6月26日。
3か月ぶりに、長時間のグラフィックをしてきました。
人の持つ可能生が広がる瞬間を伝えていくメディアであるsoar(http://soar-world.com)。
そのsoarを支える人々のために開かれたspecial thanks eventでかいてきました。
この4月から、拠点も、時間の使い方も、変わったのでなかなかファシグラだけに時間を使えることは少なくなって、ちょっと寂しくもありました。久しぶりに長時間かくということは、嬉しくもありスキル的には鈍ってないかなとそわそわしていました。
ただ、実際に描いてみると、これまでにファシグラの中で自分が大切にしてきたこと、それらを味わいながら今の自分にできるベストな形でアウトプットできたと感じています。
そこで、今回からの2回の記事は、soarでかいている時に感じたことを元に、僕自身がファシグラの中でどんなことを大切にしてどんな風に描いているのかを言葉にしていきたいなと思います。
少し、説明が多くなってしまうかもしれませんがよろしければお付き合いください。
唐突ですが、ファシグラをしている人は場に立つ時、何を行っていると思いますか?
大まかには4つに分けられます。
場が始まる前は、事前の準備
場が始まってからは、きく→あむ→かく
グラフィックを行うファシリテーターは、場が始まるまでに自分にできる準備をし、場が始まってからはきく・あむ・かくからなる一連の流れを場が終わるまで続けています。
今回の回では、その中でも事前の準備ときくの2つについてその概略を説明していこうと思います。
まずは事前の準備から。
イベントや会議を開催する際、自分自身が主催者の時とそうでない時があります。
自分自身が主催者ならば、自分たちの想いで会場を満たすことも、参加した人一人一人が話しやすく、対話が生まれようにすることもプログラムや空間のデザインを考えることから始められるので想定をしやすいです。
一方、主催者ではなく、グラフィックのみを行う場合は自分たちの想いを場に反映することは難しいので、少しやることが違います。しかし、共通するのは、参加された人の考えや想いの部分に寄り添うということ。
では、プログラムやデザインを設計せずにどのように寄り添うのか。少し書いてみようと思います。
僕が、会場について最初に行うことは主催者の方との打ち合わせです。場の主催者やファシリテーター、ゲスト、講師の方に挨拶をし、会の目的・経緯・大切にしたい価値観を確認します。できれば、主催者の人達が会を作る中で生まれてきた具体的なストーリーをききます。そうすると、自分の中にもこの場で何を大切にしたいのかが少しづつ生まれて、その人たちの想いに少しでも貢献したい・応援したいと思うようになっていきます。
今回soarのイベントでも、まず行ったことは、この打ち合わせです。会場の準備の時間もあったので少し短めに行う必要がありました。
こういう場合は、僕は必ずその団体のロゴの意味や生まれた背景についてきくことにしています。ロゴには団体の想い、価値観が濃縮されていて、多くの場合は関わっている人の愛で包まれているものなのでここのストーリーは、絶対にはずせません。
soarの場合、ロゴは水色を基調とした羽のマークです。soarとは飛び立つという意味であり、人の可能性が大空に飛びたつという意味を持っているということを打ち合わせの中でききました。
だから、この時点で、僕の中では、レイアウト全体に空と飛び立つ鳥を入れたいという想いが生まれてきました。無理のない範囲でどこかに入れることができれば、ロゴに詰まっている価値観で模造紙をいっぱいにできるなと感じていました。
また、かき方はファシグラを主催者の方がどのように活用したいかによって変わってきます。そのため、打ち合わせの時に、最後に参加者の方が見るためのものなのか、それとももっとファシグラに参加者の人が書き込んだりして使うものなのかなど使用の意図をはっきりさせておくことが大切です。
それが終わると次は、自分にも参加者の人にも、かきやすく、見やすい環境をととのえることになります。模造紙はできるだけ参加者全員から見える場所で、かつ邪魔にならないところに貼ります。議論を可視化し深めることが目的の場合は模造紙を参加者の正面に、ふりかえりなどに使用する場合は、側面などでも構いません。
今回は、ふりかえり用だったので壁の側面に貼ることにしました。貼る模造紙の量は、目安として話す時間20分で1枚です。このくらいだと、程よく余白もあまり視認性の高いレイアウトになります。人によって違いがあると思うので、あくまで最初の目安と考えてください。あとは、イベントの時間(分)を÷20して+1〜2枚ほど余裕を持って貼っておきます。
