新型コロナウイルスの影響を受けてヨルダンから日本に一時帰国しているが、ヨルダンの職場の同僚や友人とは頻繁に連絡を取り合っている。ヨルダンでの新型コロナウイルスの情報はインターネットで拾っているが、現地の人からのリアルの声が実態を把握する上で貴重な情報源となっている。ヨルダンでも日本のニュースは時々流れるようで、「ラミの家族は大丈夫か」、「外には出ないで、家でアラビア語の勉強でもしてろ」と、温かいメッセージを送ってくれる人もいる。
国民のおよそ9割をイスラム教徒が占めるヨルダンでは4月23日からラマダン月に入った。ラマダン月の開始は日本でいうところの年越しに相当し、毎年大盛り上がりするようだ。同僚いわく今年は新型コロナウイルスの影響を受け、例年のように大勢で集まることはできなかったようだ。
ラマダン月が始まってからしばらくして同僚と電話をする機会があった。イスラム教徒はラマダン期間中、日の出から日没まで飲食が禁止されるので、さぞかしストレスが溜まっているかと思ったが、電話越しの彼の声は元気そうだった。
その元気そうな声で、
「ラミ、ヨルダンからコロナはもう無くなったぞ!」
と言い放った。
無くなったわけが無いのだが、彼の発言の背景は想像できる。
以下に示したのは5月8日までのヨルダン国内における新型コロナウイルスの日別の感染報告数だ。
4月10日以降、ヨルダンでの新型コロナウイルスの感染者は一日あたり10人以下に抑えられていた。また4月29日から5月6日までの期間でカウントされた人はすべて国境で確認されたものであり、国内からの新規の感染者は出ていなかった。
感染者の累計の推移は以下の通り。
ヨルダンでは3月17日に国境を封鎖、3月21日には国内在住者を対象に外出禁止令を発令した。日本のような外出自粛要請とは違い、ヨルダンでは外出禁止令に違反すれば警察に捕まる。
「感染した人より逮捕された人の方がたくさんいるんだけど」とヨルダンの友人は漏らしていた。実際に、外出禁止令が発令されてから2日間で500人以上が逮捕されている。
これらの対策の効果があったのか、日別の感染報告数は3月26日をピークに減少に転じた。これを受けヨルダン政府は大型食料品店や公共交通機関の操業を一部許可するなど、徐々に規制の緩和に乗り出していた。
同僚の言う通りヨルダンでの新型コロナウイルスがこのまま終息に向かってほしいと思っていた矢先、5月7日に11人、5月8日に24人の新規感染者が報告された。
「すぐにまた落ち着く」と同僚は言っていたが、「待て待て、油断するな」と彼に伝えた。