当番ノート 第47期
先週、白川通のちょっと裏にある雑貨屋さんに立ち寄ってみた。明るい座敷に仔猫がいて、猫好きな私は思わずお店の方に声をかけた。 ケージから出たそうにしてニャーニャー鳴いている。 何か月ですか、と聞いてみたら、「生後4か月で、引き取って来て3週間なんです」と教えてくれた。 そしたら急に涙が溢れてきてしまった。自分で驚いて、とっさに息を詰めて涙を堪えた。 すごい元気そうな仔猫だし、とても大切にされているこ…
Mais ou Menos
Pちゃん 気がつけば、もう10月。2019年も、もうあと2ヶ月ちょっとか…。冷静になると、時間のはやさに腰を抜かしそうになる。 10月に入って、Pの心身の体調が乱れてきたのが心配です。冬が苦手だから、仕方ないとは思いつつ、つらそうにしているのを見ていると、心が張り裂けそうになります。でも、つらいなりに、生活リズムを整えるために、いろいろ考えて対策していることを知って、すこし安心した。苦手な季節って…
当番ノート 第47期
月末の金曜日なんて、いつもなら月次決算に向けたデータの整理やらで残業待ったナシなのに、あの日は経理部全員が16時に退社させられた。プレミアムフライデーというやつが初めて実施された日だった。課長は終日「後でしわ寄せくるだけなんだけどなあ」とぼやいていた。 大手町から丸の内線に乗り込み、20分ほど揺られ、地上に出た。まだ薄っすらと明るい夕方の新宿は、浮足立った会社員たちで賑わっていた。居酒屋やバル…
当番ノート 第47期
以前から、わたしは「モールス信号」というものが気になっていた。 元来は可変長符号化された文字コード。単音だけ、あるいは光の明滅のみで言葉を伝える手段。SOSを伝えるために使われたりもするという、言葉の形を持たない言葉。 日本の平成の時代に生まれたわたしには、これまで一度もモールス信号との接点はない。けれど、その普遍性のようなものにひどく心惹かれる自分がいた。 国を超えて、時を超えて、その単調な調で…
それをエンジェルと呼んだ、彼女たち。
今まで知らなかった国に友だちができた途端、そこは自分にとって「友だちが暮らす場所」になる。その変化が自分のなかで起こる度に世界中にいろんな国があって、いろんな文化があって、違いがあることや共通点が見つかることは素晴らしいことだと感じる。 同時にニュースで聞き流していた悲惨さが現実であることも、また全くニュースとは異なることも知ることになる。知ることは素敵なことばかりではないけれど、それでも友達が暮…
当番ノート 第47期
外は、大雨だ。おまけに雷も鳴っている。 大きく息を吸い込むとき、気管支が詰まったように、ひゅー、という音が聞こえることがある。 ごくわずかに喘息を持っているのだけど、それとは別に、息苦しさを感じるときがある。 何年も前のこと、僕はこの世界が灰色に見えていた。 ようやく色が着き始めて、彩色が薄ぼんやりと見えるようになってきた。 息も出来ないほど苦しかった灰色の世界は、何回息を吸っても上手く酸素を取り…
長期滞在者
絹江ちゃんについて話そう。 絹江ちゃんはいわゆる大手企業で働くバリキャリウーマン。仕事ができるだけではなく、話すと独特の目線で愛のムチを叩いたり、誰も想像できないような鋭い切り返しをしたり。しみじみ、この家に住まなかったら出会わなかったタイプの女性だろうな、と思う。 彼女とは25歳の頃から数えて約7年(!!)も住んでいたわけで、よく恋愛の相談に乗ってもらっていた。25歳からの恋愛といえば、もう10…
Do farmers in the dark
表題:逆さ吊りになった友人と話す居心地の悪さよ。どうにか正位置に戻してあげたいけど、私には無理だ。私も、後ろになんかゴツいものがあって、それが後頭部にいつ叩き込まれるか心配なので。 こんばんは!今回は、前に途中になってた漫画を描こうと思ったのですが、脳が諦めてしまい描くことが出来ず、4コマみたいな漫画だったら描けるかなと思いまして、精一杯やれるだけ描いたのですが酷いありさまでした。そ…
当番ノート 第47期
大学3年生になる前の春休み、私は運命の出会いをした。 同じサークルのF田に誘われて、先輩と3人で鍋パーティーをした。みんなの噂では最近失恋をしたばかりらしい、いっつもpaul smithを着て、赤いFITを乗り回している、車椅子の、石井誠という先輩。それから、頻繁に何度か遊んだりまた鍋をしたりして、大した駆け引きもなく、とても自然に私と石井誠は一緒に暮らすことになった。私にとっては初めてのお付き合…
当番ノート 第47期
とびっきりのお洒落をして 開始5分後 闇に紛れる この回だけは いつも人が入らない まばらに埋まる席 誰もワタシを気に留めない 大好きな曲と 憧れの女優 大胆不敵な 恋の駆け引き モノクロでも 色めく世界 2時間だけの 逃避行 仕事もきらいじゃない 家庭もきらいじゃない それはウソじゃない できればウソは つきたくない エンドロールの5分前 ワタシはそっと 席を立つ 魔法は解けてしまう前に…
お直しカフェ
上京して大学生活を送っていた2000年代、東京はカフェブームだった。オーナーの趣味がライトに凝縮された空間。壁にかかる額装された海外のポスター、ちょっとこだわりの椅子(イームズチェア)、ふわふわのカフェラテ、ふわふわトロトロのオムライス。三角のサンドイッチを出すのが喫茶店で、バケットに挟んだサラミサンドを出すのがカフェ。私のダイスキなカフェ。そういう会話を友人達と大真面目にした記憶がある。19、2…
当番ノート 第47期
2019年10月。今日から、アパートメントで連載をさせていただくことになった。 「何ができるだろう」と考えたとき、 自由に過ごせるこの場所だからこそ、「言葉の拡張」をしてみようかな、と思った。 月曜日の夜。きっとみんなくたくたで、ちょっとの安堵と一緒に帰路についているだろう。 うつくしいものや、おかしいものを見て、感じて、ときには考えて、 ほんの少しだけ、明日からの活力にしてもらえるようなものにな…