今回は、3時間のファシグラだったので、10枚貼っておきました。実際に使用したのは7枚。大切なことがかけなくならないように貼っておければ大丈夫です。
ここまで、できれば、いよいよグラフィックが始まります。
グラフィックはまず、きくことから始まります。
実は、一連流れの中で一番難しく、一番大切なのがこのきくという部分です。グラフィックというと構造化して分かりやすくかくということがクローズアップされることが多いですが、かくことは練習をすれば短期間で上手くなります。しかし、このきくということだけは、日々意識をして積み重ねていかないとなかなかその人の伝えたいことに触れることはできません。僕も、これまでやってきて毎回苦労するところですし、正解がないので常に意識して訓練をし続ける必要があります。最も難しく、最も成長がゆっくりな部分。でも、寄り添うためには絶対に譲れないところです。
きくの中でも幾つかの種類があります。
1つ目は、聞く。
必要な情報を聞き取ることです。まずはその会の目的を明確な基準に設定して、その目的に沿う重要なキーワードを正確に聞きとります。重要なキーワードは何度か繰り返されることが多いので、焦らず話のまとまりを聞いて、何がこの会の目的なのか、そして参加者の想いにそうキーワードなのかを聞いていきます。主に発言の中で小見出し(タイトル)にできるような事が重要なキーワードである可能性が高いです。
キーワードを聞き取れるようになったらキーワードの前後の言葉を聞いて短い文章として要約をして書きだします。要約をする際は、なるべく発言した人のそのままの言葉を書くことを意識しています。発言者の言葉をそのまま使用する効果は2つあります。
1つは、場の記録という面で正確性が上がることです。使われてない言葉で書いてしまうと違うニュアンスが含まれてしまうときがあります。もう1つの効果は、発言者に安心感を与えることです。そのまま書くことで発言者は受け止めてもらえたという安心感を得ることができます。安心、安全の場を作る事で、参加者は発言や、自己開示がしやすくなります。
2つ目は、聴く。
相手の話を聞き、それらの価値判断を行わずに聴くことを指します。自分の中に湧き上がってくる感情や判断を脇に置き、相手の話を全身で受けることを意識しています。もう少し具体的に言うと、考えていることをなるべくやめる努力をするということです。
普段の会話を思い出してみてください。意外と「この人の話つまんない(判断)」「その話しってる(断定)」「お腹すいた(無関係)」などいろいろなことを考えながら聞いていませんか。これらは、自分の内側に生まれてくるサイレントな声です。しかし、聴く時はこれらを少し脇に置くことが聴くための入口です。
そのためのコツとしては、話を判断せず、好奇心を持ってきくことが大切になってきます。
また、自分の中で、内なる無言の声が生まれたという瞬間を認識できるようになると、それらを手放すきっかけになり話に集中できます。
それと、聴くことは待つことだと言えるかもしれません。時に人は、感情が思考より優先し、論理的な話し方にはならない時があります。(というよりも意外と論理的でないことの方が多いかもしれません)そのような時、キーワードを聞き取ろうとすることも大切ですが、それよりも話のまとまりの中でその人が本当に伝えたいこと(価値観・主考)を押さえる事が大切です。これは共感に通じると思います。
聴いているということは、共感しているということにつながり、最終的にはその人の存在を承認していることに帰結します。この部分に力を注ぐことで、参加者を大切にし、その人の主体性が発揮される場を作ることにつながります。どうしても内容に共感できない場合は、その人の気持ちにフォーカスすることでその人を受け止めましょう。
3つ目は、訊く。
質問をするということ。発言者に対して、質問をしてはいけないということはありません。かいている人の理解が難しい時、それは、参加者も理解が難しい時です。
考えられる理由としては3つあります。
①発言者と周りの人との間に知識の格差が存在していること
→全員に分かるように既有知識の穴を埋めていくことが必要です。それは発言者に訊く事で埋める事ができます。
②主語や述語が欠落していること
→かく際に主語や述語を盛り込むことでフォローできます
③論理性に欠けている場合
→この時こそ、発言者の意図をじっくり聴くチャンスです。僕は焦らずに、本当に伝えたいことを聴いたり、訊いたりしています。
これらは大切ですが、参加者にとって考える時間や感じる時間(沈黙)が必要だと判断した時は質問せずに参加者に変化が訪れるまで待つことも大切です。
以上がきくのざっくりとした説明になります。
今回は事前の準備ときくことについて書きました。
次回は、あむ・かくの2つについて書いていこうと思います。