長期滞在者
10月1日から、また入院する。 これまでホルモンの補充療法を続けていた中枢性尿崩症とは、まったく別の難病を発症している疑いがあり、再度一週間の検査入院することになった。1ヶ月前にはこんなことになるなんて想像すらしていなかったけれど、今このタイミングで入院することになってよかったとも思う。正直にいうと、自分の体が少しずつシャットダウンしていっていることには、少し前から気づいていたし、自覚症状はたくさ…
当番ノート 第40期
徳川三代目の将軍である家光期に発令されたとされる慶安御触書(けいあんのおふれがき)には、「百姓は財が余らぬよう、不足しないよう、死なぬよう、生かさぬように」といった農民統制の指針が32か条にわたり記されています。農民の意識を政治へと向けないための、いわゆる愚民政策として発布されたこの触書は、少なからず当時の農民たちの生活に影響を与えたといわれます。そのような規制下でも禁止されている絹製の下着を着用…
当番ノート 第40期
正直に申し上げます。わたくし、お部屋をじょうずに片付けられません。 部屋は人となりを表すと申しますから、誠に遺憾ながら人となりとやらがトッチラカリのシッチャカメッチャカであることは、日々につけ痛感しておるところです。 こんまり先生にお世話になろうとは一度ならず思いました。ときめくか、ときめかざるか、それが問題ですよね。ええ仰ることはわかります。しかしながら生まれてこのかた整ったお部屋で暮らしたため…
当番ノート 第40期
あそび【遊び】 ①遊ぶこと。遊戯。 ②猟や音楽のなぐさみ。 ③遊興。特に、酒色や賭博をいう。 ④あそびめ。うかれめ。遊女。 ⑤仕事や勉強の合い間。 ⑥(文学・芸術の理念として) 人生から遊離した美の世界を求めること。 ⑦気持のゆとり、余裕。 ⑧機械などの部材間・部品間に設ける隙間。 あそ・ぶ【遊ぶ】 日常的な生活から心身を解放し、 別天地に身をゆだねる意。 神事に端を発し、 それに伴う音楽・舞踊…
長期滞在者
ライターという仕事をしているのに、人と話すのが苦手だ。正確に言うと、できないというより、強烈な苦手意識がある。 インタビューなどであらかじめ決められたテーマがあるときはまだいい。でも、お互いに「これからこの話をしますよ」という前提が共有できていないと、途端によそよそしくなってしまう。正直、視線を合わせることもできなくて、目が泳ぎまくっていることさえある。 雑談が苦手なのかもしれない。そうしたコミュ…
当番ノート 第40期
「使えば使うほど味が出る〜○○」なんて、意味がわからなかった。 だって新品のバッグのほうがかわいいし、 「味」ってどのへんのことを言うんだろう、なんて思っていた学生の頃。 そんなわたしがはじめて「使えば使うほど〜」なものを買ったのは、新卒のときだった。 無印の、やさしいキャメルブラウンの色をした革の名刺入れだ。 わたしは当時、本社とは別のオフィスで働いていた。 それもあり、入社してからお客さまにお…
ギャラリー・カラバコ
中秋の名月の昨日、ギャラリーの鍵が届くのを私はなんとはなしに心待ちにしていた。 けれど、届いたのは今日。 満月が中秋の名月とは、限らないのだって。 満月のひかりは特別で、とおくでだれかが歌っているような音がする。 〈前回までの展示〉 『縫い目』 『つむじ』 『鏡』 — 「耳鳴り」 絵: 古林希望 文: カマウチヒデキ ーーーー 共通のタイトルだけを手がかりに2人の作家が絵と小説を別々に制作し、掛け…
当番ノート 第40期
窓を開けると、誰かが洗濯機を回す音が聞こえた。秋の風が涼しげに通り抜けていく。 いく層にも重なった生活音。同じアパートメントに住んではいても、顔も知らない、声も分からない。近くにいながら、全く別な時間を過ごしている。名前も知らない息遣いの中にいる。 初めてこの部屋に来た時、自分じゃない何かになれるつもりでいた。私の思い描く、私を超えた誰か。 いつも笑っていて、楽しいことに溢れていて、悲しいことは吹…
長期滞在者
笑う門には福来たる。 縁あって、1966年から放送されているテレビ番組『笑点』の公開録画にお邪魔させて頂いた。 一緒に行った人たちと後楽園ホールでの収録会場に入っただけで、みんな笑顔。 子供の頃から見たことがあるテレビ番組のセットは見ているだけでわくわくした。 ラジオでDJをしている私にとって、落語を観る時は楽しむことはもちろん、とても勉強になる機会。 声と音だけで想像して楽しんで頂くラジオトーク…
当番ノート 第40期
未来へ向けた「土台」として笠原地区における民俗芸能を提示し、今年度の奥八女芸農学校は終わりました。民俗芸能と芸術とを行き来することで日常を見つめるに、手応えを得られた仕事となりました。仕事によって今後の指針が得られることは喜びです。今回コーディネートを担っていただいた山村塾や九州大学ソーシャルアートラボの方々、そしてロシアと香港からのクリエーションメンバーにも恵まれました。ありがたい話です。 たと…
当番ノート 第40期
横浜美術館で「モネ、それからの100年」展を見た。 モネさんのこと老若男女大大大好きなの、すごくよくわかる。 前に赤瀬川原平が「描きたい気持ち」をふさふさした犬コロにたとえた話をしましたが、モネさんはまさにこの犬コロを心ゆくまで可愛がって、毎日その子の成長の記録をうれしそうに絵画に刻んでいる感じ。 歳をとるにつれだんだん目が見えなくなって怖くなって、でも犬コロは相変わらず度を超えたカワイさで仕方が…
当番ノート 第40期
はや・さ【早さ・速さ】 ①動きがはやいこと。またその度合い。 ②時刻・時期が早いこと。 テンポ【tempo】 (時間の意) ①楽曲が演奏される速度。 ②速さ。速度。 -『広辞苑 第七版』より抜粋 - 幼い頃の私はお風呂に入ることが苦手だった。 ご飯を食べた後はそのまま横になって 意識の底へと沈んでいくほうが私には心地よくて、 早くお風呂に入るようにと何度言われても どうしてもお風呂に向かう気にはな…