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2F/当番ノート

③毎日せっせと芸みがき

当番ノート 第11期

僕は仕事に対して、ひとつの考えがあります。

それは、宿の「経営」をしているのではなく「芸」として捉えているということです。もちろん宿の責任者でもあり経営者ですが、経営という言葉が、あまりしっくりこないし大事なんだろうけど経営力より、芸力。宿業ではなく、宿芸としてホトリニテを磨き上げてゆきたいのです。

訪れた人が気持ち良くすごして頂ける事が大前提の上にある、芸。

前回に書いた「宿にこそ、冗談を」を目指していく長い長い道のりですが、自分自身に言い聞かせていて大切にしている事があります。それは「お掃除」です。基本中の基本である清掃。つくづくあらゆるものは基本の上になりたつんだなぁと、掃除をしながら考えない日はありません。全部とは言いませんが、今まで世の中を変えてきたものは、すべて「基本(常識)」から型破られたものなんじゃないか、と思うようになりました。

宿でやる事の一番好きなものが掃除なのですが(昔は一番、嫌いでした)ここ最近、発見したことがあります。毎日ハタキをかける、床・窓を拭く、ほうきで掃く、掃除機をかける、便器・洗面台をみがく、物を整える。日々の仕事は同じことの繰り返しなのですが繰り返し・繰り返しやってゆくと、どうなるか。それは、すぐに「違いがわかること」になったということです。ゴミが落ちている、など。意識して見つけるのではなく体がすぐにわかるようになっている、といった感じです。

また、繰り返し繰り返し「掃除をする」という事を、体でそのリズムを覚えてくると、どうしてもしなくては気がおさまらないという『性分』になっていくように思います。

「する」んではなく、この「どうしてもしなくてはならない」が芸の核をなすんじゃないかと、にらんでいます。
正直、疲れきっていて、もう いいやっ!という時もありますが でも、やらないと気がおさまらない。性分の魔力はおそろしいですね。繰り返し繰り返し同じ事をする、数をこなす。そして洗練された性分ができあがってゆく。ここにしか、目指すべき答えがないかなと。

こんな事言ってますが、ただ繰り返せばいいってものでもなかった経験をしました。集中していない繰り返しはよくないのだと、思い知ったドライヤー事件をどうぞ。

~そこは極寒の地となった!コウテイペンギンと私の巻~
○月×日/気温22度くらい?(適温) くもり。  

ある日 普段どおり お客さんを案内しました。
【N=僕 O=男性のお客さん】

N「ここには、共用で使用する冷蔵庫があって、トイレはここです。お風呂はあちらです」
O「はい、わかりました」
N「ここに給仕場があります、水やお湯はこちらからとってください」

というふうに、案内は続き。
お部屋へ・・・

N「はい、こちらに布団などが入っております。鍵はこれで、電気はここです」
O「はい、うん、わかりました。」

N「それで、あとは、ドライヤーはここで、」

ちーーん・・・

その時、あたりが極寒の地になった気分でありました。(コウテイペンギンが目を細めて遠くから、僕を見ていました。)

その方・・髪の毛が、「ほぼ」ないお客さんだったのです。

僕は内心、自分にツッコミマシタ。
「なんでやねんっ!髪ないのに、ドライヤー、、なんに使うん!?(関西弁で)」

その場の空気を察してくれたか知らず、お客さんは、すかさず
「あぁーー、汗かいた服、乾かすのにねー!」(お客さん、優しかったなー涙)
と言ってくれました。しかも、汗なんかも、かかなそうなくらいの気温でした。(僕は、冷や汗はかきましたが)

リピーターのお客さんに、3回目ですよね事件(前回の記事)と同じく、いい人だったので、そのドライヤー事件のお客さんも、今でも、たまに来てくださいます。
僕は集中しないで、ただ毎日言っていた同じ事を、考えもせず無意識のうちに言っていたんだなと反省しました。 
このドライヤー事件以降、僕は、さらにお客さん一人ひとりに集中するようになりました。

もう、コウテイペンギンが出てこないようにしなければ、なりません。修行は続くっ!

高村 直喜

高村 直喜

富士山に一番近い湖、山中湖の湖畔でホトリニテという名の宿をやっております。好きな食べ物はイチゴ。心躍らされるもの、縄文土器。  写真は宿のゆるキャラ「ホトリちゃん」です。(富士を、かぶるバージョン)

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