当番ノート 第4期
先日、マルセイユで公開中の映画を見に行った。 その作品の中である詩がでてきた。 「ことばなんか覚えるんじゃなかった」 この言葉がずっと頭の中をぐるぐるとまわっている。 フランスはマルセイユで踊れる事になって来仏した時はほとんどフランス語を知らなかった。 簡単なあいさつでさえ口にするときは緊張して声が震える。 単語も英語と違う。発音も違う。そんな中で私は孤独を感じた。 フランス人に笑って言われた。 …
当番ノート 第4期
「で、ケニーさん。さっきから歯ごたえがコリッコリッとしてるんですけれども、 これってホントにベーコンオムレツバーガーなんですか?そもそもバーガー無いじゃないですか!」 「健次郎や。食べる時に目をつむって食べる習慣はほめたもんじゃああるが、目を 閉じておいでよ。さあおいでおいで。鬼さん、こちら。手の鳴る方へ!!」 私は(私とは健次郎のコトです)静かに目を開ける。 確かこの島には謎の甘納豆が発見されて…
当番ノート 第4期
その月は心が渇いて仕方がなかった 霧雨が降る時が幾日かあり時折に上を向いて口を開けてみる 空気の中に滲んでいる私の心の中にはない潤いを それを胸に吸い込むと少しは きっと救われるのかも知れないと勝手をしてみたら なおさら渇いていって仕舞う 潤すものはどうやら水分のように滞留し漂い 上から下に或いはその逆に行ったり来りをするような不確定の先生の様でもあるが 決定的に必要とされる要素でもな…
当番ノート 第4期
ぼくの本籍地は東京都豊島区で、池袋駅から北へ少し進んだあたりらしい、ということは、自分の運転免許証で知っていました。ぼくの父親の実家は巣鴨・とげ抜き地蔵の近くで、池袋は隣の町ですから昔その辺に住んでいたのかもしれないのですが、その理由については祖父母も父親も亡くなってしまっていて、ついに聞けずじまいでした。本籍の場所なんか行った事がなくたって日常生活に全く支障はなく、だからこそ、40歳を前にするま…
当番ノート 第4期
昔、平民新聞を有料に出来ないだろうか、と妄想した事がある。 それは自分の日記は「金を出すに値する物である」と高らかに宣言する意味では全くなく、単に今も昔も生活が苦しいので、日記を読んでいる人からカンパしてもらえないだろうか、と思ったからだ。何年か前に書いたんだけど、ストリートミュージシャンや大道芸人が自分の前にひっくり返した帽子を置く事に近い。それをブログで出来ないだろうか、と。 僕の理想は平民新…
当番ノート 第4期
いま私の頭の上には車が走っていて、 たくさんの人が歩いている 顔をあげれば 上の人達の足の臭いがしてくるようだよ。 丸ノ内線、銀座駅を降りて。 この空調の効いた地下道はどこまでも続いているような気もするし、 あっさり ぷっつりと終わりがくる気もする。 私は髪の毛をポニーテールにして、 格好悪いスーツを着て歩く。 仕事が決まらないことより何より、 こんな幸の薄い格好で歩き回っ…
当番ノート 第4期
書くことは怖い 言葉はそのもの一つにいちいち意味があってそれが人の意識を規定してしまうから。 どう書いても受け取め方は読み手の自由だと頭では わかっているつもりでも、それでも私には怖い でもこうして書いて、残す場所を与えていただいて わたしはまた書くことになった たとえば あの人が わたしのこのエントリーを読んで にこにこしながら私の言葉を好きだといってくれたとしても 次にわたしとまた会った…
当番ノート 第4期
朝、あの人は目を覚ます。 いつものように一日が始まる。 あの人は一緒にいるその人と一緒に旅した思い出の旅行の記憶が全くない。 確かに行ったあの場所。 たくさんの写真の中で、あの人はその人と笑顔でいる。 まばゆいほどの太陽と共に。 他にもある。失った記憶。 あの人の歴史の一部をぽっかりと。 まちがいなくあの時間はあの人と共にあった。 不思議なものでそれは地震によってできた地割れのように あの人にとっ…
当番ノート 第4期
「ドキュん!ゴキュん!!胸の奥〜♫」 「おいおい、兄ちゃん。船の臨時便がなかなか来ないからってDAPANPをそんなにバナナを握り潰しながら 熱唱されたら、船を待ってる他のお客さんに迷惑だよ。それに何より、ドキュん!ゴキュん!じゃなくて、 ドキュん!ドキュん!じゃろうに。」 「ドキュん!をゴキュん!に歌い変えているのにはれっきとした理由があるんです。 ゴ(5)キュ(9)ん。私は59歳までに、島で恋と…
当番ノート 第4期
八月の夏の勢いを過ぎれば予感がある どんな人の中にも冬への覚悟がある 北のもう少し北の内陸に海を知らない盆地 二本の川に挟まれその合流を抱く街 そういう土地は 寒さを逃がそうとしない 雪の影は青く 昇華した氷晶が煌めき 忽然太陽柱が現れては消え 除雪車に削り取られた雪の道は 朝の一瞬鈍く虹色に反射を起こす オーホーツク沿岸が樺太から流氷を招き入れる二月の頃 これでもかと凍れ上がる 北緯…
当番ノート 第4期
最近ぼくの頭の中には、「出来るまでやる」ということばが常に浮かんでいます。 2011年に企画した杵島隆写真展「日本の四季」に展示したプリントは、1990年頃制作した和紙仕立てと呼ばれる大変珍しいプリントでした。経師の職人さんがカラー印画紙の乳剤の部分だけを慎重に剥がし、厚手の和紙に丁寧に仕立て直したものです。日本の職人さんの技術は、例えば新聞紙を包丁で二枚にすることが出来る程だそうで、水墨画などは…
当番ノート 第4期
七月末。野馬追という、祭りというか神事を追いかけて、三日間、福島県南相馬市の原町区や小高区にいた。 東京に帰るとインターネットがつながらなくなっていた。 このまま更新されないアパートメントというのも気持ちが良い気がする。 野馬追行脚の三日間で出会った人たち、見た風景について、帰ってきた今も色々と考えることが多い。 南相馬の銭湯で、湯上がりのおばはんに「じゃ、来年も祭りで会いましょう」と笑って挨拶し…