長期滞在者
斜面の両端に植わった桜は零れ落ちる寸前で、淡い桃色を鈴が鳴るように震わせていた。 淡く霞んだ海と空の境界線は曖昧で、途切れることなく船が行き来する。 大きなのと、小さなのと、右から、左から。 3艘の船が白い線を引いて交差するのを見つけて、満たされた気持ちになる。 理加さんは、やわらかな地面に種を蒔くみたいにして話す。 この日豊島へ行ったのは、踊る人でありからだのことを考える人でもある濱田陽平さんの…
当番ノート 第38期
1年間 師を持ち絵の修行をした。 その人は、現代美術家の肩書きを持っている人。 私は、今まで誰からも絵を教わった事がないため、好奇心を持ちながら、その人に弟子入りをした。 仕事を辞めて、無職になったのだ。 勿論、弟子入りするまでに色んな事を悩んだ。 当時の私は、子供を対象とする仕事を慣れない環境の中で働いていた。子供は好きだったが上司とうまくいかずストレスを抱える一方だった。絵は好きだったが、絵で…
風景のある図鑑
宇宙背景放射 : cosmic microwave background 宇宙背景放射、宇宙全体から放射されている電波です。 1964年、ペンジアスとウィルソンという二人の科学者が、電波望遠鏡で宇宙を飛んでいる電波を調べました。その時、宇宙のどの方向からも同じ一定の雑音が入ってくることに気がつきました。普通の雑音は、音源からの音が最も大きいものですが、この音は宇宙全体から一定の大きさで聞こえてくる…
当番ノート 第38期
私は、チェコのCeske Budejoviceで出会ったスロバキア人の写真家、Veronika Brunova氏と写真を創作しています。 ルーマニアの黒海、チェコの飛行機の滑走路、チェコのピルセン、ベニス、様々な場所で写真を創作してきました。 写真は踊りと違い、瞬間を切り取り残すものです。そして後で自分で見ることができる。 veronikaの目線ではこんな風に見えているのかといつも私は驚かされます…
当番ノート 第38期
嫉妬してしまうくらい尊敬しているあの子は、気配りの権化のような女の子だ。飲み会のとき、飲み物が少なくなっている人にはすかさずメニューを渡すか、「ビールで良いですか?」と、その人の頼みそうな飲み物を先回って聞く。あまり食べていない子には、食べ物を取り分けて近くに行き、「気使わずにたくさん食べよ!」と一緒に食べてくれる。常に周りの人が楽しくいられるように考えて動いていて、飲み会の幹事やみんなのとりまと…
当番ノート 第38期
マレの表通りを歩いていると、向こうからブロンドの女が歩いてくる。もはや黄金の時代は過ぎたといった風で、紺のスーツで身を包み、軸の短いハイヒールの音を高鳴らせ、急ぎ足でこちらに向かってくる。ふと、一枚のポスターの前で足を止める。仁王立ちで選挙用のポスターの前に立ち、じろりと一瞥をくれると、右手でもってポスターを破り取り、丸めてぐしゃぐしゃにして地面に叩きつけた。さすがのパリジャンたちもこの異様な光景…
Native Language
当番ノート 第38期
2016年の6月に、ペルーへ行って先住民の儀式に参加しました。その経緯を書いてみます。 ・算数の問題 子供のころ、たしか小学校の低学年のころだと思うけれど、知り合いの大人からこんな問題を出された。(もしよかったら、あなたも考えてみてください。) Q. 等間隔に並んだ9つの点を、一筆書きの4本の線で、全て通るにはどうすれば良いか。 私はいろいろと試してみた。どうしても、4本の一筆書きで全ての点を通る…
当番ノート 第38期
はじめまして、金曜日の当番ノートを担当します、さいとうです。 今回の連載では星座とそれにまつわるギリシャ神話のお話をベースに、さまざまな人間模様について少し立ち止まって考えてみようと思っています。 なぜいまさらギリシャ神話か。それは自身の幼少時代の記憶にさかのぼります。 関東とは思えないほど田園風景の広がる地域の生まれなのですが、少ない地元自慢のひとつは満点の星空が見えることでした。天体観測が趣味…
当番ノート 第38期
私の小さい時の夢からの話。 私はいつも絵に囲まれていた。 小学1年生の時、当時大阪の小学校に通っており、その学校も50年という古い歴史をもった学校で生徒が近寄ってはいけないようなところには、お化けが出そうな薄暗い場所に配電盤が置いてあったりした。(幽霊教室)(幽霊階段)などと生徒の間では広まっていた。 私ももう昔の記憶のため、確かな事は伝えられないが本当にあえてお化けが出る雰囲気を作っているかのよ…
当番ノート 第38期
はじめまして。 これからこのアパートメントの滞在でどのような出会いがあり、 自分自身が何を見つけるのか、とても楽しみです。 私は今ルーマニアの黒海沿岸の小さな町にあるバレエ団で踊っています。 今年の3月の初めに1年に1度のガラ公演があり、自分の作品を上演することができました。 どこにいてどこに行くのか それをテーマにコロンビア人の同僚と作品を創作しました。 2人で創る 2人の関係性 自分がそこにど…
長期滞在者
うーむ。 この3月は何やらいろいろ収穫の多い月だった。 ような気がする。 以前、やっと成形が終わってホッとしている、と書いた、 やきもの仕事の本焼成が二月半ばすぎにやっと終わったのだけれど、 その直後にプチ・バーンアウト状態になったのもあり、 3月前半は2週間の休暇を取ることにした。 1月に訪れたフランスのメッスに再び向かい、 今回は坂本龍一x高谷史郎によるライブコンサートを鑑賞し、 その後で、も…