こんにちは。YORIKOと申します。
ご縁あってこのアパートメントで、二ヶ月間滞在させてもらえることになりました。
うれしいなあと思う反面、素敵な文章もかけない私は はてどうやってここから発信していくべきかしら、
とそわそわ考えること数週間。
背伸びをしてもしょうがないので、読んでくれる(かもしれない)誰か(あなた)に向けて、自分のつくっているものを元にお便りをかかせてもらうことにします。
その内容をご説明するために、ちょろりと自己紹介をさせてくださいね。
1987年生まれ、好きな食べ物はすいかです。
私は東京にある桑沢デザイン研究所という専門学校を卒業した後すこしデザインの仕事をし、イギリスに渡りました。そこでロンドン芸術大学、セントラルセントマーチンズという学校に入って三年間を過ごし、今年の9月に帰国しました。
専門分野はグラフィックデザインなのですが在英中はずっと、公共の場に変なものを出現させて人々に関わってもらう、参加型のプロジェクトづくりに没頭していました。そんなことをしていたら、この「みんなでつくる」ということがとんでもなく好きになってしまいました。今後はグラフィックのお仕事をする一方で、コミュニケーション作家という肩書きで、あちらこちらでアーティスト・イン・レジデンスのプログラム:一定期間その地域に滞在しながら町の人々とものづくりをする、コミュニティアートの活動をしていきたいなあと考えています。
(つくっているものの説明ができるかしらと思って書いたもの、全然よくわかりませんね。)
要するに、生活と人が好きで、その中のうれしい瞬間を形にしたいなあと思っています。
要するに、お祭り起こし隊です。
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さて私はこのアパートメントさんからの私信で、毎回ひとつのプロジェクトが完成した「その日」、
つまり町に出て人と出会い形になる時のことを、写真とちょっとの文でまとめさせてもらおうと考えています。
日曜日の担当ということもうれしいです。
読んでくれる(かもしれない)誰か(あなた)がまた明日からの一週間をちょっとポジティブに感じながら、
お布団に入れたら幸せだなあと思います。
ではでは、第一回目をどうぞ。
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「The wonderland called everyday life:日常という名のワンダーランド」
拝啓、
お元気ですか。
すっかり寒くなってきましたが、風邪などひいていませんか。
寒いと家の中にこもりたくなっちゃうけれど、
やっぱり外に出たほうが、楽しいことが多いなあと思ったある日のことをかきます。
よく晴れた日でした。
家を出ていつもの道を歩いていると、
先にひとつの小さなゲートが立っていることに気付きました。
手前には「どうぞおくぐりください」と書かれたサインと、その奥にもう一つ小さな看板が置かれています。
「『日常』とも呼ばれるスペシャルな遊園地へようこそ。
あなたは今、喜びや驚きで満ちた、ワンダーランドの中にいます。楽しんでね!」
学校へ行く途中に通りがかりゲートをくぐってくれた、美術学生の女の子。
これから配達に行くところの、ノルウェー人のサーモン屋さんのお兄さん。ばっちりポージング。
この近所に住んでいるらしいおじいちゃん。「よくわからん」といいつつかなり長居してくれました。
6匹も犬を飼っている、ブリーダーのお姉さん。全てのわんちゃんをゲートにくぐらせてくれました。
「友達とごはんを食べたりピクニックをするだけで休日は最高、遊園地なんて必要ないよ!」と言うベルギーの女の子。
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ロンドンではしょっちゅう色々な場所に移動式の遊園地がやってきて、人々がちょっとした非日常の世界を楽しみます。
ゲートをくぐるとその先は夢の国というこの境界線は面白いものだなあと思う反面、
いつもの毎日というものがすでに、奇想天外、わくわくで満ちたアミューズメントパークだよなあと感じました。
というわけでその、「日常」という名のワンダーランドへのゲートを作ってみて町に出動、
道行く人がくぐってくれるか試してみました。
さすがは変なものへの警戒心が低いロンドンピーポーのみなさん、
「これはなに?」「日常っていう遊園地のゲートです」「あらそう!」と、あっさりくぐってくれる人の多いこと。
調子にのってゲートをバスに乗せ市街地に繰り出し、
たくさんの人をくぐらせたゲートは最後、長距離移動でぺしゃんこになりました。
冬の寒い日でしたが、町には春一番が吹いたとか、吹かなかったとか。
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そんなわけでわたしからの私信第一段はこれにて終了。
明日からもまた、ワンダーランドでの日々をめいっぱい楽しんでくださいね。
またお便りをかきます。
ツヅク!