはミニシアターが無い。 東京にいた頃、ミニシアターで映画を観るのは月に一回程度の習慣だった。人と一緒に行くこともたまにはあったけれど、一人になって映画を観に行き、余韻をぼうっと持ち帰るのは今思えば自分にとって大事な時間だった。 本当に好きな映画は何度でも観るのでDVDを買う。レンタルして観ることもよくあるし、大きい映画館にも時々は…
当番ノート 第36期
昼下がりのジャーマンベーカリー。メガネをかけた坊主頭が、くわえ煙草で目の前の席に座った。 読書中の私。他にも席はたくさん空いてるっていうのに。 タバコをふかしながら話し始めようとする彼に、一緒に座るならその臭いのを消すように言うと「これは自分で買ったんじゃなくて人からもらったんだ」とぶつぶつ言いながらもみ消した。 「日本人?ここに住んでるの?」と質問をされ、しばらく滞在して近くのスタジオで絵を描い…
長期滞在者
年の瀬の慌ただしさの中で2017年を振り返ると、その前と後で状況がまったく変わってしまうような大きなことが、本当にめまぐるしくあった一年だった。春には会社との雇用形態を変え、フリーランスとして仕事をはじめた。その直後に父が体調を崩し、あっという間に亡くなって、ほぼ絶縁状態になっていた母や姉達が久しぶりに顔を合わせた。恋人と同棲する家をじっくり探し、一緒に暮らしはじめた、など。 今年は後厄でもあった…
当番ノート 第36期
蕎麦っ食いな私。 そんな私が住まいしているのは、長野県上田市。 そう、言わずと知れた蕎麦処・信州。 しかし、そんな蕎麦処・信州に居を移してから、蕎麦を食べる機会が激減した。皮肉な悲劇である。 では、何故そのような悲劇が起きたのか? それは長野県が車社会だからである。車社会とは主たる移動手段が自家用車の社会の事である。 どこに行くにも車で、バスや電車などの公共交通はほぼ利用しない。我が上田市も公共交…
当番ノート 第36期
大学5年生の秋に、サークルの先輩たちと会社を立ち上げました。 メンバーは全員が20代で、先輩方はそれぞれフリーランスの照明家として活躍していました。 それまでもお互いしょっちゅう一緒に仕事をしていて、気心の知れたメンバーでした。 経営とかビジネスとかなにも分かっていませんでしたが、会社を作るにあたって少なくともぼくにはそんなに不安はありませんでした。 それぞれがフリーランスでやっていけてるメンバー…
当番ノート 第36期
photo by rika minoda 2017/4 in tokushima pref.kamiyama-cho 好きとか嫌いとか、相性が合うとか合わないとかそういうことの、その前に、 とにかくキミとは向き合いたくないのよね。 中学1年の後半くらいから、次第に私の方…
当番ノート 第36期
以前の投稿にも書いたように、現在カナダのトロントに滞在している。 渡航してから日本と違うなと感じることは勿論たくさんあるけれど、少し印象に残っていることを今回書こうと思う。 渡航してすぐに語学学校に通い始めてから、半年になる。 考え方の違う人とやり取りするのは骨が折れるけれど、知らない価値観を知るのは基本的には面白い。 人生に対する考え方の違う相手と対話すると、自分の心のどこか深層に…
当番ノート 第36期
香港から2時間でハノイに着く。そこから足を延ばし、高速バスで移動をしてハイフォン近くの村で過ごして来ました。 当初はゆっくり過ごす予定だったけれど、降り立ってこの国の喧噪に混ざったら色々行ってみなくちゃ!と欲求が。沢山歩いています。 毎晩、星空がどこまでも綺麗に広がるヴェトナム沖合の小さな村。 マングローブの木に囲まれた絶えず流れる大きな川を前に、パンチャカルマを受ける。 パンチャカルマを体験する…
当番ノート 第36期
クリスマスが大嫌いだ。 (↑新明解国語辞典) いつから大嫌いなのか、その起源は定かではない。 私史上、最大級の謎と言われている。 これだけの嫌悪感なのだから、私の身の上にきっとすごい事があったのかもしれない。 だから、覚えてないのが恐ろしくもある。 あまりの出来事に精神を自衛するために、 自ら記憶を抹消しているのだろうか。 でも、記憶のフラッシュバックとかは起きない。 親に聞いてみたらわかるのだろ…
長期滞在者
僕はデジタルカメラのあのEVFというやつが、どうにも苦手である(EVF : 電子ビューファインダー = electronic viewfinder)。一眼レフならばカメラ内部のミラーに屈曲されているとはいえ、眼前の光景とタイムラグゼロのものがファインダーで見える。ミラーを介した反射光であっても、それは現実の光景とひとつながりの光である。ところが一眼レフではないデジタルカメラというのは、カメラ背面の…
当番ノート 第36期
高校生の頃に好きだったファンタジー小説に「最後のユニコーン」というのがあります。 いつの間にかユニコーンがいなくなった世界で、たった一人残ったユニコーンが仲間を探して旅をする物語です。 ストーリーはほとんど忘れてしまっています。 だけど、ひとつのフレーズだけは、今でも心に残っています。 「夢見るのではなくて、夢に見られる存在」 それがユニコーンだと。 生きる指針になったとか、人生観が変わったとか、…