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2F/当番ノート

紙、それは思い出

当番ノート 第59期

 なんやかんやあって無事大学に合格した。
 「お!いよいよフリーペーパーを作るのか!?」と思った方、すみません、まだ作りません。

 残りの高校生活を過ごしていたころ、合格者は卒業に向けて各委員を振り分けられることになった。わたしは卒業文集担当。しかも編集長だ。担任の先生は「これからたくさん本を作ると思うけど、それの一番最初になるものだからね。大事だよ」と言ってくれた。当時は全く現実味がなく、ふわふわと「へえ~そうなんだ」と他人事のように思っていた。

 他のメンバーはいわゆる一軍と言われる子たち。明るく元気で挨拶もでき、運動部に所属していて、友だちが多い。そんな子たちを、休み時間は本ばかり読み、たまのイベントで異常なテンションで奇声を発しながら盛り上げるわたしがまとめる。大丈夫か、と心配だったが「こういう文集にしようと思っている」とアイデアを話すと「面白い!」「いいかも!」「じゃあわたしはこれやるね!」「わたしはこれ!」と指示する暇もなく担当が割り振られた。すごい。

 文集の内容は、一人ひとりのプロフィール(未来予想図付き)、ランキング(全員の名前が入るように忖度あり)、クラスメイトからの個別メッセージだった。表紙はクラスメイト全員の写真を使ったコラージュ。絵の得意な子がプロフィールや目次を作ってくれ、気遣いができる子がランキングを作り、個別メッセージはわたしがすべて切って一冊ずつに貼った。適材適所である。

目次。この下には座席表(出席番号順)が載っており、掲載順もわかる。
わたしの個人ページ。目標「死ぬまで生きる。」とのこと。

 文集の出来は今考えてもいいものだったと思う。特に個別メッセージのページはかなりよく頑張った。「普通の文集にしたくない、一人ひとりきちんと思い出の残るものがいい」という謎のプライドと共に、36人分のメッセージを36人分の文集に貼りまくった。当時のメモには「毎日文集にメッセージ貼ってる。」「文集を死ぬ気で作った。(36冊に36人のメッセージを貼ったり)」などと書いてあり、この時期はこれしかやってなかったのだと推察される。

個別メッセージページ。クラス全員に書いてもらったメッセージを一枚ずつ切り取って一冊ずつ貼った。

 完成間近になると委員の子たちから「北枕さんって面白いんだね!」「もっと早く仲良くなりたかったな~」と声をかけてもらえるようになった。ちょっと泣いた。大事なことはいつだって最後にわかる。
 余談だが、文集のランキングは「ギャグセンの良い人1位」「いろんな知識がある人3位」「本当はもっと仲良くなりたかった人ランキング2位」だった。え、なんか、ごめん。

 無事に人生初の本づくりが成功。そして高校を卒業し、「これからいっぱい本を作るのだ!」という希望を胸に大学に向かった。だが、そこには大学デビューという恐ろしい魔物が立ちはだかる。フリーペーパーは、まだ、作らない。

北枕 ふか子

北枕 ふか子

あなたの心のふかふか枕

Reviewed by
フチダフチコ

「コラージュ」に出会った高校時代。卒業文集を通して「本作り」に触れた卒業シーズン。そして、ふか子さんの物語は大学デビューへと向かいます。今回の当番ノートは、その「本作り」の話です。

担任の先生の言葉は粋ですね。これからたくさん作る本の、一つ目がこの卒業文集であると。前回から少し触れている「アート/デザイン」の話で言えば、卒業文集は「デザイン」に近い考え方と言えるでしょう。目的を持った本作り。「みんなの思い出に残るように」というざっくりしたニーズをどう満たすか、それがふか子さんに与えられた使命でした。

卒業文集のようなオムニバス形式で作り上げる本の面白さ。一人ひとりの文章単体で言えば「自分のことを書きたい!」というアートに近いのに、集まれば「みんなと過ごしたことを思い出すための本」として残るデザインであること。

この変換を任されるのが編集者の役割ですから、いちばん面白い所を担当していたのだと思います。いちばん面白い所はいちばん大変な所でもあり…。36人分のメッセージを36人分の冊子に貼る1296工程。どれだけの時間とスティックのりを要したのか、お察しします。

文章を書く人は、ものづくりに触れている人が多い…と思うことがあります。私の周りに日本語学を学んだり、国語教育を学んだり、文学部に進んだりした人は数多くいますが、文章を書いているイメージがありません。なぜこんな話を最後に書いたのか…ちょっと脈絡のない話ですが。ふか子さんの文章に惹かれる理由を、私なりに探しているのです。レビューを任された以上。フフフ。

さて、次回は大学デビューについて聞けるようです。私は金髪にして失敗しました。懐かしいですね。

以上。

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