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2F/当番ノート

装うこと。

当番ノート 第54期

ユニクロを着ることが多くなった。というより、365日全身ユニクロの気がする。

夏はUネックの半袖 T シャツ、冬はタートル、いよいよ寒くなればラムやカシミヤのニット。春と秋はコットンニットやリネンシャツ。ボトムはデニムを数本はきまわす。ってまさか3行で説明できてしまうとは。

なんでユニクロばっかりになったのかというと、それは気負わなくてすむから。価格も手頃だし、なによりあの、つるん、としたデザイン。装飾がほとんどないミニマルなデザインは、なにも考えずに着ることができる。ただでさえ仕事やら将来のことで頭がいっぱいだから、毎朝(もしくは前の日の晩)なにをどう着ようかとコーディネートに悩むのが、億劫になってしまった。そこへきてユニクロはシンプルで無味無臭だからコーデを考える必要がない。

でも、それと矛盾するように、本屋さんに行けば必ず『VOGUE』や『ELLE』や『ハーパース・バザー』を漁り、これは!と思えば買いさえする。ブランドの最新コレクション、セレブたちが着こなすオートクチュール。それらの繊細な刺繍や大胆なカッティング、縫い付けられた鳥の羽や散りばめられたスパンコール、薄く透けるオーガンジーの重なり、意表を突く色使い……。そんなものを眺めていると心は踊る。 Instagram でも、気づけばやたらファッションアカウントをフォローしている。

結局、洋服を着ること、「装うこと」への興味は尽きていない。

でも、毎日のコーディネートを考える気力はもう、ない。

堂々巡り。

だから、この連載で「装うこと」と向き合ってみたいと思う。「装うこと」は、なにが好きで、今どんな気分なのか、自分に問いかけることなんじゃないのかなと思っている。つまりユニクロが良い悪いではなく、いま私は自分と向き合うことをやめてしまっている。なにが好きで、いまどんな気分なのか。自分を見つめるために、これから「装うこと」を考えてみたい。

よければ、お付き合いいただければです。そして、記事を考えているなかターメリック色のネイルを、衝動買いしてしまった。

上峰子

上峰子

心象と印象。
twitterも、もしよろしければ。

Reviewed by
雁屋優

ユニクロばかり着ているけれど、ファッション誌やInstagramを眺めていると楽しいという状況に矛盾を感じつつ、装うこと、ひいては自分に向き合おうとしている上さん。

書き出しから既にファッションに興味あるのが伝わってくる。何故って、私、今回Google先生に「オートクチュールって何ですか」「ラムってお肉じゃないんですか」と聞きまくった。言葉というのは、その手触りをちゃんと知っていないと使えない。これはどの分野でも同じこと。

そんな私でも装うことに興味ゼロではない。ただそのためにあれこれ考えるのが面倒で、魔法のように誰かが「あなたにはこれが似合う!」って言ってくれたらなあと思っている。

装うことから人間は逃れられない、のかもしれない。装い続けて、生き抜いていく。でも時たま疲れる。そんなときに、立ち止まって考えてみるあなたに連れ添ってくれる優しさを感じる。

装うことの時の流れは目まぐるしい。今年の流行りは来年の流行遅れだ。疲れてしまうのも頷ける。

「私があなただったらもっとおしゃれを楽しむのに」と言われたことを思い出した。私はその頃、綺麗な私よりも、賢い私が欲しかった。今も割とそうだけど。装うことを重荷に感じているけど、多少は、やってみようか。

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