ゆきのうたごえ 前篇はこちら
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8・
ゆきのこたちのうたごえにとりつかれたみっつむすびさんは
ゆきのなかにすっかりうまってしまっていました。
「しっかり!」「だいじょうぶ!?」きづいたひとつむむすびさんとふたつむすびさんが
みっつむすびさんをゆきからひっこぬきます。
ゆきのうたごえはうつくしいけれどとらわれてしまうとたいへん。
ゆきのこたちにつつまれてべつのせかいにつれていかれることもあるのです。
さんにんはそろそろかえることにしました。
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9・
かえるまえに、さんにんはゆきのこをつかまえて
そしてだいじにりょうてでつつみこみます。
ゆきのこのうごきにあわせて、
みっつむすびさんはみぎへ、ひだりへ、ゆらりゆらり。
いっしょにダンスをおどっているみたいね。
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10・
つぶしてしまわないように、おとさないようにきをつけながら
まっしろになったみちをさんにんはくだっていきます。
「ぴょんぴょんはねたらあぶないよ、
わたしのようにこきざみにしっかりとあしをじめんにつけて」
ははぺんぎんのちゅうこくも、
みっつむすびさんだけはどこふくかぜ。
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11・
いえについたさんにんがそおっとりょうてをひらいてみると…
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12・
「わあ! きれい!」
「かたちがみんなちがうね!」
てのひらからつたわった、それぞれのこびとたちのこころとまじりあうことで、
ゆきのこはとてもうつくしいけっしょうにかわっていました。
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13・
さぁ、おちゃのじゅんびをいたしましょう。
さんにんは、うつわのなかにゆきのけっしょうをそおっとうかべます。
するとけっしょうは、いろをつぎつぎとかえながら
くるくるとまわり、はじけて、
とけていきます。
それはまるで、にじのなかでながれぼしをみているようです。
こびとたちはそのようすをひとしきりたのしみました。
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14・
そしてひとくちごくり。
ふたくちごくりごくり。
すると、きいたことのないうたが
からだのなかをかけめぐりはじめます。
なんてここちのよいしらべ。
それはゆきのこと、ひとりひとりのこころがとけあってできた、
ひみつのうたでした。
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15・
そのよふけ、みっつむすびさんは
こんばんのできごとをおつきさまにはなしてきかせてあげました。
(おほしさまはずうっとみていたのだから、ほんとうはぜんぶしっているのにね。)
おほしさまがいいました。
「ゆきのうたごえはね、
はるになって、ゆきがきえてしまったら、みんなわすれてしまうんだよ。
きおくのかたすみにものこらないのさ。」
「わたしはわすれない。ぜったいに!」
「あんなにうつくしてしあわせなうたがきえてしまうわけがないもの!」
ゆきのことまじりあってできたひみつのうたを、
みっつむすびさんはなんどもなんどもおほしさまにうたってきかせました。
そして、おほしさまは
そのうたごえにあわせてしずかにまたたきつづけるのでした。
おしまい
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来週は「あかずきん」のおはなしです。
あかずきんといってもみんながしっているあかずきんとはちょっぴり違う、
海のなかのあかずきんのおはなし。
古林
希望