1・
これはあるふゆのよるのおはなしです。
「今日はゆきがおりてくるよ、さぁ山のてっぺんにうたごえをききにおいで。わたしがみちをてらしてあげよう。」
ほしはもりにすむ、みつごのこびとのいえのまどをあけてきらきらとまたたきました。
みんな飛び上がってよろこんで、じゅんびをはじめます。
だってこのよるをずうっと待っていたのですから。
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2・
さんにんがとびだしてきましたよ。
せんとうはしっかりもののひとつむすびさん、
ふたつむすびさんとみっつむすびさんはもうまちきれずにおしゃべりがとまりません。
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3・
「ああもう、ほんとうにあのうたごえったらもう…!
あたしおはなばたけのなかできく、たいようのこもりうたより好きかもしれないわ!たぶん!」
みっつむすびさんのこえが林にこだましてさかなもびっくり。
ひとつむすびさんはあきれがおです。
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4・
ふくろう氏も、さんにんがころがりおちないようにみまもっていますよ。
ほう、ほう。
やまのてっぺんまであとすこしです。
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5・
やまのてっぺんにつきました。
さんにんがみあげたとき、ちょうどそらのとおくがゆれはじめました。
するとひとつむすびさんは切り株の上に、ふたつむすびさんは丸太の上にひょいっとのぼります。
みっつむすびさんはそのままぺたんとすわって「くる!ゆきのこたちがくるよ!」ともうむちゅうです。
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6・
ゆきのこたちはつぎつぎと、みぎへひだりへゆらゆらとダンスをしながらまいおりてきます。
ちいさなちいさなこえでもりのくうきをふるわせて、ゆきのこたちの合唱がかさなって、もりじゅうにひろがっていきます。
さんにんのからだのなかにも、うたごえがじわじわりとしみこんではきえて、しみこんではきえていきます。
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7・
さんにんはもうすっかりゆきのうたごえにつつまれました。
ゆきのこのうたごえはふしぎ。
ここはどこかしら。わたしはなんだったかしら。
もうこのうたごえのなかのせかいにずうっとただよってうかんでいたいわ、
みんなそんなきぶんになってしまうのです。
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つづく