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2F/当番ノート

キレがあったら死んでしまうのだと思う

当番ノート 第55期

軽いバイトには落ち、既卒ニート・フリーター向けの就職エージェントには「服薬・通院中の方は受け付けていません」と門前払いにされた私の精神的な打撃は大きく、できることなら今回のテーマは「生きることの苦しさ」とか「障害は社会の側にある話」とかにしたい。

でもそれは自分の心を抉って出た血で字を書くようなものなので、あえて関係ないことを話題にしようと思う。

ちょっとしたインフルエンサーにまで進化しそうな母のインスタグラムは毎日が栄養バランス良しのカフェ飯のようで、おいしくそれをいただいていた過去は確かにあった。料理は好きだがズボラで、毎日やる気が出るわけではない私は、レトルトやインスタントなどで食いつないでいる時もある。安い炭水化物で腹を塞ぐ、映えなどどこにもない私の食卓が顕現した時は、実家のワンプレートご飯に思いを馳せて虚無の中にいる。

もちろん自炊した方が節約になるのは決まっているのだが、節約は「心に余裕がないとできない」高等技術だ。今は自炊する心のゆとりなどないので、そんな辛い自分を甘やかすべく、もういい今日もマルちゃん製麺だ、キューピーあえるだけパスタだ、だのとやっているうちに私はどんどん太っていった。その上血糖値も危なくなってきて、食べたあとの眠気がひどく、ジーンズが悲しい顔をしている。ボディポジティブになりたかったところだが、このまま太るに任せると健康上の問題と入る服がなくなる問題に直面するのでネガティブにならざるを得なく、シリアスな様子で体重計とにらめっこしている。

ダイエットとは一生続く生活習慣、とはよく言ったもので、継続できるギリギリのラインを狙っていく必要があった。まずはカロリー計算をしてくれるレコーディングダイエットのアプリを入れ、散歩と少しの筋トレを始めた。自炊の作り置きがない時は朝からパスタなどのどっしりとしたものを食べていたのだが、朝食を毎回オートミールにしてみた。

このオートミール、見た目は何か動物の餌にしか見えないパサパサの穀物加減なのだが、水か牛乳をかけて500wで2分温めるだけでとろりとした食感の立派な主食に早変わりする。味はほとんどしないので、トッピングや味付けをする必要があり、ドライフルーツやミックスナッツなどを入れる。食物繊維や鉄分などが豊富なところもありがたい。私はカップスープの素をかけるのが好きだ。

やはり、落ち込んでいる時に書いても、なんとなく不調でキレがないように感じられる。世の中に訴えたいことは星の数ほどあれど、膨大なそれらに意識を持っていかれては日常が覚束なくなるジレンマを、この文章は現しているような気がする。本当は書きたくもないダイエットの話で字数を埋める行為は、私の内面と負傷した心の痛みを覆い隠して、自らの視線をそこから逸らす効果があるように思う。どんな辛いことがあっても日常は続いて腹は減る。死ねない以上、生きていくしかない。そして、心がすり減っていても、生きている以上家事は繰り返し発生する。憎たらしい家事だが、私が絶望の沼に首まで浸からないように、ちゃんと水流が生まれる川に居られるようにしてくれているのかもしれない。

滝薫

滝薫

ライター兼福祉の仕事がしたい人。アロマと料理と編み物が趣味というナチュラル丁寧加減ですが、本人は結構辛口です。

Reviewed by
高松 直人

人に見せることの出来る私と、見せたく無い私。その間を行ったり来たり揺れながら進むエッセイは魅力的だなと思う。そんな姿こそが筆者も意図しないありのままなんだと思う。素敵な文章です。

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