当番ノート 第21期
▼金沢八景 人魚に海の生きものを見せるのはどうか、とある日Nが言った。シーサイドラインという電車があって、それに乗ると海を見ながら水族館まで行ける、と言ってNは私を誘った。地図で調べるととても遠いようなので、泊まるつもりで準備をした。遠出する時、人魚はいつも、大きめの水筒に入れて持ちあるくことにしているので手ですくって移した。琺瑯(ほうろう)のたらいは、タオルでくるんでリュックに押しこんだ。 海辺…
当番ノート 第21期
フランスの庭師ジル・クレマンの新たな著作『動いている庭』が日本語訳に訳出されたので最近手に入れた。自身の生業である庭での活動とその分析とともに、何やら時々神妙な言葉を文章に散りばめてくれている。(日本語訳のこの淡々としてけれども時々グサリとする確信めいたことを打ち明けるその文体は、もしかすると訳出者の仕事なのかもしれない。私はフランス語で書かれた原文を読むことができないので、そのへんは分からない。…
当番ノート 第21期
大げさなタイトルだけど、 まず書き始めは好きな女の子のタイプのことから書きます。 ある一定数の男子はみんなそうだと思うのですが、 街を歩いていると、目の端でとらえた女性に完全に目を奪われることがあるんです。 そりゃもう、ぐわっって感じで、もう制御不能に見てしまう。 どんだけ欲求不満なんかって話だけど、あるときからその目を奪われる人のタイプについて考えるようになりました。 なぜかというと、そんな女性…
当番ノート 第21期
ちりん、ちりん あー、急に暑くなりましたねえ・・・ こんな日は冷たいもので身体に涼しみを取り入れましょうよ あなたはアイスクリーム?それともかき氷?シャーベットにゼリー、プリン・・・水羊羹も捨て難い! ・・・ん?全部食べたらどうなるか・・・自分の身体と相談してくださいね!うふふ 本日のお夜菓子 ★ 氷のお菓子 たくさーんある冷たいお菓子の中にどどんと構える冷たくて優しい王様。 夏には欠かせないおや…
当番ノート 第21期
俳優になったのは何故か?の、物語。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考え方だけでは完全には管理できないもので、その類似性が記憶の引き出…
当番ノート 第21期
ルーマニアは農業の国である。農地と牧地を合わせた面積は14百万ha近くに及び、これはEU内ではフランス、スペイン、ドイツ、UK、ポーランドに次いで多い。勿論1,000ha以上の農地を持つ大規模農家もいるし、面積で言えば50ha以上の中規模農家の割合も大きいが、数自体では殆どが1ha前後の自給自足的な農家だ。つまり、ルーマニア人とは伝統的に、農家である。小さな村で慎ましく暮らし、豚や鶏、時に牛を飼…
当番ノート 第21期
▼黄金町 Nの部屋にはくしがない。姿見もないし、壁掛け時計もない。だから泊まるといつも髪を整えることに難儀するし、時間をすぐに知ることもできない。そういう、不足ばかりの家だが、ある時Nが琺瑯(ほうろう)のたらいを買って帰ってきた。青いふちどりのついた、白くてきれいなたらいである。新品の日用品をそろえて生活を豊かにするタイプの男ではないはずだから、私はびっくりした。Nは、「海に帰す日に向けて、だんだ…
当番ノート 第21期
建築家・大江宏のノートに、「世界地図」、とくに地中海の輪郭と地勢を描いた図がある。それを掲載した、たしか2年ほど前の、法政大学建築学科内の研究者の有志が編集したパンフレットである(※1)。それがいま手元にある。実はこのパンフレットを見た瞬間、本当に手が震える程に強い衝撃を受けた記憶がある。 なぜそのことを今になって改めて考えているのかというと、最近ある書籍(※2)にてその図を再び目撃したからだ。「…
当番ノート 第21期
今週は急に具体の話。 僕はいる分しか稼がないできた。 それはたいてい数万円で、 それを聞くとみんなびっくりするが、それでもう10年くらいやってきた。 7年ほど前に緑のふるさと協力隊という制度に参加させていただいた。 ふるさと協力隊は、地球緑化センターというNPOが運営している、まちの若者をむらに派遣するプログラムだ。 国や大きな機関が中に入っていないので、とにかく人の体温が感じられる経営をしていて…
当番ノート 第21期
こんこん。 あっこんにちは、はじめまして。 本日からこのおもしろにぎやかアパートメントに2カ月ほど入居させていただきます、ヤカというものです。へへ 得意なこと?うーんなんだろ、食べることかな。好きなこと?うーんなんだろ、食べることかな。特になにが好きかって? そりゃあ決まってんじゃない、甘いもの!糖分!(そのあとに食べるほかほかごはんも大好きだよ) そう、私はとある街の商店街の隅っこの隅っこでお菓…
当番ノート 第21期
倉庫とパッケージ。 フィレンツェはあの日、雨だった。 物語。 忘れないように努めていることは、 やがては忘れてしまう事であり、 思い出さないようにしていることは、 何かの拍子に必ず思い出してしまう事である。 この二つの事柄は、 或いは別々の倉庫に同じ名前で保管されているか、 同じ倉庫に別々のパッケージで保管されている。 つまり、 記憶というものは僕たちの意思や考え方だけでは完全には管理できないもの…
当番ノート 第21期
僕は写真が好きなサラリーマンで、ひょんなことからルーマニアで働いている。縁あって寄稿させてもらうことになったので、ここでは日本人にとっちゃまあ馴染みのないルーマニアという”未開”の地での日々をつらつらと書いていこうと思う。2ヶ月間、宜しくお願いします。 まずルーマニアを知らない人の為に簡単に説明すると、場所としてはバルカン半島の付け根に位置し、北にウクライナ、西にハンガリー…