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2F/当番ノート

季節と季節のあいだって、なんにもない夜

当番ノート 第4期

 
 
 
 
こんな時間に目があいた理由は、

初めは全然わからないんだけど、

首が汗でじっとりと濡れているのを確認したら、

ああ暑苦しくて目が覚めたんだとわかった。
 
 
ひとりきりの真夜中に
 
 
 
Facebookのニュースフィードってとこには、

お盆休みで出かけるみんなの楽しそうな写真がアップされている。

私にはお盆なんて関係なくて、

夏休みなんて関係なくて、

明日の朝も、いつもより少し空いた電車に乗って仕事へ行きます。
 
 
 
今日、
(まあこんな時間だから正確には昨日か)

朝にいつもの電車に乗り込んで、

あいている車内のシートに座って

スグに私は目を閉じた。

電車は、乗せている私たちの気持ちなんて関係ないよというふうに、

いつも変わらず次の駅へ走っていく。
 
 
窓の外では朝から元気よく蝉が鳴いているに違いなくて、

強烈な緑色した木々が、夏だぜって主張してるみたいだ。と、思うきっと。

でも私は目を閉じている。

空調の効いた車内で、

シートに座って 少し下の方を向いて。

まぶたの中に外の光を入れたくなくて、

すこし強く目を閉じていた。

なんだか、

夏から逃げているみたいだなと、そーゆーことを思って悲しくなった。
 
そしたら急に百貨店の匂いがした。

きっと隣に、ばっちり化粧したおばさんか誰かが座ったんだろうと思った。

私はこの百貨店みたいな匂いを嗅ぐとなんか安心する。

ありがとう、おばさん。
 
 
そうしているうちに私は眠ってしまう。

電車の中で、図々しくも夢を見た。

初恋みたいな甘酸っぱいやつ。

正確には何人かは分からないけど、

数人の男女のグループで遊園地に来ていて。

なんだかすごく開放感があって、

その中の一人の男の子がたぶん私のことが好きでチラチラ目線があったりする。

私は本当に楽しくて、なんか気持ち悪いくらいな笑顔でみんなに楽し

ってとこで体がぐらっと揺れた。

私の右腕がぐーっと押されて起きてしまった。

目を開けると、隣のおばさんの迷惑そうな顔があって。

きっとおばさんがヒジで私を起こしたのだろう。

おばさんに寄っかかってしまっていたのか、ごめんなさい。
  
 
私の楽しい夏は、こうして

新宿駅のひとつまえで終わった。
 
 
そこから先は、おばさんのあおぐ鬱陶しい扇子の風を受けながら、

風が来る度に私は目をまばたきさせなくてはならなかった。

まばたきさせられている私のことなんて気にもとめず、電車は進んだ。
 
 
 
そんなことを思い出していたらやるせなくなった。
 
 
ひとりきりの真夜中に
 
 
この寝苦しい夜に季節なんかないんだよ。

私の夏はあの電車の中で終わったんだもん。

夏でもないのになんでこんなに暑いんだろう。

夏じゃないなら今夜はなんなんだよ。

泣きそうになって、

涙なんかながしたらそれこそやるせなさすぎると思って、

私はまばたきをたくさんして、

なんとかこの夜をやり過ごそうか。
 
 
 
おばさんのヒジは、

まだ秋を連れて来てくれそうにありません。

 
 
 

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