こちらの花、「桜かな?」と思うかもしれないが、これは「アーモンド」の花である。ナッツのアーモンドを想像する人が多いだろうが、植物としては春に花を咲かす落葉樹である。実が成るのは夏から秋にかけて。ちなみにアラビア語では”لوز (Lauz)”と言う。
ヨルダンでは首都アンマン、北部の街イルビッド、南部のダーナ自然保護区などで見ることができる。この写真は今年の2月にアンマンの北部で撮影したもの。咲き始めで満開では無かったのだが、日本の桜を思い出して懐かしい気持ちになった。
粛々とアーモンドの花の写真を撮る私が滑稽に見えたのか、「そんなにアーモンドの花が好きなのか」と同僚が聞いてきた。「日本人はみんなこの花を好きになると思うよ」と言ったところ、「国民の好みを一括りにするのは良くないよ」と。普段は冗談ばかり言う同僚だが、ときどき極めて全うなことを呟く。
新型コロナウイルスの影響を受け、今年の春先から日本に一時帰国している。帰国後にお花見シーズンが到来したのだが、緊急事態宣言が発令されているなか、今年は諦めざるをえなかった。悲しいかな、今年はヨルダンのアーモンドが私にとって最初で最後のお花見となったわけだ。
ちょうど今から1年前の2019年の春、私は青年海外協力隊になるため、福島県二本松市にあるJICAの施設で訓練を受けていた。ゴールデンウイークという名の大型連休もなく、粛々とアラビア語の習得に取り組んでいた。訓練が始まったのは4月末、敷地内に桜が咲いていたのを覚えている。
桜は文字通りバラ科サクラ属に分類される植物だが、実はアーモンドもバラ科サクラ属で、言ってしまえば桜の親戚にあたる。
日本でアーモンドの花を直接見たことは無く、逆にヨルダンで桜の花を見ることもなかったが、春の到来を私に感じさせてくれる点においては、どうやらどちらでも良かったらしい。お花見に対する私のこだわりはその程度のものだったようだ。
今の状況を眺めるに、どうやら次の春まではいつもより長くかかりそうだ。
来年のお花見は桜になるか、アーモンドになるか。