当番ノート 第11期
たくさんの路地裏をみました。 あの人は、薄明かりの下の風景が好きでした。 以来、わたしは、 この薄暗い道を奥へと進んだところにも、 エネルギーがあるのだと思うようになりました。 たくさんの笑顔をみました。 その人は、街へ出ては人の顔ばかり撮るのでした。 美しい女性、美しい笑顔、化粧のはげた顔、怒った顔。 時々、体の一部がない人のポートレイト。 以来、わたしは、 笑顔の中にも時折奇妙さを見るようにな…
当番ノート 第11期
夜になると煌びやかなネオンで彩られる町も、昼間は驚くほど閑散としている。夜の間に放たれた下卑た匂い。理性から解放された生き物としての人間の匂い、生臭さ、駆け引き。町を満たしていたそれらが、夜明けとともに静かに辺りに染み込みこんでいく。地面に、建物に、家路に着く人の体と魂の中に。そうやってできた、おりのたまった町。太陽や月よりも人の作った光が似合う町。私の育った町もそうだった。雨のしのつく午後3時。…
当番ノート 第11期
星がきれいだった だからわた この道はタバコを吸ってはダメです って、 そういうふうに言われたら 嫌いなタバコをもくもく吸って歩きたい 持っているゴミをばら撒きながら歩きたい し そういう気分 わたし酔っぱらって 寝過ごしてしまって、 降りたこともない駅で、 普段ならタクシーに乗ってしまうんだけど 2時間も歩けば家に着くだろ…
当番ノート 第11期
たどり着けない振動で回り続けるクリック。 目を覚ますとそこにはたどり着けない。 目を覚ます前。 開闢のネグレクト。 眠りに就くとは、目を覚ます。 バスの中のバス停でバスを待つ。 夢そっくりな現実が夢だった。 瘡蓋から流れるタイムライン。 鞄の中の階段を上り、二階にまつわるいくつかの地獄が、遠くの広場で終わりを告げる。 机の上の砂漠が対角線を求め、熟されたゴミ箱はコピーされる。 振り返れば振り返る程…
当番ノート 第11期
月はかわって11月、霜月。日本諸国にも出雲から神様たちがお戻りになっていることでしょう。 先月10月は神無月でした。八百万の神様たちが会議をするために出雲の国へお出でになってしまうため、そう呼ばれるようになったのは良く知られているところです。 今年2013年は、伊勢神宮でも大祭がありました。 20年に1度、正殿を始め御垣内などの社殿を造り替え、さらに殿内の御装束や神宝を新調して御神体を新宮へと遷す…
当番ノート 第11期
初めて一眼レフのカメラにふれたのは高校1年生の頃 引っ越しをしてからずっとしまい込まれていた段ボールの中にあったそれは 付属の革のケースが砂のように劣化していて手に取るのも躊躇うほどだった。 むかし祖父が使っていたものらしいのだがそこまで極端に古いものでもなくカメラそのものはしっかりと動いた。 その精密機械が発する空気みたいなものが持ち歩くのは少し怖い感じがしたけれど なんだかフィルムを巻き上げる…
当番ノート 第11期
『価値』について ホトリニテの宿泊料金は、1泊素泊り3000円です。題に3000万円とありますが、間違いではありません。世の中で公式にもっとも高額とされている宿泊料金はおよそ1泊350万~420万円ぐらいが相場です。その一夜を特別なものにする。そこにどんな大金持ちでも1泊素泊まり3000万円もだして宿泊する人など、ほぼいないでしょう。3000万円あったら、そのもの(宿泊施設)を作りますからね。 こ…
当番ノート 第11期
いつもお墓参りに向かう山道の途中にある、 小さな川と並走するように見えない向こう側へと伸びていく小径に惹かれていた。 そして、ある日のこと、その小径の入り口に深緑色の看板が立てられていることに気がついた。 あの小径の向こう側、何かできたらしい。 「ねえ、今日は帰りにあの小径の先に行ってみようよ。」 小さな車が一台通れるか通れないくらいの幅の狭い道をおそるおそる抜けてゆくと、 そこに古びた洋館があら…
当番ノート 第11期
高い空を泳ぐ鰯雲と冷たい匂いの混じり始めた風、色づき始めた木々の枝葉から差し込む光はモザイク模様を地面に描いている。何が男の心に訴えたのか、さして理由があるわけではなかった。しいて挙げるとするなら、そう、午後の柔和な日差しがそうさせたとしか言いようがない。男は、この10年間ほとんど思い出すことのなかった友人をふと思い出し、訪れようとしていた。さてどんな顔をして行ったら良いものか、男は思った。親しか…
当番ノート 第11期
ローソクを引っこ抜くと、 穴がのこる 穴ばかりが目立ってしまってつまらない ケーキ食べるときいつも思うんだよ。 ローソク立ててさ、火をつけて電気を消して お金持ちみたいな色に照らされて ゆらゆらしてるケーキが一番おいしそう いま私の目の前にあるケーキは穴だらけでさ 食べる前から気が滅入ってしまうよ もしこのケーキの上を歩けと言われても ずいぶ…
当番ノート 第11期
これはプシュケーでした。 分野を映し出す。そう激しく覚える。行方どこでどんな変換された懐疑。非常事態の模倣に取り組む人々がいた。五十路からのパルに耳鳴りも、そして、これからの無関係、今あらゆる感情の渦、一人でも多くの人にこの事実、情報を送る。 何とも言えない光景の裏、事情、効果。何とかこのセクタを”鏡”のような心で、私達に帰する暗唱。悲しく、あまりにも辛い。無力を誰もが調査、重視を立とうとした。そ…
当番ノート 第11期
「雨過天青雲破処」 当時、僕にはこの単語が漢字の羅列として目に入ってきました。それでも、日本人の僕には表意文字である漢字を読みとろうとする欲があるので「雨の過ぎ去った空の雲の切れ間」にある ー「何か」ー に思いを馳せる感じなどと、ちょっとばかり格好の良い意味としての訳を捻り出したのを覚えています。実際はというと「雨の過ぎ去った雲の間から見える空の色」という意味で、「うかてんせいくもやぶれるところ」…